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新魔王ゴクドの攻撃(2)

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 四星筆頭の立場になっているジスドネアは、上手く指示が伝わらないレゼニアへの命令は神経を使って明確に伝えたつもりだった。

 レゼニアの力で、ルーカスも纏めて始末しろと言う意味で伝えたのだが、これもまたレゼニアにとっては言葉足らずなのだ。

 “【勇者の館】を潰しましょう”と言うジスドネアのセリフを完全に言葉通りに受け取ったレゼニアは、どの様に王都中心部にある【勇者の館】そのもの、ギルドの建屋を破壊するかを考えていた。

「う~ん、僕でもフレナブルさんは荷が重い……。【癒しの雫】が不在時に一気に……」

 元同僚であるフレナブルが限界まで手を抜いた状態の力しか知らないのだが、それでも荷が重いと言っているレゼニア。

 その存在が近くにいると自分の身に危険があると判断し、【癒しの雫】が不在時を狙って【勇者の館】を急襲する事にした。

 レゼニアはその【癒しの雫】にフレナブル以上の存在がいる事は分からないが、慎重な性格が功を奏した事になる。

「でも眷属は危険に晒したくないし……とりあえず、あっちにお願いしよう」

 レゼニアの言うあっちとは、ルーカスが手配していた元【闇夜の月】ペトロシアのような存在、魔王国内部を拠点にしている裏に生きる存在達だ。

 その後、レゼニアは配下を使って慎重に【癒しの雫】の挙動を監視した。

 いつメンバーが不在になるかを確認していたのだ。

 幸か不幸か、大々的に昇格の告知が行われていた【癒しの雫】の情報は労せず入手する事が出来、数日後に国王の依頼でアルゾナ王国に向かう事が確認された。

「良いタイミング!」

 まるで全てがこのために準備されたのかと言わんばかりのタイミングで【癒しの雫】が不在になる事が分かり、迷う事なく裏の者に依頼を出すレゼニア。

 フレナブルが恐ろしいレゼニアは、いくら不在とわかっていても自分が直接ジャロリア王国に出向く気はなかった。

 クオウ以下【癒しの雫】が国王からの依頼と言う形で隣国アルゾナ王国に向かって二日後、眷属を使って既にジャロリア王国に侵入している裏の者に連絡を入れる。

「昨日【癒しの雫】はアルゾナ王国に入ったとの情報があるので、早速今日にでもしかかって」

 こうして、明確な指示がジスドネアより出されず、中途半端な伝言ゲームによって【勇者の館】そのものが破壊されるべく、作戦が開始される。

 その間……【癒しの雫】のギルドは王城から派遣された騎士によって見回りがなされており、【癒しの雫】のメンバーはアルゾナ王国を堪能していた。

 いつの間にか建屋の破壊命令が出されていた【勇者の館】。

 王城にほど近い王都中央付近に、広大な敷地を有して存在感を示しているAランクギルド【勇者の館】。

 そこに、人族に扮した魔族が入り口から堂々と侵入している。

「結構広いな。全壊じゃなくとも良いんだろ?」

「破壊としか言われてねーからな。これだけの大きさ、全壊は少々骨が折れる。半壊もしてりゃ十分だろ?」

 ここでも伝言ゲームによる弊害により、最終目的が食い違って伝わっていた。

 この二人、レゼニアから【勇者の館】を破壊すると言う依頼を受けた二人で、ギルドの建屋を破壊する依頼であると認識している。

 ある程度構造を把握したうえで、重要な支柱を破壊する必要があるので態々ギルド内部にまで入ってその目で確認している。

 一応プロとして、仕事はきっちりするタイプの魔族らしい。

 そんな二人を見て、新たな冒険者登録希望者と思った受付は声を掛ける。

「ようこそ、ジャロリア王国最強のギルド【勇者の館】へ。当ギルド所属冒険者からの紹介ですか?それとも貴族の方からの紹介ですか?」

 当然どちらでもない二人の魔族は、互いに顔を見合わせた後にこう告げる。

「いや、【勇者の館】にはどんな依頼があるのかを参考までに確認しに来ただけで、特に登録をしに来たわけじゃない」

「だが、最強の冒険者であるSランク冒険者のルーカスには興味はあるな」

 受付だけではなく、この場にいる【勇者の館】の冒険者達も怪訝そうな表情になる。

 今まで【勇者の館】は全冒険者達の憧れ、目標であるのだが、目の前の二人にはそのような素振りが一切なかったのだ。

「おい、お前ら何様だ?俺達【勇者の館】は最強ギルド。ルーカス様は個人でSランクをお持ちのギルドマスター。お前ら程度が軽々しく口にできる名前じゃねーんだよ!ふざけてんのか?」

 当然こうなる。

「あぁ、そうか。それは済まないな」

 あまり厄介になると下見が出来ないと思った二人は、素直に謝罪して絡んできた冒険者を躱すと、クエストボードに向かう。

「あの受付の裏の支柱だな。その横の一本もダメージを与えられれば尚良い」

「そうだろうな。ちょっと距離がある。どうする?」
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