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<六剣>分断される

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 第一階位の悪魔達は、当然<六剣>と<無剣>に対しての作戦を練っていた。



 そして、情報漏洩を防ぐために作戦を練る時には必ず防音の魔法を掛けている部屋で行い、更にその部屋の中で最小威力に調整し、且つ魔法伝達方向を極度に制限した念話で意思疎通を図っていた。



 こうなってくると、幾らスライムを率いるテスラムでも情報を得ることはできない。



 そして、その作戦が実行される時がやってきた。

 つまり、<六剣>と<無剣>の分断だ。



 この作戦を確実に成功させるためには、自分達の存在をごまかす必要がある事を知っている悪魔達。



 当然<六剣>一行は、<炎剣>による<探索>を行っているはずだ。



 だが、<探索>は温度変化で主に気配を察知していることもわかっている。

 しかし、悪魔である自分達が進化しているように、憎き<六剣>や<無剣>も進化していると考え、温度以外での察知能力を警戒して、力を極限に抑えて気配も消すことにした。



 その作戦を実行する時には下位の悪魔達を多数犠牲にする事になるが、やむを得ない犠牲だ。



 計画通り<六剣>と<無剣>は下位の悪魔どもを討伐するのに意識が向いており、最も力が弱い<水剣>と<光剣>を拉致する事にした。



------------------------------



「「まずい!!」」



 俺とヘイロンは同時に異常に気が付いた。



 多少力の違いがあれども、数だけ多い悪魔で俺達を迎え撃っていると思っていたが、これが油断だった。



 俺達は悪魔を討伐する為に、徐々に互いの距離が空いているのに気が付かなかった。



 いや、悪魔達が徐々に俺達を分断するように動いていたのだ。

 まんまと奴らの策にはまってしまった。



 ナユラとスミカの近くに現れた二人の悪魔・・・既に力を隠さずに全力でナユラとスミカに向かっている。

 力を隠すのをやめたであろう二人の悪魔は、かなりの強さを持っている。



 スミカとナユラ・・・あの二人は俺達の中では一番戦闘力は低い。

 その辺りも全て計算ずくで動いているのだろう。



 あの二人の近くにいるのは・・・ヘイロンとアルフォナだ。



 当然あの二人もスミカとナユラに近づいている悪魔の力を理解しているはずだ。

 ナユラとスミカに加勢するべく既に動き出している。



 俺、テスラムさん、ヨナには悪魔どもが一気に攻めてきた。

 こいつら、無駄に連携してきやがる。



 どうやっても俺達では間に合わない。

 こんな状況では<空間転移>も発動できない。精神的にもう少し安定しないと精密な術なので、今の俺の力量では発動することができないのだ。



「アルフォナ!ヘイロン!頼んだぞ!!!」



 俺が叫ぶまでもなく、アルフォナとヘイロンは今までとは違って全力で悪魔を討伐しつつスミカとナユラに近づいている。



 スミカとナユラは、突然強大な力を持つ悪魔が表れて動揺が見える。

 これが命を懸ける初めての実戦なのだから、仕方がないが・・・



 してやられた。



 あの悪魔がナユラとスミカに到達すると同時に、ヘイロンとアルフォナも不十分な体制ながら二人の元に辿り着いた。



 しかし、体制が不十分であるため迎撃することはできず、悪魔と共にこの場から消えてしまった。



 消えた先には転移門があるが、近くにいる悪魔共がその門を破壊してしまった。

 あの転移門の先はどこに繋がっているかわからないが、確実に俺達は分断されてしまった。



「全力で行くぞ!!」



 俺の叫びを待たずに、既に目の前の敵を全力で瞬滅しにかかっているテスラムさんとヨナ。

 当然全力の俺達にあの程度の悪魔が抵抗できるわけもなく、初の襲撃は終了した。



「テスラムさん、あいつらは今どこにいる?」

「ロイド様、こんな時程落ち着いて」



 ヨナに諭されてしまう。

 だが、その通りだ。焦っても状況は好転しない。



「スマン」

「ロイド様、お気持ちはわかります。私も油断しておりました。今の所・・・ヘイロン殿とスミカ殿が共に行動し、ナユラ殿とアルフォナ殿が同じ空間におりますが・・・」



 テスラムさんにしては歯切れが悪い。



「スライムとの連携が取り辛い場所にいるようで、場所が正確にはつかめません。皆様に張り付けているスライムを通じて連絡をしようとしているのですが、全く通じる様子がないのです」

「向こうも何かしらの対策をしているという事か・・・当然と言えば当然だな」



 だが、無事ではあるらしい。

 こんな時の為に、荷物についてはなるべく均等に分配している。



 それに<六剣>が二人いれば、あの場に現れた悪魔にも対抗することはできるだろう。



 特に、戦闘能力が優れたアルフォナとヘイロンがそれぞれに分かれている所が吉だ。



 スミカとナユラ二人ではかなり心配していたところだが・・・。



「テスラムさん、あいつらの場所がわからない以上この場にとどまっていても仕方がない。魔王城を目指そう。あいつらもきっとそうするだろう」

「承知しました。ロイド様、あの場にいた悪魔は、以前話をさせて頂きました初代<無剣>所持者と私が討伐するはずであった悪魔の生き残りです。なぜ復活できたのかは定かではありませんが、第一階位と言う魔王直下に位置する力を持った悪魔の三人のうちの二人でございます」



 そうなると、ヘイロンとアルフォナがいても心配になるほどの力があるのか?



「その悪魔は、<六剣>に勝てるほどの力があるのか?」

「以前よりもかなりの力を得ているようですが、アルフォナ殿とヘイロン殿の敵ではないでしょう。私の知らない力を得ている場合は話は別ですが・・・」



 これ以上は心配していてもしょうがない。

 だが、初代<無剣>所持者が<六剣>所持者達と討伐したと言われている悪魔が復活しているのは理解できない。

 前にテスラムさんから聞いた時も違和感を感じていた。



 数匹であれば運良く逃げた可能性もあるのだが、テスラムさんによれば悪魔の個体数はかなりの数がいるらしい。



 当然復活後の交配や、上位の存在からの召喚で増えた個体もいるだろうが、見知った顔が結構いるらしいので、それほどの数を打ち漏らす事は考えづらい。



 つまり、何かしら完全に逃げる方法を持っていたという事になる。

 その情報までは流石のテスラムさんでも得ていないので、打ち漏らしを無くすには、今の時点でテスラムさんが把握している悪魔を確実に滅していくしか方法がない。



「ここにいても仕方がない。進もう」



 俺と<闇剣>のヨナ、そして<風剣>のテスラムさんが一気に加速して魔王城を目指す。



 正直、ナユラとスミカは俺達と比べると少々練度が低いので、少し移動速度を落としていた。

 だが、緊急事態であるので力を抑えることはしない。



 さっさと魔王を細切れにすれば、あいつらの安全も確保されるだろう。



 道中の敵は以前と同じように、移動上邪魔な位置にいる敵だけ移動速度を落とさずに蹴散らしていく。



 時折強めに<探索>を懸けるが、ヘイロン、スミカ、ナユラ、アルフォナの気配を掴むことはできない。



 魔法関連を阻害する空間にいる可能性が高い。



 やがて、周辺が林から平原に変わった。

 これほど見通しが良い場所に罠がない訳がない。



 テスラムさんが俺達を一旦止めると、<風剣>の力で平原の表層を一気に削った。

 すると、至る所で爆発や見るからに毒である霧、そして物理的な槍や剣が表れた。



「一応見える範囲の罠は全て解除できていると思います。念のため警戒をしながら進みますので少々速度は落ちますが、先を急ぎましょう」



 テスラムさんもできの悪い弟子であるヘイロンとスミカが心配なのだろう。
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