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その後(8)
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ミハイルの剣幕に怯えているロジャだが、ここで引くわけにはいかないので反撃する。
「な、なんだい、坊主は。人族は無礼な奴が多いね。私はペットのスナイクを見つけて欲しいと言っているだけだよ?それだけなのにその態度。わかったよ!依頼が達成できそうもないので、私を脅して反故にしようとしているんだね?流石は人族。【癒しの雫】なんてその程度さ」
侮蔑する表情で言い切ったロジャを見て、今度こそ暴れられる可能性が高いと身構えるゴクドとジスドネアだが、その思惑とは裏腹にミハイルは落ち着いた動きで別の魔道具を収納袋から出している。
「お、いよいよそいつを使うのかよ、ミハイル」
「ちょっと待て、鑑定しつつ使わないと不具合がわからないからな」
【癒しの雫】の残りの二人は魔道具の用途を知っているようだが、使われる側のロジャはゴクド達と同じように不思議そうに見ているだけ……ではなく、ミハイルの一言で表情が一変する。
「は~ん、性悪ババァだな。自分で呪いの薬品を売りつけて解除薬も売りつける……と。自分で作った呪いなら、解除も万全だからな。だが、なんでスナイクを探すのか……、そう言う事か。どうやらこのババァ、解除薬の作成方法を覚えていないらしい。情けねー。その方法を書き記した一部をスナイクの体内にあるカプセルに埋め込んでいるみてーだぜ。で、魔王様よ、今回の依頼はスナイクの探索だったよな?」
すっかり【癒しの雫】の軍門に下って落ち着いたゴクドからしてみれば、ミハイルが暴露したロジャの行いは看過できないのだが、当然のようにロジャが反論する。
「急に何失礼な事を言い出すんだい、この小僧!この私がそんな情けない事をすると思っているのかい?」
「いや、しているじゃねーか。まぁ、ここで言い争っても仕方がねーな。依頼だけはきっちりと達成してやるぜ?それと魔王様よ、呪いの解除については俺達が責任をもって対処してやる」
これだけ言うと部屋から三人とも出て行ってしまうので、【癒しの雫】の力を良く知っているゴクド達も悔しそうに震えているロジャを尻目に屋敷を出る。
「ミハイル様、今回のお話は……」
ミハイル達に追いつくとすかさずジスドネアが状況の把握を行うのだが、あっさりとミハイルはその一切を隠す事無くその全てを明らかにする。
「ん?あぁ、こいつは心の汚ねー部分を覗いちまう事ができる魔道具だ。正直あまり使いたくはねーがな、嘘発見器で判別した事実を述べようとしねーから、使わせてもらった。俺達【癒しの雫】はマスターを頂点としたギルド。そのマスターに唾を吐くような依頼を素直に受けるわけにはいかねーからな。だが、今回に限って言えばスナイクの探索だ。そこはしっかりやってやるぜ?そうそう、俺が言った事が嘘かどうかは、スナイクの体内にカプセルがあるかどうかでわかるだろ?」
今の時点で呪いの解除薬のレシピの話はロジャ側からは一切出てきていないので、スナイクからカプセルと共にレシピの一部でも出てくれば、最低でも依頼の理由は嘘であり、うそ発見器後に使用した心を覗く魔道具が正しい事だけは証明される。
「じゃあよ、早速片付けちまおうぜ?」
「そうだな、ミハイル。俺達は呪い解除の準備をしておくから、探索程度は一人で十分だろう?」
「おぅ、任せておけ。直ぐに戻るから、しっかり準備を頼むぜ?ロレアル、バーミル」
突然二手に分かれてしまったので、通常の依頼ではない部分もある以上はゴクドとジスドネアも二手に分かれて後を追う。
ミハイルについて行くのはゴクド。
「ミハイル様。それで、対象の個体を識別すらできない状態で、どのように?」
「ん?ガハハハハ、そんな事は必要ねーよ。あのババァの魔力紋を移したからな。その魔力を少しでも纏っていりゃー、対象の個体だろうよ」
魔力は人の指紋と同じく個別に存在するもので、その模様とでもいうべき魔力紋を既に記録したと言っているミハイル。
「んじゃ、ここらで良いだろ?」
決してゴクドに語り掛けているわけではなく、流れ作業を確認するかのように自分自身に確認しているミハイルなので、返事をしているゴクドの言葉は耳に入らない。
完全に無視されている形になるゴクドだが、ミハイルの集中力が上がっている事を感じて、周囲への被害がないようにと真剣に祈り始める。
誰に祈るのかと言う問題はさておき、ミハイルは再び収納袋から針のような魔道具を取り出すと地面に軽く埋め込んで歩き出し、再びある程度歩くと同じように針を埋め込む。
「こんなモンだな」
一つの針の魔道具を地中に埋めても対象個体の正確な場所はわからないため、複数個所から探索する事で探索対象であるスナイクの位置探索精度を上げているミハイル。
ゴクドは何故このような事をしているのかがわからないので、恐る恐る質問しようと深く息を吸い込んだ時……
「よっしゃ、釣れたぜ!」
突然大声で叫ぶミハイルに驚いたのだが、そのまま猛スピードで移動するミハイルについて行く。
「こ、これほど……早いとは……」
まさかの移動速度!地力が圧倒的に上であったはずのゴクドが全力で移動しているのだがミハイルの姿は徐々に小さくなっており、もう間もなく見失うと思った時にミハイルは突然停止し、既に握っていた少し大きな針の魔道具を地面に突き刺して引き抜く。
