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ルーカスの依頼(8)

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 馬車の護衛をしており魔獣に襲われている二人は、残る力を振り絞ってゴスモンキの集団に襲い掛かり、ゴスモンキの群れの意識を一身に向けさせ、その隙に残りの護衛二人がお嬢様と呼ばれている人物を抱えて逃げると言う作戦。

 四人で対応している今でさえ劣勢である現状、当然攻撃を仕掛ける二人は命が助かるとは思っていない。

「フフ、隊長と共に散る事が出来る。最高の名誉ですよ!」

「……お前には苦労を掛ける。では最後の花道、共に最高に散ってやろうか!」

「「かかって来いや!!」」

 今後の事を一切考えず、全力で攻撃をするために残る魔力を全て身体強化に回し始める二人。

「あれ?まだこんなにいたんだ、ゴスモンキ。興奮状態になって……って、俺のせいかも知れない?ご、ごめんなさい。えっと、皆さんお怪我はありませんか?ちょっとあのゴミゴスモンキ片付けてきますので、待っていてください」

 感動の一シーンとでも言うべき所、男として命を捨てる覚悟で攻撃をしようとした所に、何とも間の抜けた声が聞こえた。

 その声の主は、【癒しの雫】の仲間達に囲われてすっかり明るくなってきたアルフレドのものであり、既に使役している魔獣リアントによってゴスモンキはかなりの勢いで始末されている。

「き、君は?」

 隊長と呼ばれている男が、敵の数が一気に減って攻撃回数が少なくなった為に余裕が出て、目の前のゴスモンキ一体を容易く体切り裂き、アルフレドに向き合う。

「えっと、【癒しの雫】所属冒険者のアルフレド、そしてあのリアントは俺の使役している仲間です」

「成程、最近噂になっている【癒しの雫】。どうりで……相当な力をお持ちの様だ。正直、我らは最早ダメだと思っていた。助力、感謝する」

 この時点で残り少ないゴスモンキは逃走しており、四人の騎士に守られながら馬車から可憐な女性が下りて来た。

 金目・金髪・縦ロールであり、もうこの時点で高貴な身分であると言っている様なものだ。

「この度は危ない所を助けて頂きまして、ありがとうございます。私、リリア・リビルと申します。貴方様は【癒しの雫】の冒険者との事でよろしいですわね?ジャロリア王国に戻りましたら改めてご挨拶に伺わせて頂きます」

「えっと、こちらこそ申し訳ありませんでした。あのゴスモンキ、俺が興奮状態にさせたのかもしれません。ちょっとギルドに異常があって急いで戻る最中に数体仕留めたまま群れを放置してしまったのです。そのせいかもしれません……」

 正直に話すアルフレドだが、助けられた方はだから何だ?と言う話だ。

「いいえ、経緯はどうあれ助けて頂いたのは紛れもない事実。それに【癒しの雫】と言えば、今回街道沿いの安全確保のために依頼を受けて下さっているのでしょう?あのような魔獣に命を賭して対応して頂ける方々、感謝しかございません」

 アルフレドと、既にゴスモンキを始末して傍に戻っているリアントを優しく見つめるリリア。

 アルフレドとしては今迄出会った【癒しの雫】以外の人族のように、リアントについて何か言われたり、怯えられたりするのかと構えたのだが、護衛の四人、そしてこのリリアと言う女性はそのような素振りは一切見せなかった。

 逆に誉めて見せたのだ。

「流石は【癒しの雫】冒険者殿。使役されている魔獣も別格の強さ。リアント殿・・・・・にも改めて感謝申し上げる」

 魔獣に対してもお礼を言ってのけた隊長と呼ばれていた男、そして同じく頭を下げて来るこの場の全員。

 もうどうして良いか分からず、ひたすら狼狽するアルフレド。

「えっと、その、はい。じゃなくて、その……頭を上げて下さい。お願いします。マスター、クオウ様、どうすれば!」

 その声を聞いて頭を上げつつも笑っている五人は、一気に視線を細めて森の奥を見る。

 そこの視線の先には、この状況に少々動揺しつつも明らかにこの場から消え去ろうとしている二人、【勇者の館】所属冒険者のランドルとハンナがいたのだ。

「お嬢様、あの二人が明らかにゴスモンキを引き連れて来ました。最初の襲撃では何とか迎撃できる数でしたが、あの二人が連れて来たゴスモンキがこちらに襲い掛かった時点で一気に劣勢になったのです」

「それは、私を狙って操術を使ったと言う事ですか?」

「申し訳ありませんが、そこまでは判断できません。私達も戦闘中でしたので、余裕がありませんでした」

「そうですか。なんにせよ今回はアルフレド様のおかげで助かりましたが、ゴルダ隊長、あなた方の忠臣も決して忘れてはおりません。感謝しております」

「もったいないお言葉です」

 未だ動揺するアルフレドを見ながら、こんな事を話している隊長と呼ばれている男ゴルダとリリア。

 そのリリア、誰の目から見ても高貴な立場の人物である事は明らかであり、命が危険な状態に陥れたばかりか、そのまま逃走しようとしていたドリアスとハンナは狼狽するのだが、言い訳もできないのでそのまま姿を消していた。
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