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【勇者の館】ルーカス(1)
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「何だ、あいつら、Sランクのジュラだと!ふざけやがって。おい!ルーニー!!ルーニーはいるか!」
「はっ、はい!」
自分の部屋の扉を開け、部下を大声で呼びつけるルーカス。
「あのフレナブルがどこまで離れた場所に行ったか知らねーが、明日の仕事、Sランクが出るかもしれねーから、そのつもりで準備しろ。朝までには万全に整えておけ!わかったな!!」
正直今から準備するのはかなり無理があるのだが、ルーカスの命令は絶対。
断るわけには行かずに、慌てて準備のためにルーカスの部屋から離れて行くルーニーを忌々しそうに見送り部屋に戻ると、いつの間にか椅子に【闇夜の月】、いや、【闇夜の月】だったペトロシア改めペトロが座っていた。
クオウに【闇夜の月】が襲ってくるかもしれないと脅されていたルーカスは厳しい視線をペトロに向けるのだが、攻撃の気配がない事、そしてSランクの自分が負けるわけがないとのプライドから、余裕がある様に取り繕って用件を聞く。
但し、同じように座ると反応が遅れるので立ったままだが。
「何をしにきた?噂によれば、俺の依頼を失敗したと聞こえてきたが、まさか【闇夜の月】ともあろうものが、失敗はないよな?」
「……それは事実。今回はケジメとして詫びに来た。初めての失敗。もう足を洗う。依頼金は、詫びを兼ねて上乗せで返金する」
相変わらず姿も声も良く分からない状態の目の前の存在から、信じられない言葉が出てきたのだ。
「おいおい、本当にしくじったのかよ?今までどんな依頼でも確実に成し遂げて来た【闇夜の月】が?」
「そう。もう連絡手段も全て破棄した。これ以上話す事は無い」
それだけ言うと、霞のようにその存在が消えていくのだ。
「まて!おい!待ちやがれ!!」
ルーカスは一人部屋で騒いでいるが、もう部屋の中には誰もいない。
その机の上には、依頼金として支払った虹金貨5枚(5億円)の二倍である虹金貨10枚(10億円)が置かれていた。
暫く荒れたルーカスだが、クオウの言っていた闇討ちはなさそうな事、そして明日以降の依頼に必要な経費が思った以上に手に入った事から、冷静に事を進めようとした。
このような事は有ったが、翌日から再び二つのギルドは異なる街道の調査を行うのだが、Sランクの魔獣が発見される事は無かった。
易々と発見されては、一体で町処ではなく国が容易に壊滅的な被害に遭うレベルの存在なので困ってしまうのだが、ルーカスにとってみれば逆転の一手を打てずに悔しさ以外は何もなかった一週間となったのだ。
そんな【勇者の館】を一切気にする様子もなく、淡々と作業を進めていた【癒しの雫】の一行。
三日目からは新たなBランク冒険者であるペトロも加わり、順調に街道の安全を確保していった。
依頼に出向いている人数が大きく違う二つのギルドであるために数量は圧倒的に【勇者の館】が多いのだが、その素材の状態、そして何よりSランクのジュラを仕留めた実績がある【癒しの雫】の評判は急上昇していた。
本来、実力は十分と判断されていたBランカーのペトロを二日目から投入する事も可能だったのだが、Sランクのルーカスによって鑑定されて、魔族と人族のハーフと明らかにされてしまうと後々面倒だと判断したクオウによって止められていた。
その対策に一日必要となったので、三日目以降の投入となったのだ。
その対策とは、Sランク魔獣ジュラの素材を使って作成した鑑定妨害の魔道具。
これさえあれば、Sランクと言われているルーカスであったとしても完全に誤魔化せる代物であり、鍛冶三人組が必死で作業して作り上げた一品であり逸品だ。
こうして三日目から冒険者が一人多く現場に出た【癒しの雫】だが、討伐実績はあまり大きく変動しなかった。
なぜならば、ペトロには【癒しの雫】として慣れてもらう事を第一目的としており、シルバとカスミと共に行動し、特に危険な魔獣がいないかの調査を行う立ち位置で動いていたからだ。
「お疲れ様でした!十分な成果も出て、一層ギルド【癒しの雫】が認められたと思います。更に!新たな仲間も加わって、より活動に幅が出ました。ウフフ、これからの【癒しの雫】に、今回の依頼の達成に、新たな仲間に、乾杯!!」
「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」
一週間の依頼をこなし、既にキッチリとした書類も提出済みで報酬も受け取っている【癒しの雫】。
ギルドの運営として貯蓄にも回しているが、当然冒険者にも報酬を配り、事務職、鍛冶三人組にも配分されている。
いつも通りに盛り上がっている【癒しの雫】。
「クオウの旦那、明日王城に呼ばれているって話、どうするんだ?」
「どうするも何も、行くしかないでしょう?」
ミハイルが言っているのは、ギルド本部に納品した際に担当受付のラスカから言われた一言を【癒しの雫】全員に共有したからだ。
