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【癒しの雫】のランク(1)
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「此度の依頼、無事達成してくれたようで何よりだ。正直、想定以上の魔獣がいた事には驚いたが、それ以上に、それすら含めて瞬殺したと聞いた事に驚いておる。どうやら、非常に特殊な武具を使ったようだな。見せて貰えるか?」
「はっ、こちらでございます」
普段とは打って変わって、非常に丁寧に対応するミハイル。
その手には、自らが使用した音によって攻撃して地中に潜んでいるピオンを仕留めた筒の武具が握られている。
騎士がミハイルに近づき、武具をミハイルから受け取って国王に渡される。
「このような小さな筒が……複数の証言がなければ、俄には信じられぬがな」
筒を除いたり、軽く叩いたり振ったりしている国王。
「ミハイルさん、アレ、間違って起動しないですよね?」
「安心しろって、マスター。残念ながら一回こっきりの使い捨てだからな」
シアとしては国王が平気であの武具を弄んでいるので、暴走しないかが心配だった。
不慮の事故とは言え、最悪は国王ばかりかこの周辺を破壊しかねない威力がある事を知っているからだが、どうやらあの攻撃は一度だけ使用できる武具であったようで、ホッと一安心する。
「聞いた通りの威力が出る武具であれば、王国の騎士に常備させたいのだが……可能か?【癒しの雫】のマスターよ」
「恐れながら申し上げます。その武具は特殊な素材から作成しておりまして、漸く出来上がった試作品です。納品できる量も作れなければ、安全性の担保も未だできておりません。大変申し訳ありません」
この質問は想定できており、既にミハイルとクオウからこう答える様に言われていたので、淀みなく答えるシア。
「…そうか。聞いた通りの威力であれば、そうなのだろうな。良し、わかった。次が本題だ。此度の王都襲撃に対する対応、見事としか言いようがない。前回は【勇者の館】によって危機を脱したが、前回以上の戦力で来られたために彼らでは歯が立たなかったようだ」
この部分だけを聞いて、既にクオウはギルドランクが上がるのではないかと言う期待が大きくなっていた。
機嫌のよさそうな国王と謁見している【癒しの雫】。
「まさか余もスピナだけではなく、地中にピオンが二体も潜んでいるとは思ってもいなかったぞ。それを容易く始末する。素晴らしいではないか。聞けば、その四体は特殊個体であるとの事。そうなれば、通常はSランクギルド対応案件となるべきだと考えておる」
本当は特殊個体と言う訳ではなく、一時的にレゼニアによってブーストされていただけではあるのだが、脅威が増しているという点では間違ってはいない。
「それが証拠に、前回スピナを退けた【勇者の館】が手も足も出ずに敗戦したのが良い証拠だ。一応あそこも少し前まではSランクギルドであったからな」
この話の最中に、恐らく急ぎ呼ばれたのであろう本部ギルドマスターであるラクロスも入室してきた。
「おぉ、漸く来たか。あれほどの大騒ぎだ。処理も大変であろうが、済まぬな」
「もったいないお言葉です」
もうこの時点で、クオウは自分の考えが正しいと確信した。
態々本部のギルドマスターまで呼ぶのであれば、ランクアップしかありえないからだ。
「ふっ。クオウとやらは既に気が付いているようだな」
流石は国王。目ざとくクオウの表情から何を思っているのかを読み取ったようだ。
「恐れ入ります」
殊勝な態度で対応するクオウ。
実績からあり得ないとは思うが、ここで対応を間違えて機嫌を損ねてランクアップが無くなる事を防ぎたかったのだが、他の【癒しの雫】のメンバーはこの二人のやり取りが理解できていなかった。
「勿体ぶっても仕方があるまい。では、ラクロスもこの場にいる為にここでジャロリア王国の国王として宣言する。此度の成果で【癒しの雫】をSランクギルドに認定する!魔王ゴクドの脅威は日々増えているのは最早疑いようはない。国家、世界を守るべく【癒しの雫】の働きを期待しておるぞ」
クオウとフレナブル以外はポカンとしている【癒しの雫】をよそに、国王はこの場から退席する。
「皆さんはジャロリア王国唯一のSランクギルドに認定されました。ギルドカードの魔道具もこちらから後程お持ちしますが……えっと……」
本部ギルドマスターであるラクロスが説明をしようとするのだが、【癒しの雫】ギルドマスターであるシアを始めとして、メンバーは口を開けたまま彫刻のように動きを見せない。
「突然の事ですから、仕方がないでしょうね。ラクロス、クオウさんに説明しましょうか」
「はっ!」
当然この場に同席していたサステナ・リビル公爵が、苦笑いをしつつも唯一呆けていないクオウに説明するように進言する。
その内容は、受けた依頼の達成率の極端な悪化が長期間継続した場合や、明らかに極度に実力が低下していると認められない限りは、他のランクとは異なり、ランクダウンとなる可能性は極めて低い。
