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その後(6)
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不必要な恐怖まで呼び起こしてしまった昔話を終えるゴクド。
「……と言う事だ。思い出したか?俺が仕入れた情報によると、一応睡眠時は電撃がないようだが、あの六人、特にブクブクになっていた元国王など、そこいらの棒切れのようになっているそうだぞ」
「そ、その件でしたか。確かにその話を聞いた時には恐ろしいネーミングだと驚いたのですが、いま改めて話を聞けばルーカスを一撃で混沌させる受付の女性と言う所も非常識過ぎではないでしょうか?」
「だろう?最後に加入している受付の二人でさえアレだ。無駄な反抗をせずに素直に軍門に下った俺達の判断は正しかったと言える」
「その通りです、ゴクド様」
思い出話のつもりが、何故か改めて【癒しの雫】に絶対服従の姿勢を思い出させる結果になってしまった。
「では、五日後の依頼も改めて【癒しの雫】に出すと言う事で宜しいですね?」
「愚問だな。そうしてくれ」
魔王国に数多く住んでいる魔族は、基本的には非常に好戦的だ。
一部人族がいるギルド【癒しの雫】の軍門に下るような行動を良しとしなかった者がいたのだが、その多くは【癒しの雫】の実力を目の当たりにして大人しくなっているのだが、全員がそうとは言い切れない所があるので定期的に難易度の非常に高い依頼を【癒しの雫】に出して結果を出して貰う事によって、魔王国に住む魔族が余計な事をしないように力関係をしっかりと理解させる事にしている。
そこで五日後の依頼と言う事になるのだが、今回は今迄通りの魔獣の討伐やダンジョン内部の魔獣の調査・駆除と言う内容ではない。
魔族の中には物理的な強さを求める者もいれば、特殊な能力を強さと認める者もいるので、物理的な力一辺倒では成し遂げる事が出来ない依頼も行う必要がある。
「では依頼を出してまいりますが、【癒しの雫】……我らの常識を超える行動をとらなければ良いのですが」
魔王の配下に常識的な心配をされてしまう【癒しの雫】だが、少し前の話で【癒しの雫】の非常識さを改めて思い出してしまったゴクドも、ジスドネアのこの一言を否定する術を持ち合わせていなかった。
常識とは……と言う深いテーマで自分達の事を語られていたとは知る由もない【癒しの雫】では、ジスドネアから送られた依頼を小間使いとして働いているカロラが受け取り、シアに渡している。
「えっと、カロラさん。今回の魔王国の依頼は……ペットの捜索で合っているのですよね?大丈夫ですか?」
「は、はい。マスター」
今まではその力を第三者に見せつけるような依頼が多かったのだが、ここにきてペット捜索の依頼が来たのだから確認してしまうシア。
今までの魔王国からの依頼の本当の目的、住民に対して【癒しの雫】の力を知らしめて無駄な反旗を翻す事がないようにしている事を知っている以上、何故ここでペットの捜索なのかシアは理解できなかった。
「クオウさん、どう言う事か、わかりますか?」
「う~ん、ちょっとわからないですね。そのペットが相当強い……とかですかね?」
この場にいるクオウとシアは勝手に盛り上がるので口を挟めないカロラは、会話が途切れるのを只管待っている。
暫くすると、賑やかになっている食堂の一角に依頼から帰って来たのかフレナブルも顔を出す。
カロラとしては更に緊張の増す事態になっているのだが、【癒しの雫】が彼等に対して何かを強要する事は無く、勝手に無駄に緊張しているだけだ。
しかしフレナブルの登場で一瞬会話が途切れたこの隙に、何とか用件を済ませてこの場から離脱しようと考えたカロラは、一気に話し出す。
「お疲れ様です、フレナブル様。今回の依頼ですが、一部魔族の中でも風変わりな者がおりまして、その者達へ【癒しの雫】の皆様の力を示す依頼になっております」
「そうなのですか。わかりました。ありがとうございます。では、誰が向かうかを調整の上でお返事しますね」
「お願いします!」
その後食堂から一気に逃げるように消えて行くカロラをよそに、シアとクオウ、そして新たに加わったフレナブルの三人が依頼についての内容の精査と、誰が向かうかを調整していた。
「このスナイクって、知っていますか?クオウさん、フレナブルさん」
「えっと、冒険者が討伐する対象の魔獣は詳しいのですが、ペット枠はちょっと」
「フフ、私が知っています。クオウ様が仰った通りに良くペットとして飼育されている小さな蛇のような魔獣です。非常に大人しいのですがその分気配も察知しづらく、地中に潜る事を好む個体です」
このような話が行われていく中で、今回の依頼に対応するメンバーが決定した。
基本的に人族が魔王国に乗り込んで依頼を達成する事により【癒しの雫】所属の人族も力があると見せつけてきた流れを汲んで、今回も人族で対処する事になったのだが、なかなか人選が決まらずに夕食になってしまい、そこで激しく立候補していた人物が選定されたのだ。
その人物とは、鍛冶三人組のミハイル、ロレアル、バーミルであり、他の【癒しの雫】の面々も嫌な予感しかしないが、こうなってしまっては誰も三人を止める事は出来ないので、最悪、依頼は達成できても対象のペットは死亡……または細切れになっているのかもしれない位は覚悟する必要があると誰しもが思っていた。
