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その後(2)
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「そう来なくっちゃ。流石はゴクドさん!助かるわ~」
ゴクドがクオウを弱体化させる可能性がありそうな食材を準備しておくと言う提案に対して、全く意図が異なり、美味しい食材を準備してくれるのだと勘違いしているカスミは嬉しそうに答える。
ゴクドとしては、最強魔王であったクオウに毒を盛る事を平然とやってのけるカスミと言う認識でいるので、その後どうなるか……場合によっては魔王国が危機的状況になるのかもしれないと不安に襲われているのだが、ここでカスミに異を唱えた瞬間に解体されそうで恐ろしく、何も言えなかった。
その日の朝食……
ゴクドはカスミとの約束を果たす為に即座に帰還しており、この場にいるのはクオウやシア、カスミ達を始めとする【癒しの雫】の全メンバーと、魔王国から手伝いと言う名の元にこのギルドで仕事をしているレゼニア、レベニ、カロラ。
「フフ、クオウさん。明日の朝食は今度こそ勝てるかもしれないわよ?」
「それは楽しみですね、カスミさん。何か秘策でもあるのですか?」
「そうなのよ!今までと違って少し違う食材を試そうと思うの。今、ゴクドさんが準備してくれていると思うのだけれど、魔王国の食材にチャレンジするのよ!食べた事のない素材……楽しみじゃない?」
「お!そりゃー良いなカスミ。今の料理も十分美味いが、全く違う素材の料理も楽しみだ。なぁ?」
ミハイルが、カスミが作ったスープを美味しそうに飲みながら新素材の料理に期待を込めている。
「それで、私はあまりその新素材に詳しくないじゃない?だから、魔王国出身の誰かに一緒に行って見てもらいたいのよ。今日の夕方にはゴクドさんが食材を準備してくれているらしいから」
「それでは、私が同行させていただきますね、カスミさん」
「本当?ありがとう、フレナブルさん。食材について、色々教えてね!」
同じ席で食事を食べている魔王国所属のレゼニア、レベニ、カロラも、久しぶりに祖国の味が楽しめると心躍らせていた。
「ちょっとゴクド。これは何かしら?」
魔王城の最も豪華な部屋に案内されているカスミとフレナブルの前には、生きの良さそうな各種食材がこれでもかと言う程に準備されておりカスミとしては大満足だったのだが、食材全てに猛毒が含まれている事を知っているフレナブルはそうではない。
青筋を浮かべてゴクドに詰め寄り始めるのだが、カスミは何故フレナブルが怒っているのかわからない。
「え?フレナブルさん。ゴクドさんが一生懸命集めてくれた食材、凄く美味しそうじゃない?」
「……カスミさん。コレはどう調理しても人族が食べれば即死できる程の毒を持っている食材ですよ」
「え?えええええぇぇぇえ、ゴクドさん、何してるの……って、違うわね。ひょっとしたら一部の毒素部分を取り除けば凄く美味しい食材とか?」
「それも違いますね。全身、全体、隈なく毒ですよ、カスミさん。これを食べて無事でいられるのは私達高位の魔族、かろうじてペトロさんと言った所でしょうか?」
もう庇う余地がないと理解したカスミは、自分の神聖な勝負を汚されたと思って切れる。
「……ゴクド、アンタ、私の勝負に泥をかける訳?私を使って恨みでも晴らそうとした?良い根性しているじゃない?」
ゴクドとしては言われた事を必死で完遂したのに、目の前の二人が切れ散らかしているのだからたまらない。
「ま、待ってください。か、カスミの姐さんはクオウ様と勝負するので食材を準備しろと言っていたじゃないですか?普通の食材を食べさせて勝負になると思うのですか?」
フレナブルとカスミは必死のゴクドの弁明を聞いて悪意での行動ではない事は何となく理解し、何故このような事をしたのかを考える。
【癒しの雫】に所属して随分と丸くなったフレナブルでなければ、今頃ゴクドも食材の一部として陳列されていたりするのだが。
「そっか。なるほど……」
「?理解できたのですか?このゴクドの愚行を。是非教えてください、カスミさん」
「えっと、私が思うに、クオウさんだけに食べさせる料理だと思ったんじゃないかな?で、クオウさんであれば毒も人族で言う所の調味料……つまり、この食材をクオウさん専用とすれば美味しく調理できると考えたのではないかしら?」
確かに目の前の食材を人族が食べれば即死だが、クオウにとってみれば軽いスパイス程度にしかならない事はわかるフレナブル。
「なるほど。そう言う事でしたか。勘違いして申し訳ないですね、ゴクド。ですが、今回は人族のメンバーも食べる食材を欲していますから、直ぐに違うものを準備してください」
訳が分からず命の危機に直面し、更に訳が分からないまま危機を回避したゴクドだが、殺気を向けられたのは事実であり、一気に疲労が増した状態で再び食材を急ぎ準備するのだ。
こうした一悶着があったのだが、翌朝の食事は見た事のない料理が並び、所属メンバーだけではなく特に魔王国所属の三人が涙を流さんばかりにカスミの料理を夢中で食べていた。
「カスミさん、確かに素晴らしいですよ。今回は負けました。ですが、今日の夜は負けませんよ?」