それ程Sランクは別格の扱いなのだが、【勇者の館】が容赦なくランクダウンとなったのは、自ら受領した依頼、魔王討伐を長期間にわたって塩漬けにした挙句、書類の不備や素行の悪さ、更には数々の醜態まで継続して晒してしまったからだ。
「はっ、こちらでございます」
普段とは打って変わって、非常に丁寧に対応するミハイル。
その手には、自らが使用した音によって攻撃して地中に潜んでいるピオンを仕留めた筒の武具が握られている。
騎士がミハイルに近づき、武具をミハイルから受け取って国王に渡される。
「このような小さな筒が……複数の証言がなければ、俄には信じられぬがな」
筒を除いたり、軽く叩いたり振ったりしている国王。
「ミハイルさん、アレ、間違って起動しないですよね?」
「安心しろって、マスター。残念ながら一回こっきりの使い捨てだからな」
シアとしては国王が平気であの武具を弄んでいるので、暴走しないかが心配だった。
不慮の事故とは言え、最悪は国王ばかりかこの周辺を破壊しかねない威力がある事を知っているからだが、どうやらあの攻撃は一度だけ使用できる武具であったようで、ホッと一安心する。
「聞いた通りの威力が出る武具であれば、王国の騎士に常備させたいのだが……可能か?【癒しの雫】のマスターよ」
「恐れながら申し上げます。その武具は特殊な素材から作成しておりまして、漸く出来上がった試作品です。納品できる量も作れなければ、安全性の担保も未だできておりません。大変申し訳ありません」
この質問は想定できており、既にミハイルとクオウからこう答える様に言われていたので、淀みなく答えるシア。
「…そうか。聞いた通りの威力であれば、そうなのだろうな。良し、わかった。次が本題だ。此度の王都襲撃に対する対応、見事としか言いようがない。前回は【勇者の館】によって危機を脱したが、前回以上の戦力で来られたために彼らでは歯が立たなかったようだ」
この部分だけを聞いて、既にクオウはギルドランクが上がるのではないかと言う期待が大きくなっていた。
機嫌のよさそうな国王と謁見している【癒しの雫】。
「まさか余もスピナだけではなく、地中にピオンが二体も潜んでいるとは思ってもいなかったぞ。それを容易く始末する。素晴らしいではないか。聞けば、その四体は特殊個体であるとの事。そうなれば、通常はSランクギルド対応案件となるべきだと考えておる」
本当は特殊個体と言う訳ではなく、一時的にレゼニアによってブーストされていただけではあるのだが、脅威が増しているという点では間違ってはいない。
「それが証拠に、前回スピナを退けた【勇者の館】が手も足も出ずに敗戦したのが良い証拠だ。一応あそこも少し前まではSランクギルドであったからな」
この話の最中に、恐らく急ぎ呼ばれたのであろう本部ギルドマスターであるラクロスも入室してきた。
「おぉ、漸く来たか。あれほどの大騒ぎだ。処理も大変であろうが、済まぬな」
「もったいないお言葉です」
もうこの時点で、クオウは自分の考えが正しいと確信した。
態々本部のギルドマスターまで呼ぶのであれば、ランクアップしかありえないからだ。
「ふっ。クオウとやらは既に気が付いているようだな」
流石は国王。目ざとくクオウの表情から何を思っているのかを読み取ったようだ。
「恐れ入ります」
殊勝な態度で対応するクオウ。
実績からあり得ないとは思うが、ここで対応を間違えて機嫌を損ねてランクアップが無くなる事を防ぎたかったのだが、他の【癒しの雫】のメンバーはこの二人のやり取りが理解できていなかった。
「勿体ぶっても仕方があるまい。では、ラクロスもこの場にいる為にここでジャロリア王国の国王として宣言する。此度の成果で【癒しの雫】をSランクギルドに認定する!魔王ゴクドの脅威は日々増えているのは最早疑いようはない。国家、世界を守るべく【癒しの雫】の働きを期待しておるぞ」
クオウとフレナブル以外はポカンとしている【癒しの雫】をよそに、国王はこの場から退席する。
「皆さんはジャロリア王国唯一のSランクギルドに認定されました。ギルドカードの魔道具もこちらから後程お持ちしますが……えっと……」
本部ギルドマスターであるラクロスが説明をしようとするのだが、【癒しの雫】ギルドマスターであるシアを始めとして、メンバーは口を開けたまま彫刻のように動きを見せない。
「突然の事ですから、仕方がないでしょうね。ラクロス、クオウさんに説明しましょうか」
「はっ!」
当然この場に同席していたサステナ・リビル公爵が、苦笑いをしつつも唯一呆けていないクオウに説明するように進言する。
その内容は、受けた依頼の達成率の極端な悪化が長期間継続した場合や、明らかに極度に実力が低下していると認められない限りは、他のランクとは異なり、ランクダウンとなる可能性は極めて低い。
それ程Sランクは別格の扱いなのだが、【勇者の館】が容赦なくランクダウンとなったのは、自ら受領した依頼、魔王討伐を長期間にわたって塩漬けにした挙句、書類の不備や素行の悪さ、更には数々の醜態まで継続して晒してしまったからだ。
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