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少しのんびり

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 第二防壁以内にいる全員が喜びを爆発させている。



 実際に魔族を消滅させた魔導士のホルムンデとか言う冒険者は、まさしく大英雄の扱いを受けており、かなり気を良くしている。



 そいつに魔力を譲渡したSランク冒険者の二人も英雄扱いだ。

 高位貴族、そして王族からももてはやされており、人生の絶頂期を味わっているかのようだ。



「うーん、一時的とは言ってもこいつらの楽しそうな状況を見るのは面白くないな」

「だよな。俺もそう思っていたんだ。だがこれは最悪の状況の前の僅かな静けさだ。上がって勢いをつけた状態でどん底まで落とされると思えば楽しいもんじゃねーか?」



 ヘイロンの言う通りではある。

 こいつらは、第三防壁外の魔獣に対しては一切放置している状況なので、魔獣は増え続け、そして魔族へ進化する個体も多くなってきている。



 そんな状況であるにもかかわらず・・・国を挙げての祝勝会?だ。

 国王曰く、外部からの救出を待って前後から魔獣の群れを挟み撃ちする予定だそうだが、当然、防壁外からの救援は望めない。



 フロキル王国を目指している人々は、見た事もない防壁に驚くだろう。

 それは、<六剣>の力を惜しみなく使った完全な防壁に囲われている状態なのだから、異常事態とは想像がつくかもしれないが、中に侵入することはおろか、状況すら確認することはできないからだ。