クオウのこの言葉を聞いて、天にも昇る気持ちになっていたカスミと、その姿を嬉しそうに見ている【癒しの雫】のメンバーだった……
ゴクドがクオウを弱体化させる可能性がありそうな食材を準備しておくと言う提案に対して、全く意図が異なり、美味しい食材を準備してくれるのだと勘違いしているカスミは嬉しそうに答える。
ゴクドとしては、最強魔王であったクオウに毒を盛る事を平然とやってのけるカスミと言う認識でいるので、その後どうなるか……場合によっては魔王国が危機的状況になるのかもしれないと不安に襲われているのだが、ここでカスミに異を唱えた瞬間に解体されそうで恐ろしく、何も言えなかった。
その日の朝食……
ゴクドはカスミとの約束を果たす為に即座に帰還しており、この場にいるのはクオウやシア、カスミ達を始めとする【癒しの雫】の全メンバーと、魔王国から手伝いと言う名の元にこのギルドで仕事をしているレゼニア、レベニ、カロラ。
「フフ、クオウさん。明日の朝食は今度こそ勝てるかもしれないわよ?」
「それは楽しみですね、カスミさん。何か秘策でもあるのですか?」
「そうなのよ!今までと違って少し違う食材を試そうと思うの。今、ゴクドさんが準備してくれていると思うのだけれど、魔王国の食材にチャレンジするのよ!食べた事のない素材……楽しみじゃない?」
「お!そりゃー良いなカスミ。今の料理も十分美味いが、全く違う素材の料理も楽しみだ。なぁ?」
ミハイルが、カスミが作ったスープを美味しそうに飲みながら新素材の料理に期待を込めている。
「それで、私はあまりその新素材に詳しくないじゃない?だから、魔王国出身の誰かに一緒に行って見てもらいたいのよ。今日の夕方にはゴクドさんが食材を準備してくれているらしいから」
「それでは、私が同行させていただきますね、カスミさん」
「本当?ありがとう、フレナブルさん。食材について、色々教えてね!」
同じ席で食事を食べている魔王国所属のレゼニア、レベニ、カロラも、久しぶりに祖国の味が楽しめると心躍らせていた。
「ちょっとゴクド。これは何かしら?」
魔王城の最も豪華な部屋に案内されているカスミとフレナブルの前には、生きの良さそうな各種食材がこれでもかと言う程に準備されておりカスミとしては大満足だったのだが、食材全てに猛毒が含まれている事を知っているフレナブルはそうではない。
青筋を浮かべてゴクドに詰め寄り始めるのだが、カスミは何故フレナブルが怒っているのかわからない。
「え?フレナブルさん。ゴクドさんが一生懸命集めてくれた食材、凄く美味しそうじゃない?」
「……カスミさん。コレはどう調理しても人族が食べれば即死できる程の毒を持っている食材ですよ」
「え?えええええぇぇぇえ、ゴクドさん、何してるの……って、違うわね。ひょっとしたら一部の毒素部分を取り除けば凄く美味しい食材とか?」
「それも違いますね。全身、全体、隈なく毒ですよ、カスミさん。これを食べて無事でいられるのは私達高位の魔族、かろうじてペトロさんと言った所でしょうか?」
もう庇う余地がないと理解したカスミは、自分の神聖な勝負を汚されたと思って切れる。
「……ゴクド、アンタ、私の勝負に泥をかける訳?私を使って恨みでも晴らそうとした?良い根性しているじゃない?」
ゴクドとしては言われた事を必死で完遂したのに、目の前の二人が切れ散らかしているのだからたまらない。
「ま、待ってください。か、カスミの姐さんはクオウ様と勝負するので食材を準備しろと言っていたじゃないですか?普通の食材を食べさせて勝負になると思うのですか?」
フレナブルとカスミは必死のゴクドの弁明を聞いて悪意での行動ではない事は何となく理解し、何故このような事をしたのかを考える。
【癒しの雫】に所属して随分と丸くなったフレナブルでなければ、今頃ゴクドも食材の一部として陳列されていたりするのだが。
「そっか。なるほど……」
「?理解できたのですか?このゴクドの愚行を。是非教えてください、カスミさん」
「えっと、私が思うに、クオウさんだけに食べさせる料理だと思ったんじゃないかな?で、クオウさんであれば毒も人族で言う所の調味料……つまり、この食材をクオウさん専用とすれば美味しく調理できると考えたのではないかしら?」
確かに目の前の食材を人族が食べれば即死だが、クオウにとってみれば軽いスパイス程度にしかならない事はわかるフレナブル。
「なるほど。そう言う事でしたか。勘違いして申し訳ないですね、ゴクド。ですが、今回は人族のメンバーも食べる食材を欲していますから、直ぐに違うものを準備してください」
訳が分からず命の危機に直面し、更に訳が分からないまま危機を回避したゴクドだが、殺気を向けられたのは事実であり、一気に疲労が増した状態で再び食材を急ぎ準備するのだ。
こうした一悶着があったのだが、翌朝の食事は見た事のない料理が並び、所属メンバーだけではなく特に魔王国所属の三人が涙を流さんばかりにカスミの料理を夢中で食べていた。
「カスミさん、確かに素晴らしいですよ。今回は負けました。ですが、今日の夜は負けませんよ?」
クオウのこの言葉を聞いて、天にも昇る気持ちになっていたカスミと、その姿を嬉しそうに見ている【癒しの雫】のメンバーだった……
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