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炎剣と水剣

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 いよいよ重要な秘密を話す時がやってきた。



「それで、お願いの二つ目だ。さっきも言ったがこれは本当に極秘事項になる。俺達の復讐に巻き込んでしまい危険がある上に、この秘密が漏れれば色々面倒くさいことになってしまうので、心して聞いてくれ」



 ヘイロンとスミカは、佇まいを直してこちらを向く。



「本題に入る前に、有名な御伽噺についての知識を改めて聞いてみたい。スミカはこの町に入る直前に、あの場所で二つ程六剣を抜こうとしたんだよな?」

「はい、土剣と風剣を試しました。もちろん抜けていないのでこんな状態ですが・・・」



 思い出して少々凹んでいるのか、下を向いてしまった。



「ご、ゴメン。別に落ち込ませるために聞いたわけじゃないんだ。それで、改めて確認だけど、スミカは六剣のあの御伽噺を信じているんだよな?」

「はいっ!!」



 本当にこの娘は、少し疑う事を勉強した方が良いかもしれないな。



「ヘイロン、お前はどうだ?」

「あ~、正直に言おう。俺も何度となくひそかに抜けないか試している。日課みたいなもんだ。あれさえ抜ければ、今俺がおかれている状況を余裕でひっくり返す事が出来るからな」



 ヘイロンは、俺達のパーティーの味方であると公言しているので、ギルドや高ランク冒険者、そして商人達からも良い扱いを受けていない。

 そんな状況を打破するために、こっそりトライしていたようだ。

 なんだか、恥ずかしい秘密を暴露したような状況で、ヘイロンは珍しく動揺している。



「よくわかった。二人ともありがとう。それじゃあこれから極秘事項を話したいと思う。ヨナ、顕現させてくれるか?」

「承知しました」



 俺は<無限収納>から無剣を出し、ヨナはネックレスにしていた闇剣を剣の状態に顕現させ、それぞれ机の上に置いた。

 既に極秘事項を話しているので、ヨナは名前で呼んでも問題ないだろう。



 あの洞窟の石に刺さっている六剣と同じデザインで、柄の部分にある、属性を表す宝玉の大きさがそれぞれ違う剣が目の前に置かれたのを見た二人は、完全に固まってしまった。



 剣から発せられる神々しい力、闇剣でももちろん神の化身だから神々しい力が出ている為、これが偽物とは思っていなだろう。だからこそのこの反応だ。



「お、おい、おいおいおいおい、ロイドよ、お前あの御伽噺の無剣の使い手かよ?そして嬢ちゃんは闇剣か?」



 柄部分の宝玉の大きさで、それぞれの剣の属性を判別したヘイロン、やはり動揺している。



「ああ。つまりあの御伽噺は本当の話だ。まあ、全てが書かれているわけではないがな」

「すると、お前の母親も無剣を使ってあの魔族と戦っていたのか?」



「その通りだ。だが、今ヨナの闇剣を見て貰った通りに、この剣は形状を変えることができる。だからあの時母さんは、若干剣の形状を変えていて、無剣とはわからないように使用していたんだ」

「そうか。とんでもない強さだとは思っていたが、この話を聞いたら納得だ。しかし、この国の腐れ王族はやはり見る目はないな。お前も<基礎属性>無しで追い出されたんだよな?」



「そうだったな。だが、俺の属性は<無>だ。これは<基礎属性>とは認識されていないから、本当に属性がないのか、無属性なのかは識別されないんだ。と言っても、この世界で無属性を持つ者はきっと俺の一族だけだろうな」

「そうか。確かにこの話は極秘事項だな。ロイドと嬢ちゃんが伝説の剣の使い手と分かった時点で、この国の連中は手の平を返してすり寄るか、脅迫してくるかだからな」



 そろそろ未だに放心中のスミカに戻ってきてもらわないと、話を進められない。



「おい、スミカ・・・」



 少々強めに彼女をゆすると、こっちの世界に帰ってきてくれた。



「あ、すみません。ちょっと、いえ、かなり動揺してしまいまして。まさかこの目で本物の六剣と無剣を見ることができるなんて思ってもいなかったものですから。という事はですよ、今あの洞窟とここに全ての伝説の剣が揃っているという事ですよね?凄いです!!!」



 戻ってきてからもかなりの興奮状態だが、話は聞いてもらえるだろう。



「それで、あの御伽噺に出てこない部分の説明を少ししたい。あの<基礎属性>の剣は司る属性に関して所持者に最大の強さを与えるが、その強さに対して耐性がある者じゃないと体にダメージがいく場合がある。この部分が、ヘイロンに中々この件について話をできなかった理由の一つではある」

