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ルーカスの依頼(16)
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子供の喧嘩で、相手を軽く叩いて骨折させてしまったペトロ。
その相手が高ランク冒険者の息子であり、自身も冒険者登録をして活動している男だったので、メンツをつぶされた形になった親がギルドを上げて母親の家に乗り込んだ。
そこで、ギルド所属の鑑定士によってペトロの存在が明らかになってしまったのだ。
その後は想像通り……周囲から迫害され、徐々に弱った母親は亡くなってしまったのだが、その時でさえ誰も手を貸してくれる人、助けてくれる人はいなかった。
そこから自分の存在を秘匿し、名前も本名をもじってペトロシアと名乗り、一人で生きて行く事を決意していたのだ。
闇ギルドとして活動を開始した当初は、当然未熟で身の危険もあった。
そこを必死で乗り越えて今に至ったのだが、まさか手も足も出ずに拘束されるとは思ってもいなかった。
ターゲットを確認して元【鉱石の彩】三人との戦闘を開始するのだが、この三人も想像を超えて来る強さを誇っていたのには少々驚いていたが、今のペトロシアに対処できない事は無い。
三対一と言っても優位に戦闘を進めていたのだが、突然現れた男によって拘束され、そもそもどのような方法で拘束されたかすら、今を持って分からないのだ。
拘束をしてきた相手、クオウからの問いかけには一切応じない態度をとり続けているペトロシア。
依頼主の情報は明かさないという事は、この仕事を行っている以上は最低限守らなければならないルールだと自分で決めていたのだ。
自分の強さには自信があったので、鑑定される恐れもないだろうとそこだけは無駄に安心していた。
そうこうしていると、クオウによって別室、地下に連れて行かれる。
そこに放置され、体感で数時間経過した頃に再びクオウが現れた。
逃走するチャンスを慎重に伺っていたペトロシアだが、これから行われるのが逃れられない拷問であれば、奥歯に仕込んだ毒によって自害しようと決断していたのだが、クオウはそのようなそぶりは見せない。
「ふ~ん。本名はペトロ、魔族と人族のハーフ……か。魔族が絡むと、やはり人族との友好は考えられないのかな……」
何故かあっさり鑑定されてしまった事に奥歯を噛みしめようとするが、何故か口も動かなくなっている。
「奥歯の毒は、無毒化してあるので無駄ですけどね。念のため。それと……依頼元は話さなくても良いですよ。貴方にも矜持があるでしょう?そもそも聞かずともルーカスである事位は分かっています。って、言いましたよね?これから拘束を解きますが、大人しくしてくださいね。既に実力差は分かっているでしょう?」
言われなくとも勝てない事位は理解しているペトロシア。
とは言っても声は出ないし頷けないのだが……
直後、体に力が入る事を理解し拘束が解けたと判断したが、隙を探すような事はしない。
目の前の相手に対しては、何もかもが無駄だと分かるので、黙って勧められるままに椅子に座る以外の選択肢は無かった。
「あなたの依頼、もう達成できない事は理解できていますね?」
クオウの問いには首肯する他ない、ペトロシア。
この場でのクオウは、既に一事務職として非常に丁寧にペトロシアに接していた。
「結構です。では、こちらから提案です。貴方もご存じの通りに【癒しの雫】は何故か【勇者の館】に目の敵にされています。暗殺者を差し向けられるほどに……ね。そこで改めて提案ですが、一度あなたは【闇夜の月】を解体、そもそも貴方一人しかいないのですから、その仕事から足を洗って【癒しの雫】の一メンバーとなり、冒険者登録をして、時には情報収集の任に就く、そんな仕事をしてみませんか?」
【勇者の館】から依頼を受けて暗殺しに来た事、【闇夜の月】が自分一人で活動している事、全てを見透かされたペトロシアだが、安易に頷くわけには行かなかった。
「でも、私は魔族と人族のハーフ。このギルド、とても仲良さそうだった。命を懸けてあの少女を守る位には。そんな所に異物を入れるべきじゃない」
自分を異物と言い放ったペトロシアには、ギルドの秘密、自分達の存在を明らかにする必要があると判断したクオウはギルドマスターの許可を取るべく、一旦席を外す。
即座にペトロのいる地下に戻るのだが、シアだけではなく、シアに事情を話していたのを聞いていた全員が共に地下にやってきた。
目の前には命をとろうと攻撃をしたシア、そして鍛冶三人組がいるのだが、微動だにしないペトロシア。
「えっと、ご存じかと思いますが、私がこの【癒しの雫】のギルドマスターのシアです。クオウさんから提案を受けました。貴方を、ペトロさんをこのギルドの冒険者として、特に情報収集部隊として加入いただきたいと」
「でも、断った。異物は不要」
あっさりと断言するペトロシア。
「その意見も聞きました。そしてその理由も。ですがペトロさん、私達【癒しの雫】は、種族は関係ないのですよ。貴方ほどの強さがあればお分かりになりませんか?自分よりも圧倒的な強者、人族の訳がないとは思わなかったのですか?」
シアの言葉に、漸く事実に辿り着くペトロシア。
自分は暗殺にかけては最強だと自負していたのだが、あっさりと拘束されて無様を晒しているのだから……
その相手が高ランク冒険者の息子であり、自身も冒険者登録をして活動している男だったので、メンツをつぶされた形になった親がギルドを上げて母親の家に乗り込んだ。
そこで、ギルド所属の鑑定士によってペトロの存在が明らかになってしまったのだ。
その後は想像通り……周囲から迫害され、徐々に弱った母親は亡くなってしまったのだが、その時でさえ誰も手を貸してくれる人、助けてくれる人はいなかった。
そこから自分の存在を秘匿し、名前も本名をもじってペトロシアと名乗り、一人で生きて行く事を決意していたのだ。
闇ギルドとして活動を開始した当初は、当然未熟で身の危険もあった。
そこを必死で乗り越えて今に至ったのだが、まさか手も足も出ずに拘束されるとは思ってもいなかった。
ターゲットを確認して元【鉱石の彩】三人との戦闘を開始するのだが、この三人も想像を超えて来る強さを誇っていたのには少々驚いていたが、今のペトロシアに対処できない事は無い。
三対一と言っても優位に戦闘を進めていたのだが、突然現れた男によって拘束され、そもそもどのような方法で拘束されたかすら、今を持って分からないのだ。
拘束をしてきた相手、クオウからの問いかけには一切応じない態度をとり続けているペトロシア。
依頼主の情報は明かさないという事は、この仕事を行っている以上は最低限守らなければならないルールだと自分で決めていたのだ。
自分の強さには自信があったので、鑑定される恐れもないだろうとそこだけは無駄に安心していた。
そうこうしていると、クオウによって別室、地下に連れて行かれる。
そこに放置され、体感で数時間経過した頃に再びクオウが現れた。
逃走するチャンスを慎重に伺っていたペトロシアだが、これから行われるのが逃れられない拷問であれば、奥歯に仕込んだ毒によって自害しようと決断していたのだが、クオウはそのようなそぶりは見せない。
「ふ~ん。本名はペトロ、魔族と人族のハーフ……か。魔族が絡むと、やはり人族との友好は考えられないのかな……」
何故かあっさり鑑定されてしまった事に奥歯を噛みしめようとするが、何故か口も動かなくなっている。
「奥歯の毒は、無毒化してあるので無駄ですけどね。念のため。それと……依頼元は話さなくても良いですよ。貴方にも矜持があるでしょう?そもそも聞かずともルーカスである事位は分かっています。って、言いましたよね?これから拘束を解きますが、大人しくしてくださいね。既に実力差は分かっているでしょう?」
言われなくとも勝てない事位は理解しているペトロシア。
とは言っても声は出ないし頷けないのだが……
直後、体に力が入る事を理解し拘束が解けたと判断したが、隙を探すような事はしない。
目の前の相手に対しては、何もかもが無駄だと分かるので、黙って勧められるままに椅子に座る以外の選択肢は無かった。
「あなたの依頼、もう達成できない事は理解できていますね?」
クオウの問いには首肯する他ない、ペトロシア。
この場でのクオウは、既に一事務職として非常に丁寧にペトロシアに接していた。
「結構です。では、こちらから提案です。貴方もご存じの通りに【癒しの雫】は何故か【勇者の館】に目の敵にされています。暗殺者を差し向けられるほどに……ね。そこで改めて提案ですが、一度あなたは【闇夜の月】を解体、そもそも貴方一人しかいないのですから、その仕事から足を洗って【癒しの雫】の一メンバーとなり、冒険者登録をして、時には情報収集の任に就く、そんな仕事をしてみませんか?」
【勇者の館】から依頼を受けて暗殺しに来た事、【闇夜の月】が自分一人で活動している事、全てを見透かされたペトロシアだが、安易に頷くわけには行かなかった。
「でも、私は魔族と人族のハーフ。このギルド、とても仲良さそうだった。命を懸けてあの少女を守る位には。そんな所に異物を入れるべきじゃない」
自分を異物と言い放ったペトロシアには、ギルドの秘密、自分達の存在を明らかにする必要があると判断したクオウはギルドマスターの許可を取るべく、一旦席を外す。
即座にペトロのいる地下に戻るのだが、シアだけではなく、シアに事情を話していたのを聞いていた全員が共に地下にやってきた。
目の前には命をとろうと攻撃をしたシア、そして鍛冶三人組がいるのだが、微動だにしないペトロシア。
「えっと、ご存じかと思いますが、私がこの【癒しの雫】のギルドマスターのシアです。クオウさんから提案を受けました。貴方を、ペトロさんをこのギルドの冒険者として、特に情報収集部隊として加入いただきたいと」
「でも、断った。異物は不要」
あっさりと断言するペトロシア。
「その意見も聞きました。そしてその理由も。ですがペトロさん、私達【癒しの雫】は、種族は関係ないのですよ。貴方ほどの強さがあればお分かりになりませんか?自分よりも圧倒的な強者、人族の訳がないとは思わなかったのですか?」
シアの言葉に、漸く事実に辿り着くペトロシア。
自分は暗殺にかけては最強だと自負していたのだが、あっさりと拘束されて無様を晒しているのだから……
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