「……と言う事だ。思い出したか?俺が仕入れた情報によると、一応睡眠時は電撃がないようだが、あの六人、特にブクブクになっていた元国王など、そこいらの棒切れのようになっているそうだぞ」
「そ、その件でしたか。確かにその話を聞いた時には恐ろしいネーミングだと驚いたのですが、いま改めて話を聞けばルーカスを一撃で混沌させる受付の女性と言う所も非常識過ぎではないでしょうか?」
「だろう?最後に加入している受付の二人でさえアレだ。無駄な反抗をせずに素直に軍門に下った俺達の判断は正しかったと言える」
「その通りです、ゴクド様」
思い出話のつもりが、何故か改めて【癒しの雫】に絶対服従の姿勢を思い出させる結果になってしまった。
「では、五日後の依頼も改めて【癒しの雫】に出すと言う事で宜しいですね?」
「愚問だな。そうしてくれ」
魔王国に数多く住んでいる魔族は、基本的には非常に好戦的だ。
一部人族がいるギルド【癒しの雫】の軍門に下るような行動を良しとしなかった者がいたのだが、その多くは【癒しの雫】の実力を目の当たりにして大人しくなっているのだが、全員がそうとは言い切れない所があるので定期的に難易度の非常に高い依頼を【癒しの雫】に出して結果を出して貰う事によって、魔王国に住む魔族が余計な事をしないように力関係をしっかりと理解させる事にしている。
そこで五日後の依頼と言う事になるのだが、今回は今迄通りの魔獣の討伐やダンジョン内部の魔獣の調査・駆除と言う内容ではない。
魔族の中には物理的な強さを求める者もいれば、特殊な能力を強さと認める者もいるので、物理的な力一辺倒では成し遂げる事が出来ない依頼も行う必要がある。
「では依頼を出してまいりますが、【癒しの雫】……我らの常識を超える行動をとらなければ良いのですが」
魔王の配下に常識的な心配をされてしまう【癒しの雫】だが、少し前の話で【癒しの雫】の非常識さを改めて思い出してしまったゴクドも、ジスドネアのこの一言を否定する術を持ち合わせていなかった。
常識とは……と言う深いテーマで自分達の事を語られていたとは知る由もない【癒しの雫】では、ジスドネアから送られた依頼を小間使いとして働いているカロラが受け取り、シアに渡している。
「えっと、カロラさん。今回の魔王国の依頼は……ペットの捜索で合っているのですよね?大丈夫ですか?」
「は、はい。マスター」
今まではその力を第三者に見せつけるような依頼が多かったのだが、ここにきてペット捜索の依頼が来たのだから確認してしまうシア。
今までの魔王国からの依頼の本当の目的、住民に対して【癒しの雫】の力を知らしめて無駄な反旗を翻す事がないようにしている事を知っている以上、何故ここでペットの捜索なのかシアは理解できなかった。
「クオウさん、どう言う事か、わかりますか?」
「う~ん、ちょっとわからないですね。そのペットが相当強い……とかですかね?」
この場にいるクオウとシアは勝手に盛り上がるので口を挟めないカロラは、会話が途切れるのを只管待っている。
暫くすると、賑やかになっている食堂の一角に依頼から帰って来たのかフレナブルも顔を出す。
カロラとしては更に緊張の増す事態になっているのだが、【癒しの雫】が彼等に対して何かを強要する事は無く、勝手に無駄に緊張しているだけだ。
しかしフレナブルの登場で一瞬会話が途切れたこの隙に、何とか用件を済ませてこの場から離脱しようと考えたカロラは、一気に話し出す。
「お疲れ様です、フレナブル様。今回の依頼ですが、一部魔族の中でも風変わりな者がおりまして、その者達へ【癒しの雫】の皆様の力を示す依頼になっております」
「そうなのですか。わかりました。ありがとうございます。では、誰が向かうかを調整の上でお返事しますね」
「お願いします!」
その後食堂から一気に逃げるように消えて行くカロラをよそに、シアとクオウ、そして新たに加わったフレナブルの三人が依頼についての内容の精査と、誰が向かうかを調整していた。
「このスナイクって、知っていますか?クオウさん、フレナブルさん」
「えっと、冒険者が討伐する対象の魔獣は詳しいのですが、ペット枠はちょっと」
「フフ、私が知っています。クオウ様が仰った通りに良くペットとして飼育されている小さな蛇のような魔獣です。非常に大人しいのですがその分気配も察知しづらく、地中に潜る事を好む個体です」
このような話が行われていく中で、今回の依頼に対応するメンバーが決定した。
基本的に人族が魔王国に乗り込んで依頼を達成する事により【癒しの雫】所属の人族も力があると見せつけてきた流れを汲んで、今回も人族で対処する事になったのだが、なかなか人選が決まらずに夕食になってしまい、そこで激しく立候補していた人物が選定されたのだ。
その人物とは、鍛冶三人組のミハイル、ロレアル、バーミルであり、他の【癒しの雫】の面々も嫌な予感しかしないが、こうなってしまっては誰も三人を止める事は出来ないので、最悪、依頼は達成できても対象のペットは死亡……または細切れになっているのかもしれない位は覚悟する必要があると誰しもが思っていた。
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