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魔王ゴクドの怒り
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「お前らはバカか?何故ギルド一つまともに潰せない?」
「「申し訳ありません」」
余り睡眠を必要としない高位の魔族である為に、日も登らない時間帯の魔王城……
遜っている二人の魔族、ジスドネアとレゼニアに対して静かに怒っているのは、新魔王のゴクドだ。
やる事なす事上手くいかず、今回の【勇者の館】を潰すように指示を出したはずが、何故か建屋だけが潰れるだけで既に復旧しており、更には敵と認識している元四星フレナブルが所属しているギルドの冒険者達がAランクに昇格したと、ジャロリア王国がお祭り騒ぎになっている。
本来は【勇者の館】が壊滅的な被害を受けて国家戦力が激減し、魔王国への脅威も無くなっているはずだったのだが、全てが上手く行っていない。
「ここまで上手く行かないのであれば、一度手を引く事もありだな」
命令系統が上手く行っていない事が問題であるとはわからないのだが、無駄に攻勢をかけても消耗するだけと頭を切り替えるゴクドに乗るように、ジスドネアが提言する。
「であればゴクド様、我らの敵はジャロリア王国だけではございません。むしろ【勇者の館】とか言うふざけたギルドではなく、アルゾナ王国の【鋭利な盾】とか言うギルドの方が聊か問題かと」
少し前に、シアやクオウ達【癒しの雫】が揃って訪問していたジャロリア王国の友好国であるアルゾナ王国で、唯一Sランク認定されているギルド【鋭利な盾】。
ルーカス率いる【勇者の館】とは事なり、ゴクドが魔王に就任した後、魔獣を活性化させている状態の中で積極的に魔王国にまで攻め込み始めている実力者の集団だ。
【勇者の館】に戦力を割くのではなく、この際気分転換も含めて【鋭利な盾】を攻める事もアリなのではと思ったジスドネアは思い切ってその旨を伝えたのだが、殊の外良い反応を得る事が出来た。
「確か、この魔王国の外れとは言えかなりの頻度で攻め込んで来る鬱陶しい連中だったな。良いだろう。で、誰を使う?」
「実は、四星の空き、フレナブルが離脱した席も含めて、四星の座を狙っている者が多数おりまして、その者達の実力を確認する良い機会になると思っております」
魔王ゴクド体制になってから、四星一席はジスドネア、二席にレゼニア、三席と四席は不在となっており、魔王国の中でも別格の強さと認識されている四星の空席を狙っている魔族は星の数ほど存在している。
種族のせいか強さに対する想いは凄まじい物があり、更には権力もついてくるとなれば、その席を目指さない魔族はいないだろう。
希望者全員の適正を見るわけにはいかない為、ある程度ジスドネアの方で篩にかけており、数人が最終選考に残っていた。
空いている席は二つに対して、最終選考に残っているのは三人。
何れも実力は拮抗しており甲乙つけがたい存在であり、どのように決定するかを悩んでいた所、丁度【鋭利な盾】が攻勢をかけていると報告が上がってきた。
「良いだろう。レゼニア、その間お前はジャロリア王国に適度に攻撃を仕掛けておけ。そっちを完全に放置するわけにはいかないからな。手薄になっている間に防御態勢を整えられても困る。良いな!」
魔王ゴクドから直接レゼニアに指示が飛び、ジスドネアが作戦実行中にジャロリア王国に攻勢をかける事が決定した。
「レゼニア、お前はどうやってジャロリア王国に攻めるのだ?」
「僕は、眷属を使ってジャロリア王国を牽制します」
レゼニアのやる事には一抹の不安はあるのだが、取り敢えずはもう少し具体的な話を聞く事にしたゴクド。
「以前【勇者の館】一行の意識を刈り取る事が出来た僕の支援魔術込みのスピナと、他のAランクの魔獣を眷属と共に探し出して嗾けます」
あくまでレゼニアの眷属が直接攻撃をするわけではなく、眷属を使って魔獣を探し出し、その魔獣をジャロリア国王に差し向ける事を説明するレゼニア。
ここまで具体的に話を聞けば、齟齬はないだろうと判断するゴクド。
「わかった。準備があるだろうから、もう行って良いぞ」
「失礼します」
この場に残ったジスドネアと魔王ゴクド。
「で、四星候補は直ぐにでも向かわせるのか?」
「はい。【鋭利な盾】とか言うふざけた名前のSランクギルドの奴らは、ここの所数日と空けずにこちらに向かってきておりますので、少々鬱陶しいと思っていた所です」
「ならば、その戦果を持って空席を埋めると言う事だな。わかった。直ぐにでも向かわせろ。【勇者の館】と同じSランクギルド、いや、最新の情報によれば既にルーカスの所はAランクだったか?だが、人族として別格と言われているSランクギルドである【鋭利な盾】を潰せれば、異国のギルドとは言え【勇者の館】共も震え上がるだろうな。新たな魔王国の力の台頭に」
「では早速指示を出してまいります」
失態による叱責を覚悟していたジスドネアは、思った以上に今回の話に乗り気になって機嫌が良くなったゴクドの態度に安堵しつつ、指示を出すために部屋を出る。
「ゴクド様の許可は取れた。貴様らの最後の試練は、【鋭利な盾】とか言うふざけた名前のギルドの連中の対応だ。その成果に応じて四星の空席となっている二つの席を貴様らの内の二名に与えよう」
