63 / 153
ルーカスの依頼(8)
しおりを挟む
馬車の護衛をしており魔獣に襲われている二人は、残る力を振り絞ってゴスモンキの集団に襲い掛かり、ゴスモンキの群れの意識を一身に向けさせ、その隙に残りの護衛二人がお嬢様と呼ばれている人物を抱えて逃げると言う作戦。
四人で対応している今でさえ劣勢である現状、当然攻撃を仕掛ける二人は命が助かるとは思っていない。
「フフ、隊長と共に散る事が出来る。最高の名誉ですよ!」
「……お前には苦労を掛ける。では最後の花道、共に最高に散ってやろうか!」
「「かかって来いや!!」」
今後の事を一切考えず、全力で攻撃をするために残る魔力を全て身体強化に回し始める二人。
「あれ?まだこんなにいたんだ、ゴスモンキ。興奮状態になって……って、俺のせいかも知れない?ご、ごめんなさい。えっと、皆さんお怪我はありませんか?ちょっとあのゴミ片付けてきますので、待っていてください」
感動の一シーンとでも言うべき所、男として命を捨てる覚悟で攻撃をしようとした所に、何とも間の抜けた声が聞こえた。
その声の主は、【癒しの雫】の仲間達に囲われてすっかり明るくなってきたアルフレドのものであり、既に使役している魔獣リアントによってゴスモンキはかなりの勢いで始末されている。
「き、君は?」
隊長と呼ばれている男が、敵の数が一気に減って攻撃回数が少なくなった為に余裕が出て、目の前のゴスモンキ一体を容易く体切り裂き、アルフレドに向き合う。
「えっと、【癒しの雫】所属冒険者のアルフレド、そしてあのリアントは俺の使役している仲間です」
「成程、最近噂になっている【癒しの雫】。どうりで……相当な力をお持ちの様だ。正直、我らは最早ダメだと思っていた。助力、感謝する」
この時点で残り少ないゴスモンキは逃走しており、四人の騎士に守られながら馬車から可憐な女性が下りて来た。
金目・金髪・縦ロールであり、もうこの時点で高貴な身分であると言っている様なものだ。
「この度は危ない所を助けて頂きまして、ありがとうございます。私、リリア・リビルと申します。貴方様は【癒しの雫】の冒険者との事でよろしいですわね?ジャロリア王国に戻りましたら改めてご挨拶に伺わせて頂きます」
「えっと、こちらこそ申し訳ありませんでした。あのゴスモンキ、俺が興奮状態にさせたのかもしれません。ちょっとギルドに異常があって急いで戻る最中に数体仕留めたまま群れを放置してしまったのです。そのせいかもしれません……」
正直に話すアルフレドだが、助けられた方はだから何だ?と言う話だ。
「いいえ、経緯はどうあれ助けて頂いたのは紛れもない事実。それに【癒しの雫】と言えば、今回街道沿いの安全確保のために依頼を受けて下さっているのでしょう?あのような魔獣に命を賭して対応して頂ける方々、感謝しかございません」
アルフレドと、既にゴスモンキを始末して傍に戻っているリアントを優しく見つめるリリア。
アルフレドとしては今迄出会った【癒しの雫】以外の人族のように、リアントについて何か言われたり、怯えられたりするのかと構えたのだが、護衛の四人、そしてこのリリアと言う女性はそのような素振りは一切見せなかった。
逆に誉めて見せたのだ。
「流石は【癒しの雫】冒険者殿。使役されている魔獣も別格の強さ。リアント殿にも改めて感謝申し上げる」
魔獣に対してもお礼を言ってのけた隊長と呼ばれていた男、そして同じく頭を下げて来るこの場の全員。
もうどうして良いか分からず、ひたすら狼狽するアルフレド。
「えっと、その、はい。じゃなくて、その……頭を上げて下さい。お願いします。マスター、クオウ様、どうすれば!」
その声を聞いて頭を上げつつも笑っている五人は、一気に視線を細めて森の奥を見る。
そこの視線の先には、この状況に少々動揺しつつも明らかにこの場から消え去ろうとしている二人、【勇者の館】所属冒険者のランドルとハンナがいたのだ。
「お嬢様、あの二人が明らかにゴスモンキを引き連れて来ました。最初の襲撃では何とか迎撃できる数でしたが、あの二人が連れて来たゴスモンキがこちらに襲い掛かった時点で一気に劣勢になったのです」
「それは、私を狙って操術を使ったと言う事ですか?」
「申し訳ありませんが、そこまでは判断できません。私達も戦闘中でしたので、余裕がありませんでした」
「そうですか。なんにせよ今回はアルフレド様のおかげで助かりましたが、ゴルダ隊長、あなた方の忠臣も決して忘れてはおりません。感謝しております」
「もったいないお言葉です」
未だ動揺するアルフレドを見ながら、こんな事を話している隊長と呼ばれている男ゴルダとリリア。
そのリリア、誰の目から見ても高貴な立場の人物である事は明らかであり、命が危険な状態に陥れたばかりか、そのまま逃走しようとしていたドリアスとハンナは狼狽するのだが、言い訳もできないのでそのまま姿を消していた。
四人で対応している今でさえ劣勢である現状、当然攻撃を仕掛ける二人は命が助かるとは思っていない。
「フフ、隊長と共に散る事が出来る。最高の名誉ですよ!」
「……お前には苦労を掛ける。では最後の花道、共に最高に散ってやろうか!」
「「かかって来いや!!」」
今後の事を一切考えず、全力で攻撃をするために残る魔力を全て身体強化に回し始める二人。
「あれ?まだこんなにいたんだ、ゴスモンキ。興奮状態になって……って、俺のせいかも知れない?ご、ごめんなさい。えっと、皆さんお怪我はありませんか?ちょっとあのゴミ片付けてきますので、待っていてください」
感動の一シーンとでも言うべき所、男として命を捨てる覚悟で攻撃をしようとした所に、何とも間の抜けた声が聞こえた。
その声の主は、【癒しの雫】の仲間達に囲われてすっかり明るくなってきたアルフレドのものであり、既に使役している魔獣リアントによってゴスモンキはかなりの勢いで始末されている。
「き、君は?」
隊長と呼ばれている男が、敵の数が一気に減って攻撃回数が少なくなった為に余裕が出て、目の前のゴスモンキ一体を容易く体切り裂き、アルフレドに向き合う。
「えっと、【癒しの雫】所属冒険者のアルフレド、そしてあのリアントは俺の使役している仲間です」
「成程、最近噂になっている【癒しの雫】。どうりで……相当な力をお持ちの様だ。正直、我らは最早ダメだと思っていた。助力、感謝する」
この時点で残り少ないゴスモンキは逃走しており、四人の騎士に守られながら馬車から可憐な女性が下りて来た。
金目・金髪・縦ロールであり、もうこの時点で高貴な身分であると言っている様なものだ。
「この度は危ない所を助けて頂きまして、ありがとうございます。私、リリア・リビルと申します。貴方様は【癒しの雫】の冒険者との事でよろしいですわね?ジャロリア王国に戻りましたら改めてご挨拶に伺わせて頂きます」
「えっと、こちらこそ申し訳ありませんでした。あのゴスモンキ、俺が興奮状態にさせたのかもしれません。ちょっとギルドに異常があって急いで戻る最中に数体仕留めたまま群れを放置してしまったのです。そのせいかもしれません……」
正直に話すアルフレドだが、助けられた方はだから何だ?と言う話だ。
「いいえ、経緯はどうあれ助けて頂いたのは紛れもない事実。それに【癒しの雫】と言えば、今回街道沿いの安全確保のために依頼を受けて下さっているのでしょう?あのような魔獣に命を賭して対応して頂ける方々、感謝しかございません」
アルフレドと、既にゴスモンキを始末して傍に戻っているリアントを優しく見つめるリリア。
アルフレドとしては今迄出会った【癒しの雫】以外の人族のように、リアントについて何か言われたり、怯えられたりするのかと構えたのだが、護衛の四人、そしてこのリリアと言う女性はそのような素振りは一切見せなかった。
逆に誉めて見せたのだ。
「流石は【癒しの雫】冒険者殿。使役されている魔獣も別格の強さ。リアント殿にも改めて感謝申し上げる」
魔獣に対してもお礼を言ってのけた隊長と呼ばれていた男、そして同じく頭を下げて来るこの場の全員。
もうどうして良いか分からず、ひたすら狼狽するアルフレド。
「えっと、その、はい。じゃなくて、その……頭を上げて下さい。お願いします。マスター、クオウ様、どうすれば!」
その声を聞いて頭を上げつつも笑っている五人は、一気に視線を細めて森の奥を見る。
そこの視線の先には、この状況に少々動揺しつつも明らかにこの場から消え去ろうとしている二人、【勇者の館】所属冒険者のランドルとハンナがいたのだ。
「お嬢様、あの二人が明らかにゴスモンキを引き連れて来ました。最初の襲撃では何とか迎撃できる数でしたが、あの二人が連れて来たゴスモンキがこちらに襲い掛かった時点で一気に劣勢になったのです」
「それは、私を狙って操術を使ったと言う事ですか?」
「申し訳ありませんが、そこまでは判断できません。私達も戦闘中でしたので、余裕がありませんでした」
「そうですか。なんにせよ今回はアルフレド様のおかげで助かりましたが、ゴルダ隊長、あなた方の忠臣も決して忘れてはおりません。感謝しております」
「もったいないお言葉です」
未だ動揺するアルフレドを見ながら、こんな事を話している隊長と呼ばれている男ゴルダとリリア。
そのリリア、誰の目から見ても高貴な立場の人物である事は明らかであり、命が危険な状態に陥れたばかりか、そのまま逃走しようとしていたドリアスとハンナは狼狽するのだが、言い訳もできないのでそのまま姿を消していた。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
ノリオ
ファンタジー
今から約200年前。
ある一人の男が、この世界に存在する数多の人間を片っ端から大虐殺するという大事件が起こった。
犠牲となった人数は千にも万にも及び、その規模たるや史上最大・空前絶後であることは、誰の目にも明らかだった。
世界中の強者が権力者が、彼を殺そうと一心奮起し、それは壮絶な戦いを生んだ。
彼自身だけでなく国同士の戦争にまで発展したそれは、世界中を死体で埋め尽くすほどの大惨事を引き起こし、血と恐怖に塗れたその惨状は、正に地獄と呼ぶにふさわしい有様だった。
世界は瀕死だったーー。
世界は終わりかけていたーー。
世界は彼を憎んだーー。
まるで『鬼』のように残虐で、
まるで『神』のように強くて、
まるで『鬼神』のような彼に、
人々は恐れることしか出来なかった。
抗わず、悲しんで、諦めて、絶望していた。
世界はもう終わりだと、誰もが思った。
ーー英雄は、そんな時に現れた。
勇気ある5人の戦士は彼と戦い、致命傷を負いながらも、時空間魔法で彼をこの時代から追放することに成功した。
彼は強い憎しみと未練を残したまま、英雄たちの手によって別の次元へと強制送還され、新たな1日を送り始める。
しかしーー送られた先で、彼には記憶がなかった。 彼は一人の女の子に拾われ、自らの復讐心を忘れたまま、政府の管理する学校へと通うことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる