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魔獣襲来の現実と【勇者の館】(2)
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……ドン……
予想通りスピナはルーカスの着地位置に尻尾を叩きつけていたのだが、そこにルーカスはいない。
既に離脱していたのだ。
「あいつ…俺の打撃の痕がねーぞ」
「俺のもだ」
大剣使いとハンマー使いが、どこにもダメージが残っていないスピナの姿を見る。
「どうやら一筋縄ではいかない個体だな。流石は特殊個体。こいつを仕留めれば、俺達は間違いなくSランクだ!」
自らの斬撃も薄皮一枚剥いだ程度で既に回復しているようなのだが、未だ気力は衰えていないルーカス。
その姿を見た他の高ランカーも、Sランク返り咲きを目標に奮い立つ。
ポーションを飲んで強引に魔力を回復させた魔術士と共に攻撃を再開する【勇者の館】だが、結果は見えている。
あれ程の苛烈な攻撃を無防備で受けていたのに、ダメージはあっという間に回復されているのだ。
スピナとしては既に目の前に敵がいると分かれば防御姿勢をとるし、反撃もする。
となると、【勇者の館】の攻撃は初撃のようにクリーンヒットとなる訳もなく、自らが防御姿勢をとらざるを得ない場面が増えてくる。
そもそもの体力が大きく異なっている【勇者の館】とスピナ。
一人、また一人と冒険者は吹き飛ばされて動けなくなるにつれ、加速度的に不利になる【勇者の館】。
その様子をさらに遠方の防壁上部から見ていた騎士は、即座に閉門して防御性能を上げると共に、国王に状況の説明がなされる。
「やはり【勇者の館】ではもう魔王には立ち向かえないのは明らかだ。【癒しの雫】はまだ戻らんか?」
「はい。残念ながら、未だアルゾナ王国を出たとの報告は受けておりません」
「ならば……既に閉門しておるな?長期籠城の態勢をとり、即座に【癒しの雫】を呼び戻せ!」
この時点で、ルーカスを柱とした【勇者の館】は国王からの信頼を完全に失った。
この指示を受け、既に負けが確定している【勇者の館】の闘いを監視する事を止め、ひたすら防衛の準備に奔走する騎士や依頼を受けた各ギルドの冒険者達。
ただならぬ雰囲気に、町の住民達も不安を隠せない。
既に国王の予想通りルーカスを含めた【勇者の館】は惨敗し、あちこちに吹き飛ばされて動けずにいる。
辛うじて誰も死んでいないのは、金に物を言わせて武具をそろえており、防御性能も優れた物だったからだろうか。
しかしスピナの攻撃は非常に重く、そしてレゼニアの付与によって驚異的な速さも手に入れている。
その打撃を受けているので、既に誰一人として意識はない。
ピクリとも動かない【勇者の館】を確認すると、再び防壁、王都方面に向かって主の仇を取るために進撃しようとしたスピナ二体だが、目の前に小さな兎が見えた。
第三者的に見ても巨大な蛇型魔獣のスピナと、本当に兎に見える小さな物体であり、スピナ取っては一切気にならない存在に見える。
当然スピナも無視して動こうとするのだが、何故か体が動かない。
その原因が、目の前の小さな兎である事を理解するのにはそう時間はかからなかった。
目の前のウサギは徐に近くの石を可愛らしい動作で拾うと、ヒョイっと一体のスピナに投げつけた。
その石は何か強化されているのだろうか、ルーカスの斬撃、巨大なハンマーや剣でもダメージを与える事の出来なかったスピナの頭を容易に貫通した。
極限までの力による攻撃のせいか、音もなく貫通して石は遥か彼方に消えて行く。
……ズズン……
一体のスピナが力なく倒れる。
大きな音と振動だが、王城側では戦闘が続いていると認識しているので、更に防御態勢への準備に力が入り、状況を確認する余裕はなくなっている。
この惨劇を目の前で見ている残りのスピナ。
共に魔獣と言う存在だからか、目の前の小さな兎が決して敵対してはいけない存在であると理解したのだが、時すでに遅い。
全速力で逃げようとしたところで意識が途絶えた。
この見た目小さく可愛いウサギが、レゼニアによって強化されてランクがS-相当まで引き上げられている二体のスピナを、一部強化はしたが、ただの投石だけで瞬殺して見せたのだ。
その兎は目の前の脅威が去ったにも拘らず興味がなさそうで、何かを探すようにしきりに鼻をヒクヒクさせている。
