96 / 153
四星(3)
しおりを挟む
心配そうな表情の住民に対して、安心してもらおうと努めて普段通りの対応を心掛けるシア。
「はいっ!ギルド本部からの依頼ですから。でも、【勇者の館】が先行して対処するので、何もなければ向かうだけで終わりますね」
「……そうかい。あんた達にお鉢が回ってこなければ良いがね。何もできない私が言える事じゃないが、無事に帰ってきておくれよ!」
心配そうにシアを始めとした【癒しの雫】のメンバーを見つめて来る女性。
そしてこの話を聞いていた周囲の人々も同じ気持ちの様で、口々にシア達の安全を願うような事を口にしてくれている。
「クオウ様、本当に嬉しいですね」
周囲の人々に愛されていると感じる事が出来て、フレナブルは思わず口にしたその一言。
同じ魔族であるアルフレド、そしてハーフのペトロも思いは同じようで、嬉しそうにその女性達に向けて微笑んでいる。
随分と三人共意識が変わったな…と思いつつ、フレナブルの言葉を首肯するクオウ。
「皆さんの安心は、絶対に私達【癒しの雫】が守ります。安心していてください!」
そこにシアが自信満々に宣言するので、周囲の人々は幼いシアの決意を感じ取り、冷静になる事が出来ていた。
「お~、流石はマスターじゃねーか。なぁ?クオウの旦那!」
「頼もしくなりましたね」
今回はギルド総出で門に向かっているので、直接戦闘する機会がない鍛冶三人組も同行している。
鍛冶士三人組が持っている収納袋には、彼らが日々作成している武具の試作品が山のように収納されており、彼らとしてはどうせ【勇者の館】は手も足も出ずに敗れると思っているので、良い実験が出来ると意気込んでいる。
その意図を正確に理解している他の【癒しの雫】のメンバーは、どれ程の武具が出来ているのかを楽しみにしている程だ。
テクテクと門に向かっているのだが、既に戦闘が始まっているようで、振動・轟音が聞こえて来る。
「凄い音ですね。【勇者の館】もこれ程の攻撃が出来たのですね!」
「シア様。この音と振動は【変質者の館】ではなく、恐らく魔獣、スピナの攻撃の音だと思いますよ」
【勇者の館】が気に入らないのは皆同じ気持ちだが、敬愛しているクオウの古巣であり、その当時にクオウに対して行っていた行動を知っているので、フレナブルはその思いが突出している。
そうこうしている内に、門に到着して外にでる。
その視線の先には、巨大な蛇型魔獣のスピナ二体が激しく暴れまわっていた。
「クオウの旦那、予想通り特殊個体みて~だな」
動きの速さを見てミハイルが魔獣の状態をすかさず把握するが、鑑定士であるバーミルがその見解を否定した。
「いや、あれは確かに通常個体に見えないが、支援魔術で強化されているだけだ」
「え?バーミルさん、あれだけの巨体に懸けられる支援魔術ですか?」
「カスミさんが驚くのも無理はないが、俺の鑑定によればそうなっているから、間違いないだろうね。でも、あの程度の魔獣、今の俺達なら何も問題ないでしょ?」
「うっ。そう言えばそうですね。なんだか自分の常識がおかしくなっているので、混乱しちゃいました」
テヘヘとばかりに頭を掻いているカスミだが、誰一人としてあの程度と言うバーミルの言葉を否定はしなかった。
「お待ちください!!」
そこに、王都方面から突然聞こえて来た声に反応して全員が門を見ると、そこには冒険者風の装備と共に現れたリリアがおり、その後ろを追うように騎士隊長であるゴルダがいたのだ。
誰がどう見ても必死で止めるゴルダを完全に無視してこの場に来たであろうリリアは、さわやかな笑顔でこう言い放った。
「皆さん、国家の危機で緊急依頼が出たのは知っています。【癒しの雫】のサポーターである私としては、指を咥えて防壁内部でボサッとしている訳にはいかず馳せ参じました!!」
その後ろでは、ゴルダが全てを諦めたかのように落ち込んでいる表情になっており、どう反応して良いのか分からない【癒しの雫】の全メンバー。
取り敢えずリリアにはリアントを与えて置けば問題ないだろうと判断したアルフレドのファインプレーにより、この危機的状況化ではあるのだが、リアントが主の指示によってリリアに近づくと、思惑通りにリリアはリアントに夢中になった。
このままリリアが暴走すると、一人でも勝手に魔獣に向かいかねなかったリリアを止めてくれた事を理解したゴルダ。
「申し訳ありません、アルフレド殿」
疲れた表情でこれだけ口にすると、諦めたかのようにリリアの背後に移動して護衛としての立ち位置を堅持し始めた。
「アルフレドさん、ナイス判断です!」
「いえいえ、マスター。流石にここまでくれば、リリアさんの扱いは慣れてきましたよ。リアントも慣れてきていますし、変にウロウロされるよりも、この場で留まって頂いた方が良いですからね」
未だ自分達の出番ではないのだろうと判断しているので、呑気な会話がなされている。
「はいっ!ギルド本部からの依頼ですから。でも、【勇者の館】が先行して対処するので、何もなければ向かうだけで終わりますね」
「……そうかい。あんた達にお鉢が回ってこなければ良いがね。何もできない私が言える事じゃないが、無事に帰ってきておくれよ!」
心配そうにシアを始めとした【癒しの雫】のメンバーを見つめて来る女性。
そしてこの話を聞いていた周囲の人々も同じ気持ちの様で、口々にシア達の安全を願うような事を口にしてくれている。
