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ルーカスの依頼(11)
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貴族に話しかけるには人族の二人にとってみれば大きな壁があり、魔族の二人にとってみれば、何がきっかけで厄介事になるか分からない為、【癒しの雫】に迷惑をかけるわけには行かずに黙っている。
何とも言えない微妙な距離感を保ちつつ、漸く門まで到着する一行。
各人がギルドカードを見せている所、リリアの護衛が同じ様なカード型の身分証明を異なる門番に見せていた。
「こ、これはリリア様。何故このような?」
今尚リアントから降りようとしないリリアを見て、困惑している門番。
その声を聞いて、やはり高貴な人なのだと改めて理解した【癒しの雫】の四人。
「こちらは、私達の命を救ってくださったリアントさんです。疲れた私を運ぶ事まで買って出て下さっているのです。素晴らしいです!」
Bランクとして分類されている蟻型魔獣リアントにとってみれば、リリア一人程度乗せても何も変化はない程の力は持っているが、決して自分から運搬を買って出てはいない。
ハッキリ言って、強引にリリアが背中に乗って降りる気配がないままに、ここに至っている。
リアントと言えども精神的に疲れるし、どうせ乗せるなら【癒しの雫】のメンバーか、その中でも主であるアルフレドを乗せたかったのだが、リリアは一切お構いなしだ。
「ですが、お立場もございますし、この中で乗られるはちょっと……」
言いにくそうに門番が告げると、リリアも流石にそれ以上我儘を通す事はせずにあっさりとリアントの背中から降りた。
「リアントさん。また絶対に乗せて下さいね?」
次回の予約をしながらだが……
「ウフフ、途中少々トラブルがありましたが、それ以上に楽しい旅になりました。【癒しの雫】の皆様には感謝してもしきれません。改めまして明日の夜にでもギルドにご挨拶させて頂きますので、リアントさんも待っていてくださいね!」
有無をも言わさず美しく一礼すると、護衛と共に消えていくリリア。
「えっと、これで明日もギルドに戻る形で依頼を受ける事が確定と言う事で良いですか?」
その後ろ姿を苦笑いのまま見送った四人だが、思わずと言った感じでこう話すアルフレドに対し、三人も概ね同意する。
「そうなる……のかな?」
「それしかないでしょう?」
「私からクオウ様、シア様には説明しておきますね」
一旦【癒しの雫】に戻る四人と一匹は事情を全員に話して共有し、今日の分の納品を本部に納めに行く事にした。
冒険者組が各自で持っている収納袋と共に本部に向かい、本部指名依頼の処理の勉強のためにギルドマスターであるシア、そして補助にクオウが同行する。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方の【勇者の館】。
街道から外れた場所で順調に魔獣を始末しており、休憩している最中に【癒しの雫】が向かう箇所に潜ませていた二人、ドリアスとハンナが戻ってきた。
「戻ったか。首尾はどうだ?」
「あの場所に来たのはアルフレドでしたので、ゴスモンキの群れをぶつけて来ました」
詳細を伝えられないドリアスとハンナ。
「そうか。あいつ程度ならゴスモンキでも相当苦労して、その日の活動は終わらざるを得ないかもしれないな。よくやった」
本当のアルフレドの力を知らないルーカスは、【癒しの雫】の邪魔が出来たと気分を良くしたまま、その日の討伐を終える事が出来ていた。
「これだけ始末した実績を見せつければ、如何に俺達【勇者の館】が【癒しの雫】と比べるまでもなく優秀であるかを、ギルド本部にたむろしているカス共にも理解できるだろう」
上機嫌で直接本部に向かう【勇者の館】。
「ツイマ、今日の分の納品だ!」
周囲にアピールするかのように大声を出すルーカスは、一部の討伐証明だけを受付に提出する。
「これは……流石です、ルーカス様。Aランクばかりではないですか」
「当然だ。俺達は【勇者の館】だからな。それに、ここでは出せない大物もある。量が多いので今回は解体していないままだが、良いな?」
途端にざわつくギルド本部。
「降格したと言っても、やはり【勇者の館】か。実力は本物だ」
「これは、ひょっとしたらあっという間に再度Sランクギルド認定されるのかもしれないな」
一部降格と言う許しがたい単語が聞こえてきたが、内容は称賛する内容であったので更に機嫌が良くなるルーカス。
裏手に移動した後も、他のギルドの面々が遠目から納品されている魔獣を見ており、再び感嘆の声が聞こえてきていた。
何とも言えない微妙な距離感を保ちつつ、漸く門まで到着する一行。
各人がギルドカードを見せている所、リリアの護衛が同じ様なカード型の身分証明を異なる門番に見せていた。
「こ、これはリリア様。何故このような?」
今尚リアントから降りようとしないリリアを見て、困惑している門番。
その声を聞いて、やはり高貴な人なのだと改めて理解した【癒しの雫】の四人。
「こちらは、私達の命を救ってくださったリアントさんです。疲れた私を運ぶ事まで買って出て下さっているのです。素晴らしいです!」
Bランクとして分類されている蟻型魔獣リアントにとってみれば、リリア一人程度乗せても何も変化はない程の力は持っているが、決して自分から運搬を買って出てはいない。
ハッキリ言って、強引にリリアが背中に乗って降りる気配がないままに、ここに至っている。
リアントと言えども精神的に疲れるし、どうせ乗せるなら【癒しの雫】のメンバーか、その中でも主であるアルフレドを乗せたかったのだが、リリアは一切お構いなしだ。
「ですが、お立場もございますし、この中で乗られるはちょっと……」
言いにくそうに門番が告げると、リリアも流石にそれ以上我儘を通す事はせずにあっさりとリアントの背中から降りた。
「リアントさん。また絶対に乗せて下さいね?」
次回の予約をしながらだが……
「ウフフ、途中少々トラブルがありましたが、それ以上に楽しい旅になりました。【癒しの雫】の皆様には感謝してもしきれません。改めまして明日の夜にでもギルドにご挨拶させて頂きますので、リアントさんも待っていてくださいね!」
有無をも言わさず美しく一礼すると、護衛と共に消えていくリリア。
「えっと、これで明日もギルドに戻る形で依頼を受ける事が確定と言う事で良いですか?」
その後ろ姿を苦笑いのまま見送った四人だが、思わずと言った感じでこう話すアルフレドに対し、三人も概ね同意する。
「そうなる……のかな?」
「それしかないでしょう?」
「私からクオウ様、シア様には説明しておきますね」
一旦【癒しの雫】に戻る四人と一匹は事情を全員に話して共有し、今日の分の納品を本部に納めに行く事にした。
冒険者組が各自で持っている収納袋と共に本部に向かい、本部指名依頼の処理の勉強のためにギルドマスターであるシア、そして補助にクオウが同行する。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方の【勇者の館】。
街道から外れた場所で順調に魔獣を始末しており、休憩している最中に【癒しの雫】が向かう箇所に潜ませていた二人、ドリアスとハンナが戻ってきた。
「戻ったか。首尾はどうだ?」
「あの場所に来たのはアルフレドでしたので、ゴスモンキの群れをぶつけて来ました」
詳細を伝えられないドリアスとハンナ。
「そうか。あいつ程度ならゴスモンキでも相当苦労して、その日の活動は終わらざるを得ないかもしれないな。よくやった」
本当のアルフレドの力を知らないルーカスは、【癒しの雫】の邪魔が出来たと気分を良くしたまま、その日の討伐を終える事が出来ていた。
「これだけ始末した実績を見せつければ、如何に俺達【勇者の館】が【癒しの雫】と比べるまでもなく優秀であるかを、ギルド本部にたむろしているカス共にも理解できるだろう」
上機嫌で直接本部に向かう【勇者の館】。
「ツイマ、今日の分の納品だ!」
周囲にアピールするかのように大声を出すルーカスは、一部の討伐証明だけを受付に提出する。
「これは……流石です、ルーカス様。Aランクばかりではないですか」
「当然だ。俺達は【勇者の館】だからな。それに、ここでは出せない大物もある。量が多いので今回は解体していないままだが、良いな?」
途端にざわつくギルド本部。
「降格したと言っても、やはり【勇者の館】か。実力は本物だ」
「これは、ひょっとしたらあっという間に再度Sランクギルド認定されるのかもしれないな」
一部降格と言う許しがたい単語が聞こえてきたが、内容は称賛する内容であったので更に機嫌が良くなるルーカス。
裏手に移動した後も、他のギルドの面々が遠目から納品されている魔獣を見ており、再び感嘆の声が聞こえてきていた。
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