そしていつの間にかこの場から消えていた。
予想通りスピナはルーカスの着地位置に尻尾を叩きつけていたのだが、そこにルーカスはいない。
既に離脱していたのだ。
「あいつ…俺の打撃の痕がねーぞ」
「俺のもだ」
大剣使いとハンマー使いが、どこにもダメージが残っていないスピナの姿を見る。
「どうやら一筋縄ではいかない個体だな。流石は特殊個体。こいつを仕留めれば、俺達は間違いなくSランクだ!」
自らの斬撃も薄皮一枚剥いだ程度で既に回復しているようなのだが、未だ気力は衰えていないルーカス。
その姿を見た他の高ランカーも、Sランク返り咲きを目標に奮い立つ。
ポーションを飲んで強引に魔力を回復させた魔術士と共に攻撃を再開する【勇者の館】だが、結果は見えている。
あれ程の苛烈な攻撃を無防備で受けていたのに、ダメージはあっという間に回復されているのだ。
スピナとしては既に目の前に敵がいると分かれば防御姿勢をとるし、反撃もする。
となると、【勇者の館】の攻撃は初撃のようにクリーンヒットとなる訳もなく、自らが防御姿勢をとらざるを得ない場面が増えてくる。
そもそもの体力が大きく異なっている【勇者の館】とスピナ。
一人、また一人と冒険者は吹き飛ばされて動けなくなるにつれ、加速度的に不利になる【勇者の館】。
その様子をさらに遠方の防壁上部から見ていた騎士は、即座に閉門して防御性能を上げると共に、国王に状況の説明がなされる。
「やはり【勇者の館】ではもう魔王には立ち向かえないのは明らかだ。【癒しの雫】はまだ戻らんか?」
「はい。残念ながら、未だアルゾナ王国を出たとの報告は受けておりません」
「ならば……既に閉門しておるな?長期籠城の態勢をとり、即座に【癒しの雫】を呼び戻せ!」
この時点で、ルーカスを柱とした【勇者の館】は国王からの信頼を完全に失った。
この指示を受け、既に負けが確定している【勇者の館】の闘いを監視する事を止め、ひたすら防衛の準備に奔走する騎士や依頼を受けた各ギルドの冒険者達。
ただならぬ雰囲気に、町の住民達も不安を隠せない。
既に国王の予想通りルーカスを含めた【勇者の館】は惨敗し、あちこちに吹き飛ばされて動けずにいる。
辛うじて誰も死んでいないのは、金に物を言わせて武具をそろえており、防御性能も優れた物だったからだろうか。
しかしスピナの攻撃は非常に重く、そしてレゼニアの付与によって驚異的な速さも手に入れている。
その打撃を受けているので、既に誰一人として意識はない。
ピクリとも動かない【勇者の館】を確認すると、再び防壁、王都方面に向かって主の仇を取るために進撃しようとしたスピナ二体だが、目の前に小さな兎が見えた。
第三者的に見ても巨大な蛇型魔獣のスピナと、本当に兎に見える小さな物体であり、スピナ取っては一切気にならない存在に見える。
当然スピナも無視して動こうとするのだが、何故か体が動かない。
その原因が、目の前の小さな兎である事を理解するのにはそう時間はかからなかった。
目の前のウサギは徐に近くの石を可愛らしい動作で拾うと、ヒョイっと一体のスピナに投げつけた。
その石は何か強化されているのだろうか、ルーカスの斬撃、巨大なハンマーや剣でもダメージを与える事の出来なかったスピナの頭を容易に貫通した。
極限までの力による攻撃のせいか、音もなく貫通して石は遥か彼方に消えて行く。
……ズズン……
一体のスピナが力なく倒れる。
大きな音と振動だが、王城側では戦闘が続いていると認識しているので、更に防御態勢への準備に力が入り、状況を確認する余裕はなくなっている。
この惨劇を目の前で見ている残りのスピナ。
共に魔獣と言う存在だからか、目の前の小さな兎が決して敵対してはいけない存在であると理解したのだが、時すでに遅い。
全速力で逃げようとしたところで意識が途絶えた。
この見た目小さく可愛いウサギが、レゼニアによって強化されてランクがS-相当まで引き上げられている二体のスピナを、一部強化はしたが、ただの投石だけで瞬殺して見せたのだ。
その兎は目の前の脅威が去ったにも拘らず興味がなさそうで、何かを探すようにしきりに鼻をヒクヒクさせている。
そしていつの間にかこの場から消えていた。
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