丁度引き抜いた時にゴクドもその場に到着し、荒い息をしながら針の先を見ると……そこには地中に潜られると探す事が出来ないと言われているスナイクがいた。
「な、なんだい、坊主は。人族は無礼な奴が多いね。私はペットのスナイクを見つけて欲しいと言っているだけだよ?それだけなのにその態度。わかったよ!依頼が達成できそうもないので、私を脅して反故にしようとしているんだね?流石は人族。【癒しの雫】なんてその程度さ」
侮蔑する表情で言い切ったロジャを見て、今度こそ暴れられる可能性が高いと身構えるゴクドとジスドネアだが、その思惑とは裏腹にミハイルは落ち着いた動きで別の魔道具を収納袋から出している。
「お、いよいよそいつを使うのかよ、ミハイル」
「ちょっと待て、鑑定しつつ使わないと不具合がわからないからな」
【癒しの雫】の残りの二人は魔道具の用途を知っているようだが、使われる側のロジャはゴクド達と同じように不思議そうに見ているだけ……ではなく、ミハイルの一言で表情が一変する。
「は~ん、性悪ババァだな。自分で呪いの薬品を売りつけて解除薬も売りつける……と。自分で作った呪いなら、解除も万全だからな。だが、なんでスナイクを探すのか……、そう言う事か。どうやらこのババァ、解除薬の作成方法を覚えていないらしい。情けねー。その方法を書き記した一部をスナイクの体内にあるカプセルに埋め込んでいるみてーだぜ。で、魔王様よ、今回の依頼はスナイクの探索だったよな?」
すっかり【癒しの雫】の軍門に下って落ち着いたゴクドからしてみれば、ミハイルが暴露したロジャの行いは看過できないのだが、当然のようにロジャが反論する。
「急に何失礼な事を言い出すんだい、この小僧!この私がそんな情けない事をすると思っているのかい?」
「いや、しているじゃねーか。まぁ、ここで言い争っても仕方がねーな。依頼だけはきっちりと達成してやるぜ?それと魔王様よ、呪いの解除については俺達が責任をもって対処してやる」
これだけ言うと部屋から三人とも出て行ってしまうので、【癒しの雫】の力を良く知っているゴクド達も悔しそうに震えているロジャを尻目に屋敷を出る。
「ミハイル様、今回のお話は……」
ミハイル達に追いつくとすかさずジスドネアが状況の把握を行うのだが、あっさりとミハイルはその一切を隠す事無くその全てを明らかにする。
「ん?あぁ、こいつは心の汚ねー部分を覗いちまう事ができる魔道具だ。正直あまり使いたくはねーがな、嘘発見器で判別した事実を述べようとしねーから、使わせてもらった。俺達【癒しの雫】はマスターを頂点としたギルド。そのマスターに唾を吐くような依頼を素直に受けるわけにはいかねーからな。だが、今回に限って言えばスナイクの探索だ。そこはしっかりやってやるぜ?そうそう、俺が言った事が嘘かどうかは、スナイクの体内にカプセルがあるかどうかでわかるだろ?」
今の時点で呪いの解除薬のレシピの話はロジャ側からは一切出てきていないので、スナイクからカプセルと共にレシピの一部でも出てくれば、最低でも依頼の理由は嘘であり、うそ発見器後に使用した心を覗く魔道具が正しい事だけは証明される。
「じゃあよ、早速片付けちまおうぜ?」
「そうだな、ミハイル。俺達は呪い解除の準備をしておくから、探索程度は一人で十分だろう?」
「おぅ、任せておけ。直ぐに戻るから、しっかり準備を頼むぜ?ロレアル、バーミル」
突然二手に分かれてしまったので、通常の依頼ではない部分もある以上はゴクドとジスドネアも二手に分かれて後を追う。
ミハイルについて行くのはゴクド。
「ミハイル様。それで、対象の個体を識別すらできない状態で、どのように?」
「ん?ガハハハハ、そんな事は必要ねーよ。あのババァの魔力紋を移したからな。その魔力を少しでも纏っていりゃー、対象の個体だろうよ」
魔力は人の指紋と同じく個別に存在するもので、その模様とでもいうべき魔力紋を既に記録したと言っているミハイル。
「んじゃ、ここらで良いだろ?」
決してゴクドに語り掛けているわけではなく、流れ作業を確認するかのように自分自身に確認しているミハイルなので、返事をしているゴクドの言葉は耳に入らない。
完全に無視されている形になるゴクドだが、ミハイルの集中力が上がっている事を感じて、周囲への被害がないようにと真剣に祈り始める。
誰に祈るのかと言う問題はさておき、ミハイルは再び収納袋から針のような魔道具を取り出すと地面に軽く埋め込んで歩き出し、再びある程度歩くと同じように針を埋め込む。
「こんなモンだな」
一つの針の魔道具を地中に埋めても対象個体の正確な場所はわからないため、複数個所から探索する事で探索対象であるスナイクの位置探索精度を上げているミハイル。
ゴクドは何故このような事をしているのかがわからないので、恐る恐る質問しようと深く息を吸い込んだ時……
「よっしゃ、釣れたぜ!」
突然大声で叫ぶミハイルに驚いたのだが、そのまま猛スピードで移動するミハイルについて行く。
「こ、これほど……早いとは……」
まさかの移動速度!地力が圧倒的に上であったはずのゴクドが全力で移動しているのだがミハイルの姿は徐々に小さくなっており、もう間もなく見失うと思った時にミハイルは突然停止し、既に握っていた少し大きな針の魔道具を地面に突き刺して引き抜く。
丁度引き抜いた時にゴクドもその場に到着し、荒い息をしながら針の先を見ると……そこには地中に潜られると探す事が出来ないと言われているスナイクがいた。
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