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書類の提出と……(2)
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これ以上この場にいても碌な事はないと思い、来たと思った瞬間に踵を返して【勇者の館】を後にするツイマ。
足取り重く目の前のギルド本部に戻ると、当然のように即ギルドマスターであるラクロスから確認が入る。
「ツイマ君。【勇者の館】はどうだった?あれでもAランクギルド。回復の備えは十分しているだろうから、そう大きな問題はないだろう?」
「は、はい。ですがギルドマスターのルーカス様は未だ養生しているようで、正確な報告が出来るかどうか……」
少しでも書類の納期を遅延させて、自分の作業時間を確保するために説明するツイマ。
「いや、それは問題ないだろう。そもそも、戦闘に集中していたはずのギルドマスターのルーカス殿からの報告はあまり意味がない。どうせ外皮が硬かったとかそう言う言い訳じみた報告しか上がらない事は明らかだ。客観的な情報を得るためには、戦闘時に周囲を囲っていた冒険者を統括した上で、【勇者の館】の事務職であるルーニー殿が仕上げれば良い話だ。こう言った処理は時間をかけると正確さが損なわれる。今後の糧にするべき案件なのだから、さっさと始めてくれ」
ツイマが口を挟む暇もなく、長い話を一息で言い切って話を終わらせたラクロス。
「は、はい」
当然ツイマは肯定の返事をするしかなく、トボトボと自分の席に戻る。
ツイマは【勇者の館】の専属対応となっているので、他の案件は持っていない。
つまり、今は書類を作成する時間は十二分にあるのだが、その実力がない。
以前あまりに仕事が出来ずに、首直前まで行きつつも辛うじて受付の仕事を失わずに済んだ経緯がある程だ。
何故このような男が本部ギルドマスターにまで成り上がる事が出来たかと言うと、ギルドマスターになる前から【勇者の館】のルーカスに対して便宜を図っており、結果的にルーカス個人、そしてギルドもSランクになった功績によってギルドマスターになっていたのだ。
そのしわ寄せ、本来仕事を覚えなくてはいけない時代から腰巾着を行っていた関係で、はっきり言って今でも書類の作成能力は著しく低い。
チラチラ同僚になっている他の受付に視線を送るが、誰一人として視線を合わせようともせず、当然助ける素振りすら見せていない。
以前も同じ状況になり、徹夜で書類を上げた経緯があるので、再び書類を作成し始めるツイマ。
食事もとらず、ただひたすらに書類を作成して、夕方……
「できた!」
漸くできた書類を、ギルドマスターであるラクロスの所に持って行く。
「……ツイマ君。自分で初めてコレを受け取ったと思って、もう一度読むと良い」
ラクロスは苦い顔をしながらこれだけ告げて、ツイマに書類を突っ返す。
その後、数度チャレンジするも全てダメ出しをされ、ついに呆れたような表情でこれだけ言い残してラクロスは帰宅してしまう。
「ツイマ君。明日の朝までに数パターン書類を用意しておくように。一つがダメでも、もう一つ、最悪は部分的に併せて何とか体裁を保てるかもしれないからね」
周囲からの視線もより厳しくなっている中で、遅番の受付と共に再び席に戻って仕事を再開するツイマ。
「なんで……俺がこんな事を……」
一人愚痴を漏らしているが、慰めてくれる人も、仕事を手伝ってくれる人も、助言してくれる人すらいないままだ。
これが今までの彼の人徳を現す結果となっている。
足取り重く目の前のギルド本部に戻ると、当然のように即ギルドマスターであるラクロスから確認が入る。
「ツイマ君。【勇者の館】はどうだった?あれでもAランクギルド。回復の備えは十分しているだろうから、そう大きな問題はないだろう?」
「は、はい。ですがギルドマスターのルーカス様は未だ養生しているようで、正確な報告が出来るかどうか……」
少しでも書類の納期を遅延させて、自分の作業時間を確保するために説明するツイマ。
「いや、それは問題ないだろう。そもそも、戦闘に集中していたはずのギルドマスターのルーカス殿からの報告はあまり意味がない。どうせ外皮が硬かったとかそう言う言い訳じみた報告しか上がらない事は明らかだ。客観的な情報を得るためには、戦闘時に周囲を囲っていた冒険者を統括した上で、【勇者の館】の事務職であるルーニー殿が仕上げれば良い話だ。こう言った処理は時間をかけると正確さが損なわれる。今後の糧にするべき案件なのだから、さっさと始めてくれ」
ツイマが口を挟む暇もなく、長い話を一息で言い切って話を終わらせたラクロス。
「は、はい」
当然ツイマは肯定の返事をするしかなく、トボトボと自分の席に戻る。
ツイマは【勇者の館】の専属対応となっているので、他の案件は持っていない。
つまり、今は書類を作成する時間は十二分にあるのだが、その実力がない。
以前あまりに仕事が出来ずに、首直前まで行きつつも辛うじて受付の仕事を失わずに済んだ経緯がある程だ。
何故このような男が本部ギルドマスターにまで成り上がる事が出来たかと言うと、ギルドマスターになる前から【勇者の館】のルーカスに対して便宜を図っており、結果的にルーカス個人、そしてギルドもSランクになった功績によってギルドマスターになっていたのだ。
そのしわ寄せ、本来仕事を覚えなくてはいけない時代から腰巾着を行っていた関係で、はっきり言って今でも書類の作成能力は著しく低い。
チラチラ同僚になっている他の受付に視線を送るが、誰一人として視線を合わせようともせず、当然助ける素振りすら見せていない。
以前も同じ状況になり、徹夜で書類を上げた経緯があるので、再び書類を作成し始めるツイマ。
食事もとらず、ただひたすらに書類を作成して、夕方……
「できた!」
漸くできた書類を、ギルドマスターであるラクロスの所に持って行く。
「……ツイマ君。自分で初めてコレを受け取ったと思って、もう一度読むと良い」
ラクロスは苦い顔をしながらこれだけ告げて、ツイマに書類を突っ返す。
その後、数度チャレンジするも全てダメ出しをされ、ついに呆れたような表情でこれだけ言い残してラクロスは帰宅してしまう。
「ツイマ君。明日の朝までに数パターン書類を用意しておくように。一つがダメでも、もう一つ、最悪は部分的に併せて何とか体裁を保てるかもしれないからね」
周囲からの視線もより厳しくなっている中で、遅番の受付と共に再び席に戻って仕事を再開するツイマ。
「なんで……俺がこんな事を……」
一人愚痴を漏らしているが、慰めてくれる人も、仕事を手伝ってくれる人も、助言してくれる人すらいないままだ。
これが今までの彼の人徳を現す結果となっている。
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