「つまり、与えてくれる力に耐えられる基礎体力と言った所か?」



「理解が早くて助かる」

「とすると、スミカはどうなる?スマンがどう見ても地力があるようには見えないがな」

「そ、そうですよね。私もその通りだと思います」



 恥ずかしそうに同意するスミカ。自分の力をきちんと把握する力はあるようだ。



「もちろんこれから説明する。それぞれの剣には意思があり、相性があるんだ。何故か俺には、どの剣の所持者になれるかが何となくわかる。そして、スミカの所持できる可能性がある六剣は水剣だ。これは<回復>が特化スキルとして与えられる。つまり、体にダメージを受けてもすぐに回復することができるんだ」

「それは、俺も回復してもらえるという事でいいのか?」

「もちろんだ。あの魔族襲来の時に水剣の使い手がいればと、どれ程思ったかわからない。それでな、ヘイロンの六剣は炎剣だ。特化スキルは<探索>。きっと思っていたイメージと違うだろ?」



「え、そうすると私は、相性がない剣を抜こうと頑張っていたという事ですか?」

「残念ながらそうなるな。だが、水剣を試していても抜けないぞ。実際ヘイロンは日課と言うくらいだから全ての剣を試したんだろ?」

「ああ、実は毎日違う剣を試していた」



 またもや少し恥ずかしそうに秘密を暴露するヘイロン。こんな部分もあったんだな。



「実は、あの剣を抜くには、あの剣の意思と、それぞれの剣を従える無剣所持者、つまり俺の同意が必要になる。そして、所持者を得た六剣の力は、実は無剣所持者の俺も使える状態になるんだ」

「すげーな。とするとロイド、お前は最強という事になるな」

「そうなる」



 ヘイロンは、流石に長い間厳しい環境に身を置いていただけに、驚きこそすれ比較的落ち着いて状況を把握してくれた。

 一方、冒険者になったばかりのスミカは、いきなり伝説の六剣所持者になれるかもしれないという話を聞いて、浮足立っている。しょうがないがな。



「追加でいくつかの情報を話しておく。御伽噺にはないが、広く一般的に伝わっている話で、六剣所持者の配下に強大な力を与えることができる件、あれも本当だ。但し、六剣によって配下の数は異なり、多くても数人らしいがな。それと、これはありえないが、万が一無剣所有者に対して害を与えるような行為や思考を持った場合、所持者としての資格を失い、六剣の力は全て失うと共に、六剣自体はあの石に再び封印される」

「その位は当然だろうな」

「そうですね」



 二人とも納得してくれたようだ。



「それで、六剣所持者としての地力を上げる方法なんだが、三通りある。一つ目はヘイロンのように自力で頑張る」

「おう、そんなつもりはなかったが、頑張ったぞ」



「そうだな。そして二つ目、六剣所持者になる前に、他の六剣所持者の配下になって強大な力を得た状態で、高ランクの魔獣を刈って地力を上げる。但し、配下から外れた段階で六剣所持者から得ていた力は失うが、その間に得た経験値はそのままなので、地力はかなり上がる」

「そうすると、もし私が六剣所持者になった時に配下をもったら、必要に応じて力を与える人を変えられるという事ですか?」

「当然そうなる。更には、配下の六剣所持者が翻意を持った時点で配下からは自動で外れるので、万が一にも安心だ」



 スミカも状況把握ができてきている。



「最後の一つは、スミカが持つ予定の水剣所持者による<回復>だ。この方法のみが、六剣所持者になってから自らを鍛える方法になる。前の二つは地力を上げてから六剣所持者になる方法だ。この方法は、六剣の力で破壊された部分をスミカが<回復>を使う事によって修復する強引な方法だ」

「ちょっと怖いです。私が失敗したらどうなるんですか?」



「死にはしないだろうが、大きなダメージは残るだろう。だから、万が一、今必死で六剣を抜こうとしている連中が剣を抜いてしまったら、本当の高ランク冒険者以外は歩けなくなるほどのダメージを負うだろうな。そうそう、この六剣は、万が一手元から離れてしまっても所持者に自動で戻ってくるから、忘れ物の激しいヘイロンも安心だぞ」

「バカ言うな。そんな重要な物を忘れるはずがないだろう」



 よし、これで基本となることは全て説明できたはずだ。
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