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その後(5)

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 助かりたい一心で、今までの事を無かった事にした上で好き勝手に言っているツイマとエリザの話を聞き、ルーカスも尊大な態度で口を開く

「お前等、不当にも俺達に罪を着せた、散々ジャロリア王国に貢献してきたこの俺ルーカス様を陥れた【癒しの雫】に所属して、天狗になっているのか?調子に乗るのも大概にしておけよ?だが俺は英雄。Sランカーだ。大きな懐を持っている所を下民に示す事も義務の一つ。だから、今回の愚行はなかったことにしてやるから、直ぐに俺を解放しろ!」

 あまりにも残念な物言いに、流石にこの場を管理している監督も口を出そうとした所で、漸く【癒しの雫】が動く。

……ドカッ……

 騒いでいる面々の中では最も強い元Sランカーのルーカスを、ラスカが直接殴ったのだ。

 いくら武具を全て没収されているとは言え十分な力があるはずのルーカス。

 作業にかなりの力を必要とするので作業場周辺を屈強な騎士達に【癒しの雫】特製の、ある程度上物の武具を持たせて監視させており、その力を抑える様な拘束具を一切つけていないルーカスを綺麗な右ストレートで轟沈させる、見た目繊細なラスカ。

 一発で意識が飛んでその場に白目をむいて無様に崩れ落ちるルーカスを見て、途端に他の二人も口をつぐむ。

 陰からこの様子を見ていたゴクドも、何も話していないのだが同じように無駄に口を噤んでしまう。

 ラスカやミバスロアが相当な強者だとは理解していたが、まさか右ストレート一発で元Sランカーを轟沈させるとは思わなかったのだ。

「全く、何時までも偉そうに。そっちの連中もよ!随分と贅沢な事を言っていたみたいじゃない?自分達の立場が分かっていないようだから、少し調教してあげるわ」

「ラスカの言うとおりね。いくら何でもここまで酷いとは思っていなかったので、きっちりと教育しましょう」

 そう言うと、周辺の切り出し用の岩の塊の方に向かうと、ミハイル特製の武具を使用して綺麗な六面体に切り出したうえで、倒れているルーカスとその周辺に群がっているツイマ達周辺にヒョイヒョイ軽そうに投げている。

「何だアレは?どれだけ強化されているんだ!」

 ゴクドが噤んだ口を開いてしまうのも当然で、まるで軽い物でも投げるかのように巨大な岩を投げつけ、その先で勝手に綺麗に詰みあがって行くのだから…… 

 やがてルーカス一行を囲うような石壁が出来上がり、その壁が唯一開けている方向、両側に高い壁がある道を進むと、途中まで岩が積みあがっている作成中の砦がある。

 バカ高い壁を飛び越えて中に入ったラスカとミバスロア、そして魔術を使って何とか壁の上に登り下を観察しているゴクド。

 この場の監督は、いつの間にかカサカサとゴクドが現れて壁の上にへばり付いている事に驚いたが、一応事前連絡は【癒しの雫】から受けていたので苦笑いをするだけで特段何かをする事は無かった。

 そのゴクドの耳に入った言葉は……

「そっち、砦とは反対のそこの岩の塊を全部どかす事が出来れば、食事が出てくるわよ」

「そうそう。で、きっちりとその岩を向こうの砦に積み上げなければその日の食事は無し。分かり易いでしょう?貴方達には相当分かり易くしてあげないと理解できなさそうだから、配慮してあげたわ」

 作成中の砦から最も遠い位置にある壁を崩して運び、その壁が無くなれば監督が食事を提供する事にしたのだ。

 しかし、これだけではまた無謀なストライキを実施する可能性が高いので、二人の常識の範囲内で対策を行う。

「はい!これは何でしょうか!わかる人~?」

 質問を投げかけるかのように言いつつラスカが手にしているのは、この場にいる受刑者の人数である六個準備されている魔道具。

 なんだと言われてもわかる訳がないこの場の六人、一人気絶しているので実質五人だが、全員が黙っているのでミバスロアが説明を引き継ぐ。

「これは、私達【癒しの雫】所属の最高の鍛冶師の作品で~す!今回の対策の為だけに作られた品なので、大切にしてくださいね。で、コレの便利な所……よりも、先ずは命名された名前を紹介しましょう!この魔道具を作ったミハイルさんによってつけられた、その名も……デデデデデデ……じゃーん、生かさず殺さずマシーン!」

「いえぇ~い!ヒューヒュー」

 本当に軽すぎる口調だが、中身はとんでもない事を言っているミバスロアとやけに盛り上がり始めるラスカを上から見下ろしているゴクドは、もう誰が魔王なのかわからないと言う気持ちになっている。

 恐怖心に襲われながらも監視しているゴクドをよそに、ラスカは楽しそうに説明を続けている。

「コレの凄い所は、体力が余っている時に作業をしていないと電撃に襲われるところです!体力を関知する技術、周囲に影響のない範囲で装着個体がギリギリ動ける力を見極めて攻撃する技術、その全てが至高!」

「本当に素晴らしいですね~。この特別製魔道具を漏れなく貰える六人が羨ましいです!」

 微笑みながら魔道具で各自の頭に触れると瞬時に消えて首輪になる。

 思わず自分の首を確認してしまうゴクドだが、あの二人の物言いや【癒しの雫】の非常識さから、決してその効果が誇張ではない事を理解できており、今後六人は文句を言う事すらできなくなるだろうと思い、自分達が対策を考える必要は一切なくなったとばかりにこの場から去って行く。

 正直に言うと、もう怖くてこの場にいたくないと言う気持ちが強かったのだ。
剰え同族を個体・・と笑顔で言い切っているのを目の当たりにしたのだから。
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