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 心配そうな表情の住民に対して、安心してもらおうと努めて普段通りの対応を心掛けるシア。

「はいっ!ギルド本部からの依頼ですから。でも、【勇者の館】が先行して対処するので、何もなければ向かうだけで終わりますね」

「……そうかい。あんた達にお鉢が回ってこなければ良いがね。何もできない私が言える事じゃないが、無事に帰ってきておくれよ!」

 心配そうにシアを始めとした【癒しの雫】のメンバーを見つめて来る女性。

そしてこの話を聞いていた周囲の人々も同じ気持ちの様で、口々にシア達の安全を願うような事を口にしてくれている。

「クオウ様、本当に嬉しいですね」

 周囲の人々に愛されていると感じる事が出来て、フレナブルは思わず口にしたその一言。

 同じ魔族であるアルフレド、そしてハーフのペトロも思いは同じようで、嬉しそうにその女性達に向けて微笑んでいる。

 随分と三人共意識が変わったな…と思いつつ、フレナブルの言葉を首肯するクオウ。

「皆さんの安心は、絶対に私達【癒しの雫】が守ります。安心していてください!」

 そこにシアが自信満々に宣言するので、周囲の人々は幼いシアの決意を感じ取り、冷静になる事が出来ていた。

「お~、流石はマスターじゃねーか。なぁ?クオウの旦那!」

「頼もしくなりましたね」

 今回はギルド総出で門に向かっているので、直接戦闘する機会がない鍛冶三人組も同行している。

 鍛冶士三人組が持っている収納袋には、彼らが日々作成している武具の試作品が山のように収納されており、彼らとしてはどうせ【勇者の館】は手も足も出ずに敗れると思っているので、良い実験が出来ると意気込んでいる。

 その意図を正確に理解している他の【癒しの雫】のメンバーは、どれ程の武具が出来ているのかを楽しみにしている程だ。

 テクテクと門に向かっているのだが、既に戦闘が始まっているようで、振動・轟音が聞こえて来る。

「凄い音ですね。【勇者の館】もこれ程の攻撃が出来たのですね!」

「シア様。この音と振動は【変質者の館】ではなく、恐らく魔獣、スピナの攻撃の音だと思いますよ」

 【勇者の館】が気に入らないのは皆同じ気持ちだが、敬愛しているクオウの古巣であり、その当時にクオウに対して行っていた行動を知っているので、フレナブルはその思いが突出している。

 そうこうしている内に、門に到着して外にでる。

 その視線の先には、巨大な蛇型魔獣のスピナ二体が激しく暴れまわっていた。

「クオウの旦那、予想通り特殊個体みて~だな」

 動きの速さを見てミハイルが魔獣の状態をすかさず把握するが、鑑定士であるバーミルがその見解を否定した。

「いや、あれは確かに通常個体に見えないが、支援魔術で強化されているだけだ」

「え?バーミルさん、あれだけの巨体に懸けられる支援魔術ですか?」

「カスミさんが驚くのも無理はないが、俺の鑑定によればそうなっているから、間違いないだろうね。でも、あの程度・・の魔獣、今の俺達なら何も問題ないでしょ?」

「うっ。そう言えばそうですね。なんだか自分の常識がおかしくなっているので、混乱しちゃいました」

 テヘヘとばかりに頭を掻いているカスミだが、誰一人としてあの程度・・と言うバーミルの言葉を否定はしなかった。

「お待ちください!!」

 そこに、王都方面から突然聞こえて来た声に反応して全員が門を見ると、そこには冒険者風の装備と共に現れたリリアがおり、その後ろを追うように騎士隊長であるゴルダがいたのだ。

 誰がどう見ても必死で止めるゴルダを完全に無視してこの場に来たであろうリリアは、さわやかな笑顔でこう言い放った。

「皆さん、国家の危機で緊急依頼が出たのは知っています。【癒しの雫】のサポーターである私としては、指を咥えて防壁内部でボサッとしている訳にはいかず馳せ参じました!!」

 その後ろでは、ゴルダが全てを諦めたかのように落ち込んでいる表情になっており、どう反応して良いのか分からない【癒しの雫】の全メンバー。

 取り敢えずリリアにはリアントを与えて置けば問題ないだろうと判断したアルフレドのファインプレーにより、この危機的状況化ではあるのだが、リアントがアルフレドの指示によってリリアに近づくと、思惑通りにリリアはリアントに夢中になった。

 このままリリアが暴走すると、一人でも勝手に魔獣に向かいかねなかったリリアを止めてくれた事を理解したゴルダ。

「申し訳ありません、アルフレド殿」

 疲れた表情でこれだけ口にすると、諦めたかのようにリリアの背後に移動して護衛としての立ち位置を堅持し始めた。

「アルフレドさん、ナイス判断です!」

「いえいえ、マスター。流石にここまでくれば、リリアさんの扱いは慣れてきましたよ。リアントも慣れてきていますし、変にウロウロされるよりも、この場で留まって頂いた方が良いですからね」

 未だ自分達の出番ではないのだろうと判断しているので、呑気な会話がなされている。
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