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リスド王国の冒険者ギルド

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 私はフロキル王国の第四防壁にあるギルドに勤めていたサフィ。

 男爵家の次女で、高貴な血が流れているの。



 それに、私の持つ基礎属性は<光>。

 国王様の持っている基礎属性と同じで、フロキル王国では重要な属性と言われている内の一つなのよ。すごいでしょ?



 基礎属性が判明するまではドキドキしていたけど、いざ判明したら当然のように<光>の基礎属性を持っていることが分かったの。

 良く考えてみたら、高貴な私がハズレの基礎属性になるわけないのに、無駄な心配をしちゃった。



 と言うのも・・・フロキル王国の王族には基礎属性を持たないロイド王子、いえ、元王子がいて、属性無しと判明した後にその母と共に王族を追放されたのよ。



 そんな話を聞いていたから、何となく怖くなっちゃっていたの。

 でも実際は<光>の基礎属性。全く問題なかったわ。



 それで、優秀な私はギルド職員になることにしたの。

 高貴な血を持つ私でも、男爵家の次女であれば自分も働かなくてはいけない現実・・・でも、高貴だからこそ働くのよ。



 ギルドの職員は、私と同じ貴族一族で固められており、働き甲斐がありそう。

 下賤な血が混じっていない職場だと、やる気も溢れて来るわ。



 でも、冒険者なんていう野蛮で気品もない連中を相手にしなくてはいけないのは苦痛だけど、中には強大な力を得て第三防壁に居住を構える冒険者もいるようだから、ダイヤの原石を探すつもりで頑張るわ。



 でも、働き始めてすぐに気が付いたの。ここには王族を追放されたロイドが毎日のように来るのよ。

 初めて見た時は中々いい男と思ったのだけど、同僚にあれがロイドなのよ!!と教えてもらった瞬間に、小汚い男にしか見えなくなったのは不思議ね。



 そんなロイドは、正直中々のレベルの魔獣を狩って来るのだけど、ギルドマスターの指示があるので適正価格の半分以下で買い取る必要があるの。

 もちろん私もギルドマスターに賛成したわ。

 基礎属性を何も持たない王族崩れなんて、貴族であり高貴な血が流れている<光>の基礎属性を持つ私と直接話すことさえ憚れるほどの身分差ですからね。



 でも、一応は仕事なので査定や受付だけはイヤイヤながらやってあげているの。流石は私。



 そして、もう一つの注意事項として、このロイドと仲間であると言って憚らない冒険者がもう一人いるので、その人に対してもロイドと同じ扱いをするような指示が出ていたわ。

 その名もヘイロン。



 こっちはロイドと比べて年も行ってるし、言葉使いも冒険者!と言う感じで汚らしい言葉使いなので、きっとギルドマスターの指示がなくてもロイドと同じ対応をしていたと思うわ。



 もちろん、どんな魔獣を狩ってきても彼らのランクを上げるなんてことはしてはいけないのよ。



 そんな日々が続いていると、ある日、第四防壁内の冒険者たちがギルドマスターに反旗を翻して、ギルドカードを叩きつけていたの。やっぱり野蛮な連中はダメね。



 でも、この時に何となく・・・そう、何となく強い違和感があったのよ。

 高貴な私だから感じる事ができたんじゃないかしら。



 何て言うのかしら、とてつもない不安?恐怖と言っても過言ではないと思ったの。



 この何とも言えない不安を拭うため、私は一旦隣国であるリスド王国の友人の所に遊びに行くことにしたわ。

 彼女もリスド王国の冒険者ギルドで働いている貴族の娘で、何となく気が合っているのでお付き合いを続けているのよ。



 ギルドマスターには告げずに急ぎ出国してリスド王国を目指したわ。

 なんでここまで焦っていたのかは本当にわからないのだけど、結果的にこの行動が私の命を救ったの!