「クオウ様、本当に嬉しいですね」
周囲の人々に愛されていると感じる事が出来て、フレナブルは思わず口にしたその一言。
同じ魔族であるアルフレド、そしてハーフのペトロも思いは同じようで、嬉しそうにその女性達に向けて微笑んでいる。
随分と三人共意識が変わったな…と思いつつ、フレナブルの言葉を首肯するクオウ。
「皆さんの安心は、絶対に私達【癒しの雫】が守ります。安心していてください!」
そこにシアが自信満々に宣言するので、周囲の人々は幼いシアの決意を感じ取り、冷静になる事が出来ていた。
「お~、流石はマスターじゃねーか。なぁ?クオウの旦那!」
「頼もしくなりましたね」
今回はギルド総出で門に向かっているので、直接戦闘する機会がない鍛冶三人組も同行している。
鍛冶士三人組が持っている収納袋には、彼らが日々作成している武具の試作品が山のように収納されており、彼らとしてはどうせ【勇者の館】は手も足も出ずに敗れると思っているので、良い実験が出来ると意気込んでいる。
その意図を正確に理解している他の【癒しの雫】のメンバーは、どれ程の武具が出来ているのかを楽しみにしている程だ。
テクテクと門に向かっているのだが、既に戦闘が始まっているようで、振動・轟音が聞こえて来る。
「凄い音ですね。【勇者の館】もこれ程の攻撃が出来たのですね!」
「シア様。この音と振動は【変質者の館】ではなく、恐らく魔獣、スピナの攻撃の音だと思いますよ」
【勇者の館】が気に入らないのは皆同じ気持ちだが、敬愛しているクオウの古巣であり、その当時にクオウに対して行っていた行動を知っているので、フレナブルはその思いが突出している。
そうこうしている内に、門に到着して外にでる。
その視線の先には、巨大な蛇型魔獣のスピナ二体が激しく暴れまわっていた。
「クオウの旦那、予想通り特殊個体みて~だな」
動きの速さを見てミハイルが魔獣の状態をすかさず把握するが、鑑定士であるバーミルがその見解を否定した。
「いや、あれは確かに通常個体に見えないが、支援魔術で強化されているだけだ」
「え?バーミルさん、あれだけの巨体に懸けられる支援魔術ですか?」
「カスミさんが驚くのも無理はないが、俺の鑑定によればそうなっているから、間違いないだろうね。でも、あの程度の魔獣、今の俺達なら何も問題ないでしょ?」
「うっ。そう言えばそうですね。なんだか自分の常識がおかしくなっているので、混乱しちゃいました」
テヘヘとばかりに頭を掻いているカスミだが、誰一人としてあの程度と言うバーミルの言葉を否定はしなかった。
「お待ちください!!」
そこに、王都方面から突然聞こえて来た声に反応して全員が門を見ると、そこには冒険者風の装備と共に現れたリリアがおり、その後ろを追うように騎士隊長であるゴルダがいたのだ。
誰がどう見ても必死で止めるゴルダを完全に無視してこの場に来たであろうリリアは、さわやかな笑顔でこう言い放った。
「皆さん、国家の危機で緊急依頼が出たのは知っています。【癒しの雫】のサポーターである私としては、指を咥えて防壁内部でボサッとしている訳にはいかず馳せ参じました!!」
その後ろでは、ゴルダが全てを諦めたかのように落ち込んでいる表情になっており、どう反応して良いのか分からない【癒しの雫】の全メンバー。
取り敢えずリリアにはリアントを与えて置けば問題ないだろうと判断したアルフレドのファインプレーにより、この危機的状況化ではあるのだが、リアントが主の指示によってリリアに近づくと、思惑通りにリリアはリアントに夢中になった。
このままリリアが暴走すると、一人でも勝手に魔獣に向かいかねなかったリリアを止めてくれた事を理解したゴルダ。
「申し訳ありません、アルフレド殿」
疲れた表情でこれだけ口にすると、諦めたかのようにリリアの背後に移動して護衛としての立ち位置を堅持し始めた。
「アルフレドさん、ナイス判断です!」
「いえいえ、マスター。流石にここまでくれば、リリアさんの扱いは慣れてきましたよ。リアントも慣れてきていますし、変にウロウロされるよりも、この場で留まって頂いた方が良いですからね」
未だ自分達の出番ではないのだろうと判断しているので、呑気な会話がなされている。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
NineRing~捕らわれし者たち~
吉備津 慶
ファンタジー
岡山県の南、海の側に住んでいる高校二年生の響が、夜遅く家を飛び出し一人浜辺を歩いていると『我をおさめよ、されば導かれん』の声がする。
その声の先には一つのリングが輝いていた。リングを指にはめてみると、目の前にスタイル抜群のサキュバスが現れる。
そのサキュバスが言うには、秘宝を解放するために九つのリングを集め、魔王様と魔族の世界を造るとの事。
そのために、お前を魔族の仲間に引き入れ、秘宝を手に入れる手助けをさせると、連れ去られそうになった時、サキュバスに雷が落ちて難を逃れ、サキュバスが彼の下僕となる。しかしサキュバスの魔封じのクリスタルで、何の力も持たない響は連れ去られてしまう。
しかし、おっちょこちょいなサキュバスのおかげで、現代から未来世界に渡り。未来世界の力を得た響が、その後異世界に渡り、リングを探す事になる。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる