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アルゾナ王国の防衛(4)
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「おい、お前!早く城門の中に退避しろ」
ハンナに向けて大声で叫ぶフィライト。
いくら不遜な態度を取っていた連中だとしても、アルゾナ王国を守ろうとしてくれたのは事実。
そして、手も足も出ない状況で嬲り殺しにされる女性を目の前で見る事に耐えられなかったフィライトは、気が付けばこの場に飛び出していたのだ。
「テメーは、あんときあっさり逃げた腰抜けじゃねーかよ!ハハハハ!」
突然のフィライトの出現に、引いた拳を下ろして挑発する。
フィライトはハンナの手を掴み、半ば強引に城門の方に放り投げる。
カロラの最終目的はルーカスではあるが、目の前にルーカスよりもおいしそうな獲物がいる事から、敢えてハンナを見逃した。
「俺は、あの時に命令であったとしてもホスフォ様を見捨てた事を後悔している。お前がホスフォ様の腕をもぎ取った時に反応できなかった悔しさもある。確かにお前は強い。だが、ホスフォ様の為、アルゾナ王国の為に、引くわけにはいかんのだ!」
背中に背負っている槍を手に持ち、臨戦態勢になるホスフォ。
「ほ~、少しは楽しめそうじゃねーか。こいつは貰うぜ、レベニ!」
「ケケケケケ、好きにしろ」
既にレベニと呼ばれる魔族と戦闘していた【勇者の館】Aランカーは全滅しており、この状況では最早フィライトが助かる可能性は万に一つもないのだが、戦闘の意思だけは衰えていない。
「早く閉めろ!」
城門の方からはルーカスの叫び声が聞こえるのだが、それすら気にならない程に集中しているフィライトだ。
実際に城門では、ルーカスとドリアスが全力で門を必死で閉めていた。
門番は唖然とするが、確かに今の段階で門を閉めなければ城下町、王城すら壊滅的な被害を受ける事は間違いないので、彼ら二人を憎らし気に睨みつつも止める事は出来なかったのだ。
「では、参る!」
一気に踏み込み、刺突を繰り出した体制から横なぎに槍を払ったフィライト。
以前見たカロラの動きであれば、初撃の突きを難なく躱すと考えていたフィライトは、避けられる事を前提に二の手を打っていた。
まさかの攻撃に、初撃は余裕を持って躱したカロラも反応が遅れて真面に横なぎの槍を食らって吹き飛ぶ。
……ドン……
もくもくと立ち上る煙の中から、楽しそうなカロラの声が聞こえる。
「ハハハハハ!良いぜお前!!あの腰抜けよりもよっぽど強ぇーじゃねーかよ!魔族は結果、強さが全てだ。その強さに免じて、俺も本気を出してやるよ!」
フィライトは油断なく煙の中から見える影を睨みつけて、何時でも反撃できる体制を取っていた。
……グチャ……
次の瞬間フィライトの目の前に見えたのは……正に瞬き直後に目の前に現れた丸坊主の魔族であるカロラの顔。
そしてその右手は自らの胸を容易く貫いていた。
「テメーは本物の戦士だ。だから、敬意を表して一撃で始末してやった。テメーの名前は覚えておいてやるぜ、フィライト」
既に眼の光を失っている男に対してこう伝えると、その右手を引き抜く。
カロラが人族の名前を覚えるのは、本当に気に入った人物だけだ。
もちろん全て戦って殺してはいるのだが、城門の上で騎士が騒いでいた時の名前が聞こえており、ここに飛び降りてきた段階で相当の覚悟を持てる男だと判断していた。
カロラがその手を引き抜いた直後、フィライトはそのまま倒れ込んだかと思うと、レベニの魔術によって骨も残らずに焼却された。
一応レベニとしても敬意を表して、火葬としたのだ。
「ケケケケケ、お前がそこまで思い入れるとは、余程の男だな」
「ケッ、そう言うテメーこそ、魔術を行使してまで火葬してやるたー、俺と大して変わらねーぞ」
既に完全に閉じた城門と、遥か高みから愕然とこちらを見ている騎士達を見ながらも魔族二人の会話が続く。
「で、どうするよ?正直、ゴクド様の命令とは言え、あれ程の雑魚……警戒する必要があるか?」
「ケケケケ、確かにそうだ。この事実を一応伝えて、次なる指示が来るまでここで待機しておこう」
容易く目標を逃がすわけにはいかないので、本当のルーカスの実力を報告して新たな指示が来るまではこの城門前で待機する事にした二人の魔族。
その情報は、眷属によって即座にゴクドに届けられる。
ハンナに向けて大声で叫ぶフィライト。
いくら不遜な態度を取っていた連中だとしても、アルゾナ王国を守ろうとしてくれたのは事実。
そして、手も足も出ない状況で嬲り殺しにされる女性を目の前で見る事に耐えられなかったフィライトは、気が付けばこの場に飛び出していたのだ。
「テメーは、あんときあっさり逃げた腰抜けじゃねーかよ!ハハハハ!」
突然のフィライトの出現に、引いた拳を下ろして挑発する。
フィライトはハンナの手を掴み、半ば強引に城門の方に放り投げる。
カロラの最終目的はルーカスではあるが、目の前にルーカスよりもおいしそうな獲物がいる事から、敢えてハンナを見逃した。
「俺は、あの時に命令であったとしてもホスフォ様を見捨てた事を後悔している。お前がホスフォ様の腕をもぎ取った時に反応できなかった悔しさもある。確かにお前は強い。だが、ホスフォ様の為、アルゾナ王国の為に、引くわけにはいかんのだ!」
背中に背負っている槍を手に持ち、臨戦態勢になるホスフォ。
「ほ~、少しは楽しめそうじゃねーか。こいつは貰うぜ、レベニ!」
「ケケケケケ、好きにしろ」
既にレベニと呼ばれる魔族と戦闘していた【勇者の館】Aランカーは全滅しており、この状況では最早フィライトが助かる可能性は万に一つもないのだが、戦闘の意思だけは衰えていない。
「早く閉めろ!」
城門の方からはルーカスの叫び声が聞こえるのだが、それすら気にならない程に集中しているフィライトだ。
実際に城門では、ルーカスとドリアスが全力で門を必死で閉めていた。
門番は唖然とするが、確かに今の段階で門を閉めなければ城下町、王城すら壊滅的な被害を受ける事は間違いないので、彼ら二人を憎らし気に睨みつつも止める事は出来なかったのだ。
「では、参る!」
一気に踏み込み、刺突を繰り出した体制から横なぎに槍を払ったフィライト。
以前見たカロラの動きであれば、初撃の突きを難なく躱すと考えていたフィライトは、避けられる事を前提に二の手を打っていた。
まさかの攻撃に、初撃は余裕を持って躱したカロラも反応が遅れて真面に横なぎの槍を食らって吹き飛ぶ。
……ドン……
もくもくと立ち上る煙の中から、楽しそうなカロラの声が聞こえる。
「ハハハハハ!良いぜお前!!あの腰抜けよりもよっぽど強ぇーじゃねーかよ!魔族は結果、強さが全てだ。その強さに免じて、俺も本気を出してやるよ!」
フィライトは油断なく煙の中から見える影を睨みつけて、何時でも反撃できる体制を取っていた。
……グチャ……
次の瞬間フィライトの目の前に見えたのは……正に瞬き直後に目の前に現れた丸坊主の魔族であるカロラの顔。
そしてその右手は自らの胸を容易く貫いていた。
「テメーは本物の戦士だ。だから、敬意を表して一撃で始末してやった。テメーの名前は覚えておいてやるぜ、フィライト」
既に眼の光を失っている男に対してこう伝えると、その右手を引き抜く。
カロラが人族の名前を覚えるのは、本当に気に入った人物だけだ。
もちろん全て戦って殺してはいるのだが、城門の上で騎士が騒いでいた時の名前が聞こえており、ここに飛び降りてきた段階で相当の覚悟を持てる男だと判断していた。
カロラがその手を引き抜いた直後、フィライトはそのまま倒れ込んだかと思うと、レベニの魔術によって骨も残らずに焼却された。
一応レベニとしても敬意を表して、火葬としたのだ。
「ケケケケケ、お前がそこまで思い入れるとは、余程の男だな」
「ケッ、そう言うテメーこそ、魔術を行使してまで火葬してやるたー、俺と大して変わらねーぞ」
既に完全に閉じた城門と、遥か高みから愕然とこちらを見ている騎士達を見ながらも魔族二人の会話が続く。
「で、どうするよ?正直、ゴクド様の命令とは言え、あれ程の雑魚……警戒する必要があるか?」
「ケケケケ、確かにそうだ。この事実を一応伝えて、次なる指示が来るまでここで待機しておこう」
容易く目標を逃がすわけにはいかないので、本当のルーカスの実力を報告して新たな指示が来るまではこの城門前で待機する事にした二人の魔族。
その情報は、眷属によって即座にゴクドに届けられる。
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