その内容は、一週間の成果に対して何故か王城に向かうように指示された、と言う話だ。
「はっ、はい!」
自分の部屋の扉を開け、部下を大声で呼びつけるルーカス。
「あのフレナブルがどこまで離れた場所に行ったか知らねーが、明日の仕事、Sランクが出るかもしれねーから、そのつもりで準備しろ。朝までには万全に整えておけ!わかったな!!」
正直今から準備するのはかなり無理があるのだが、ルーカスの命令は絶対。
断るわけには行かずに、慌てて準備のためにルーカスの部屋から離れて行くルーニーを忌々しそうに見送り部屋に戻ると、いつの間にか椅子に【闇夜の月】、いや、【闇夜の月】だったペトロシア改めペトロが座っていた。
クオウに【闇夜の月】が襲ってくるかもしれないと脅されていたルーカスは厳しい視線をペトロに向けるのだが、攻撃の気配がない事、そしてSランクの自分が負けるわけがないとのプライドから、余裕がある様に取り繕って用件を聞く。
但し、同じように座ると反応が遅れるので立ったままだが。
「何をしにきた?噂によれば、俺の依頼を失敗したと聞こえてきたが、まさか【闇夜の月】ともあろうものが、失敗はないよな?」
「……それは事実。今回はケジメとして詫びに来た。初めての失敗。もう足を洗う。依頼金は、詫びを兼ねて上乗せで返金する」
相変わらず姿も声も良く分からない状態の目の前の存在から、信じられない言葉が出てきたのだ。
「おいおい、本当にしくじったのかよ?今までどんな依頼でも確実に成し遂げて来た【闇夜の月】が?」
「そう。もう連絡手段も全て破棄した。これ以上話す事は無い」
それだけ言うと、霞のようにその存在が消えていくのだ。
「まて!おい!待ちやがれ!!」
ルーカスは一人部屋で騒いでいるが、もう部屋の中には誰もいない。
その机の上には、依頼金として支払った虹金貨5枚(5億円)の二倍である虹金貨10枚(10億円)が置かれていた。
暫く荒れたルーカスだが、クオウの言っていた闇討ちはなさそうな事、そして明日以降の依頼に必要な経費が思った以上に手に入った事から、冷静に事を進めようとした。
このような事は有ったが、翌日から再び二つのギルドは異なる街道の調査を行うのだが、Sランクの魔獣が発見される事は無かった。
易々と発見されては、一体で町処ではなく国が容易に壊滅的な被害に遭うレベルの存在なので困ってしまうのだが、ルーカスにとってみれば逆転の一手を打てずに悔しさ以外は何もなかった一週間となったのだ。
そんな【勇者の館】を一切気にする様子もなく、淡々と作業を進めていた【癒しの雫】の一行。
三日目からは新たなBランク冒険者であるペトロも加わり、順調に街道の安全を確保していった。
依頼に出向いている人数が大きく違う二つのギルドであるために数量は圧倒的に【勇者の館】が多いのだが、その素材の状態、そして何よりSランクのジュラを仕留めた実績がある【癒しの雫】の評判は急上昇していた。
本来、実力は十分と判断されていたBランカーのペトロを二日目から投入する事も可能だったのだが、Sランクのルーカスによって鑑定されて、魔族と人族のハーフと明らかにされてしまうと後々面倒だと判断したクオウによって止められていた。
その対策に一日必要となったので、三日目以降の投入となったのだ。
その対策とは、Sランク魔獣ジュラの素材を使って作成した鑑定妨害の魔道具。
これさえあれば、Sランクと言われているルーカスであったとしても完全に誤魔化せる代物であり、鍛冶三人組が必死で作業して作り上げた一品であり逸品だ。
こうして三日目から冒険者が一人多く現場に出た【癒しの雫】だが、討伐実績はあまり大きく変動しなかった。
なぜならば、ペトロには【癒しの雫】として慣れてもらう事を第一目的としており、シルバとカスミと共に行動し、特に危険な魔獣がいないかの調査を行う立ち位置で動いていたからだ。
「お疲れ様でした!十分な成果も出て、一層ギルド【癒しの雫】が認められたと思います。更に!新たな仲間も加わって、より活動に幅が出ました。ウフフ、これからの【癒しの雫】に、今回の依頼の達成に、新たな仲間に、乾杯!!」
「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」
一週間の依頼をこなし、既にキッチリとした書類も提出済みで報酬も受け取っている【癒しの雫】。
ギルドの運営として貯蓄にも回しているが、当然冒険者にも報酬を配り、事務職、鍛冶三人組にも配分されている。
いつも通りに盛り上がっている【癒しの雫】。
「クオウの旦那、明日王城に呼ばれているって話、どうするんだ?」
「どうするも何も、行くしかないでしょう?」
ミハイルが言っているのは、ギルド本部に納品した際に担当受付のラスカから言われた一言を【癒しの雫】全員に共有したからだ。
その内容は、一週間の成果に対して何故か王城に向かうように指示された、と言う話だ。
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