 人によっては、フロキル王国自ら進んで外界との接触を断ったと思う場合もあるだろう。



 そうすると、この祝勝会の間は俺達にとっては非常に暇な時間になってしまっている。



「じゃあ、俺はこの町周辺を少し散歩でもしてくるかな・・・」



 あまりにも暇なので、せっかく移住したリスド王国の散策と、同じく移住してきたフロキル王国第四防壁内の住民との顔合わせでもしてこようかと思ったのだ。



「承知しましたロイド様。それでしたらば、我々は修行の続きと行きましょうか?」

「「ぐぇ・・」」



 何とも比喩しがたい声の出どころを見ると、ヘイロンとスミカだ。

 彼らに言わせれば、テスラムさんの修行は殺人級らしいからな。



 だが、他の面々は違った反応を見せる。



「おお、願ってもない。騎士道精神に磨きをかけるためだ。よろしくお願いする」

「私もまだまだ<光剣>を使いこなせておりません。是非ともよろしくお願いいたします」



 アルフォナとナユラ。

 ヨナは護衛として俺についてきたそうな感じではあるが、一方で修行もして<闇剣>の力を更に得たいと言う感じでもある。



「ヨナ、俺のことは気にせずに、修行したければ行ってもいいんだぞ」

「ではロイド様、修行に行かせていただきます」



 この流れを見て、逃げることは不可能と悟ったヘイロンとスミカも完全にあきらめることができたようだ。



「クッソ、しょうがねー。だが、俺も<炎剣>をもっと使いこなせるようにならんどな」

「わ、私もです」



「そうですな、ヘイロン殿には冒険者が魔族討伐時に放った魔法程度は無詠唱で連射できるようになっていただかないとなりません。厳しくいきますぞ!」



 苦虫を嚙み潰したような顔をしているが、良い経験になるだろう。



「それではロイド様、夕刻には戻ります。お食事はどうなさいますか?」

「皆は修行で疲れているかもしれないが・・・合流してリスド王国の城下町で食べてみるか?俺が散策するついでに探しておくことにするよ」



「ロイド、肉だ肉!!きっと夕方には俺は鬼教官によって燃え尽きているに違いない。<炎剣>だけにな・・・なので、復活するには肉が必要だ!!」

「お前・・・まあいい、考えておく」



 あまりの低レベルのギャグ?に呆れてしまったが、これから始まる地獄の修行後の楽しみがあるだけでやる気が違ってくるだろう。

 少しでも希望を叶えてあげられるように探してみよう。



「他は何か希望はあるか?」

「城下町では野菜のスープが美味しいですよ。ヘイロン様希望のお肉も良い店が沢山あると思います。フフフ、ロイド様がどのお店を選ばれるか楽しみにしておりますね?」

「私もお肉が食べたいです」

「スミカとナユラと同じでいいです」



 ヨナは特に希望は無いようだ。とすると、肉が食べられる店を探しておけば問題ないだろう。



 俺は早速城下町に繰り出し、<六剣>所持者達は例のごとくSランクダンジョンに向かった。



 まだ昼には早いので、とりあえず目的地を定めずにブラブラすることにした。

 ここはフロキル王国の城下町・・・と言ってもあまり記憶はないのだが、あそこと比べると大きく違っている。

 人族以外の種族が人族と同じように生活しているのだ。



 そして、明らかに高位の貴族らしい服装と立ち振る舞いをしている者達も、普通の市民が買い物をしている店で同じように買い物をしている。

 フロキル王国では、そもそも一般市民は第四防壁・・・と区画分けされていたので、このような状況は見た事がない。



 貴族らしい人に護衛の騎士が付いているが、特に市民に対して威嚇したり自らの主人の行動を制限する様子も見られない。



「良いじゃないか」



 思わず声に出してしまうほど、こんな雰囲気の中で生活できている市民は幸せだろう。

 そんな探索を続けていくと、いつの間にか川縁にたどり着く。



 復讐が始まり、実際にクズ兄はこの世から消え失せた。このままいけば、あの王国にいる全員が同じ運命をたどる状況になっている。

 これまでが長い道のりだった・・・そんな事を考えながら座っていると、日当たりもよく、心地よい風、そして川のせせらぎが聞こえてきているので、いつの間にか寝てしまっていた。



「う~ん、やっぱり精神的に疲れてるのか?」



 そう言いつつ伸びをして立ち上がり、王城に戻る方向へ歩き出す。

 少々腹が減っているので、そこそこ良い時間になっているだろう。



 川沿いとは違って人々が増えてきた。この辺りには、店に並んでる人が目立っている。

 明らかに昼を食べるために並んでいるのだが、どの店もなかなか繁盛しているようで悩んでしまう。



 あまり長く一人で並ぶのも微妙なので、比較的すいている店を選んで入店する。

 当然夕方の事を考えて肉料理と、そしてナユラのお勧めであるスープを頼むことにした。



 スープは確かに絶妙でかなりの種類があるようだが、俺の選択したスープは濃厚な味がした。

 肉料理も濃厚だったため少々もたれた感じがしたが、非常にうまかった。



 とすると、夕方はこの近辺の店であればどこでも良さそうだ・・・人が少ない店でもこれだけのうまさだったんだからな。



 そう思い、その後は骨董や武具、俺にはよくわからない絵画等、様々な店に顔をだして堪能させてもらった。

 いつの間にか夕刻になり、スライムを通して<六剣>所持者達が王城に戻ってきたと連絡が入った。



 俺も一旦戻ると、思った以上に全員ピンピンしている。

 表情に出ていたのか、スミカが、



「ロイドさん、私の<回復>で全員がこの状態になっているんですよ」

「そうだぜロイド!!スミカの<回復>を受ける前は全員生きる屍状態だったぞ・・・テスラムさん以外」



 最後はとても小さい声だったが、聞こえなかったことにしよう。

 だが、スミカは俺達に随分と慣れてくれたようで話し方が柔らかくなってきている。

 以前はナユラと同じようにロイド様だったもんな。



 口が悪いが話易いヘイロンと会話が多いいからだろうか?

 何れにしても良い変化だ。



 そんな事を考えつつ、一行を伴って昼に訪れた場所に行く。



「流石はロイド様。この場所はとてもおいしいお食事がとれることで有名な場所なんです」

「いや、偶然だ。たまたまこの辺りで昼を食べてうまかったからこの辺りの店にしようと思っていただけだ」



 そう言いつつ、昼とは別の店に入って全員で食事を楽しんだ。



 <六剣>所持者は修行だったが、たまにはこんな感じに寛げる時間を持っても良いな。

 どうせ、フロキル王国の連中も同じように宴会でもしているだろうからな。
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