「「申し訳ありません」」
余り睡眠を必要としない高位の魔族である為に、日も登らない時間帯の魔王城……
遜っている二人の魔族、ジスドネアとレゼニアに対して静かに怒っているのは、新魔王のゴクドだ。
やる事なす事上手くいかず、今回の【勇者の館】を潰すように指示を出したはずが、何故か建屋だけが潰れるだけで既に復旧しており、更には敵と認識している元四星フレナブルが所属しているギルドの冒険者達がAランクに昇格したと、ジャロリア王国がお祭り騒ぎになっている。
本来は【勇者の館】が壊滅的な被害を受けて国家戦力が激減し、魔王国への脅威も無くなっているはずだったのだが、全てが上手く行っていない。
「ここまで上手く行かないのであれば、一度手を引く事もありだな」
命令系統が上手く行っていない事が問題であるとはわからないのだが、無駄に攻勢をかけても消耗するだけと頭を切り替えるゴクドに乗るように、ジスドネアが提言する。
「であればゴクド様、我らの敵はジャロリア王国だけではございません。むしろ【勇者の館】とか言うふざけたギルドではなく、アルゾナ王国の【鋭利な盾】とか言うギルドの方が聊か問題かと」
少し前に、シアやクオウ達【癒しの雫】が揃って訪問していたジャロリア王国の友好国であるアルゾナ王国で、唯一Sランク認定されているギルド【鋭利な盾】。
ルーカス率いる【勇者の館】とは事なり、ゴクドが魔王に就任した後、魔獣を活性化させている状態の中で積極的に魔王国にまで攻め込み始めている実力者の集団だ。
【勇者の館】に戦力を割くのではなく、この際気分転換も含めて【鋭利な盾】を攻める事もアリなのではと思ったジスドネアは思い切ってその旨を伝えたのだが、殊の外良い反応を得る事が出来た。
「確か、この魔王国の外れとは言えかなりの頻度で攻め込んで来る鬱陶しい連中だったな。良いだろう。で、誰を使う?」
「実は、四星の空き、フレナブルが離脱した席も含めて、四星の座を狙っている者が多数おりまして、その者達の実力を確認する良い機会になると思っております」
魔王ゴクド体制になってから、四星一席はジスドネア、二席にレゼニア、三席と四席は不在となっており、魔王国の中でも別格の強さと認識されている四星の空席を狙っている魔族は星の数ほど存在している。
種族のせいか強さに対する想いは凄まじい物があり、更には権力もついてくるとなれば、その席を目指さない魔族はいないだろう。
希望者全員の適正を見るわけにはいかない為、ある程度ジスドネアの方で篩にかけており、数人が最終選考に残っていた。
空いている席は二つに対して、最終選考に残っているのは三人。
何れも実力は拮抗しており甲乙つけがたい存在であり、どのように決定するかを悩んでいた所、丁度【鋭利な盾】が攻勢をかけていると報告が上がってきた。
「良いだろう。レゼニア、その間お前はジャロリア王国に適度に攻撃を仕掛けておけ。そっちを完全に放置するわけにはいかないからな。手薄になっている間に防御態勢を整えられても困る。良いな!」
魔王ゴクドから直接レゼニアに指示が飛び、ジスドネアが作戦実行中にジャロリア王国に攻勢をかける事が決定した。
「レゼニア、お前はどうやってジャロリア王国に攻めるのだ?」
「僕は、眷属を使ってジャロリア王国を牽制します」
レゼニアのやる事には一抹の不安はあるのだが、取り敢えずはもう少し具体的な話を聞く事にしたゴクド。
「以前【勇者の館】一行の意識を刈り取る事が出来た僕の支援魔術込みのスピナと、他のAランクの魔獣を眷属と共に探し出して嗾けます」
あくまでレゼニアの眷属が直接攻撃をするわけではなく、眷属を使って魔獣を探し出し、その魔獣をジャロリア国王に差し向ける事を説明するレゼニア。
ここまで具体的に話を聞けば、齟齬はないだろうと判断するゴクド。
「わかった。準備があるだろうから、もう行って良いぞ」
「失礼します」
この場に残ったジスドネアと魔王ゴクド。
「で、四星候補は直ぐにでも向かわせるのか?」
「はい。【鋭利な盾】とか言うふざけた名前のSランクギルドの奴らは、ここの所数日と空けずにこちらに向かってきておりますので、少々鬱陶しいと思っていた所です」
「ならば、その戦果を持って空席を埋めると言う事だな。わかった。直ぐにでも向かわせろ。【勇者の館】と同じSランクギルド、いや、最新の情報によれば既にルーカスの所はAランクだったか?だが、人族として別格と言われているSランクギルドである【鋭利な盾】を潰せれば、異国のギルドとは言え【勇者の館】共も震え上がるだろうな。新たな魔王国の力の台頭に」
「では早速指示を出してまいります」
失態による叱責を覚悟していたジスドネアは、思った以上に今回の話に乗り気になって機嫌が良くなったゴクドの態度に安堵しつつ、指示を出すために部屋を出る。
「ゴクド様の許可は取れた。貴様らの最後の試練は、【鋭利な盾】とか言うふざけた名前のギルドの連中の対応だ。その成果に応じて四星の空席となっている二つの席を貴様らの内の二名に与えよう」
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