 その友人の所に厄介になってしばらくたつのだけど、ある日リスド王国の国王から布告があったの。



 その布告によれば・・・フロキル王国の王都は魔獣の群れに飲み込まれて生存者はいない。そして、その魔獣や進化した魔族をその場にとどめておくために<六剣>の洞窟近くまでの新たな防壁が作成されているとのことだったの。



 私はこの内容を聞いて血の気が引いたわ。

 私があのままギルドで働いていたなら・・・普通の日常を送っていたら、フロキル王国の王都で命を散らせていたに違いないから・・・

 きっと、フロキル王国のギルドで一緒に働いていた人達は既に生きていないのでしょうね。



 でも、あの言いようのない不安から即行動を取れた私はやっぱり高貴な血が流れている事が証明されたわ。

 そうでなくては、生き残れるわけがないもの。



 そうそう、フロキル王国の王都は最早再建不可能のレベルで破壊されているらしいけれど、その他の領地は問題ないようで、暫定的にキュロス辺境伯が国王としての業務を行うみたい。



 でもそうすると、私は・・・ずっとこのまま友人の所で厄介になるわけにはいかないので実家に帰るか、いえ、王都が魔獣に蹂躙されるような危険な国には帰れないわ。

 そうすると、やっぱりギルドで働かせてもらおうかしら。



 支部が違えば環境も全く違うらしいけれど、業務の経験はあるし何より高貴な私がいればギルドの顔にもなるでしょう?



 友人にそれとなくギルド職員の空きがないか聞いたところ、フロキル王国に登録していたであろう冒険者達が移動してきており、業務が滞っているらしいの。猫の手も借りたいみたいなので、私が立候補すれば即採用間違いないわね。



 私としては、フロキル王国の冒険者で仕事をしていた時に見覚えのある冒険者達を相手にするのは慣れているので、これ以上ない程の好待遇が望めるんじゃないかしら?



 早速事情を話して、リスド王国の冒険者ギルドで務めさせてもらうことにしたの。

 友人の言う通りフロキル王国で見た事のある冒険者達も多数いて、向こうも私を見て驚いた表情をしていたの。

 でも、驚くだけで受付をしている私の前には誰一人として来ることは無かったわ。

 きっと、仕事に慣れていない私に更なる仕事を与えてしまう事を気にして、遠慮したのね。



 私の前に並ぶのは、もちろん見た事も会ったこともないリスド王国の冒険者だけ。

 でも、これでいいわ。



 フロキル王国にいた冒険者達は、誰一人として私とじゃ釣り合わなかったもの。

 これからは、リスド王国の冒険者の中でダイヤの原石を探すことにしましょ。



 もしかしたら、リスド王国の国王様・・・なんて言ったかしら?最近変わったばかりなのよね?

 布告の際にお名前を聞いていたはずなので・・・えっと・・・そう!キルハ国王様!!



 キルハ国王様に見初められて王妃になるかもしれないわ。

 フフフ、高貴な私にふさわしいじゃない?



 そんな未来を夢見ながら働いていると、ある日あのロイドが冒険者ギルドに現れたの。

 このギルドで働いてから結構な日がたつので、向こうも私がここにいることは気が付いていたみたい。特に驚いた表情はしなかったわ。



 そして、そのロイドの横にはあの野蛮な冒険者のヘイロン、そして執事の恰好をしている人、いつもロイドの傍にいる不思議な女性、裏切者の元騎士アルフォナ。

 ここまでは良いの。

 問題は、奇麗な女性が二人いたのよ。



 その内の一人を見た私の横に座っている同僚が、慌ててギルドマスターの部屋に行ってマスターを呼んできたの。

 不思議になって見ていると、ギルドマスターはその奇麗な女性とロイドに向かって最大限の経緯を払いこう言ったわ。



「ナユラ王女、ようこそ冒険者ギルドへ。そして英雄のロイド様。今日はどういったご用件でしょうか?」



 あの奇麗な方が王女、そしてあの出来損ないのロイドが英雄??

 何を言っているのか理解できなかった私は、彼らから目が離せない。



「フフフ、ギルトマスター?私は元・王女ですよ。今は英雄であるロイド様の仲間で冒険者のナユラです」

「そうでした。これは失礼いたしました」



 やっぱり聞き間違いじゃないみたい。あの方は王女で、ロイドはこのリスド王国で英雄になっているみたい。
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