上 下
55 / 153

アルフレドの加入(4)

しおりを挟む
 酔っ払い共の犠牲になっているのは蟻型魔獣のリアントなのだが、大好きな肉をくれるので、喜んで対応していた。

「あ~、ミハイルさん、シルバ。ずるーい。私も触るのー」

 そこに、こちらも完全に出来上がっているカスミが乱入すると言う、訳の分からない状態になっている。

 少し離れた位置から、すっかりリアントが【癒しの雫】のメンバーに受け入れられており、リアントも彼らを受け入れたのを見て安心しているアルフレドは、時折ギルドカードを見てはニヨニヨしている。

 少し前までは、真剣にロレアルとバーミルと今後について話をしていたのだが、今は状況が少し異なる。

「アルフレド、お前さんの武具は何が良い?本来はミハイルが軽く聞くべきだが、あの様だからな。ウハハハハ、まぁ、飲め!」

「【癒しの雫】の武具は全て俺達が責任を持って作っているから、何でも遠慮なく言ってくれよ。俺達に任せておけば、何でもこーいってことだ。カンパーイ」

 辛うじてまともな事を言える程度に酔っているロレアルとバーミルが、アルフレドの隣の椅子に向かって真剣に話しかけている。

「フフ、クオウ様、シア様、本当に楽しいですね。アルフレドも食べていますか?」

 流石は魔族。

 お酒は飲んでいるがあまり酔ってはいないフレナブルが、クオウとシアと共に笑顔でアルフレドの元にやってきた。

「はい。フレナブル様、クオウ様、マスター!俺、こんなに楽しい思いをしたのは初めてです。リアントも喜んでいますし、ありがとうございます!」

 アルフレドは、正式に【癒しの雫】に入った事をきっかけに、魔族の二人は様、シアはマスターと呼ぶ事、他の同格の人々は“さん”と言う敬称で呼ぶ事にしていたのだ。

「これからは、【癒しの雫】の一員として皆さんの助けになってくださいね。私達も期待していますよ」

「任せて下さい!」

 止むを得ず引きこもりの様な生活をしてきたアルフレドにとって、これからの生活は正に求めていた素晴らしい生活だ。

 一方で【癒しの雫】を出たルーカスは、【勇者の館】に戻る途中にギルド本部に立ち寄っている。

「ツイマはいるな?」

 ルーカスが【癒しの雫】を襲撃させ、その被害をせせら笑ってやろうと向かった先にはアルフレドがいた挙句、襲撃の痕跡すらないほどに復旧されていたのだ。

 確実に襲撃は実行したとの報告があったにも拘らず……だ。

 最早【癒しの雫】を完全な敵と認識したルーカスは、本部マスターのツイマを巻き込んで次なる作戦を立てるためにギルドマスターの執務室にズカズカと入り込む。

「こ、これはルーカス様、如何致しましたでしょうか?」

「言わなくてもわかるだろう!【癒しの雫】の件だ。つい先刻あのクソギルドに立ち寄ったが、そこに死……脱退したアルフレドがいた。あいつは俺達【癒しの雫】の依頼を中途半端に投げ出した挙句、【癒しの雫】に加入したのだ。そう、そうだ!あいつの下劣な行為は【癒しの雫】による妨害工作に他ならない」

「なんと!ですがそれは証明するのが難しく、逆に【勇者の館】の評判を落とす諸刃の剣になりかねませんよ?」

 ツイマは暗に【勇者の館】の信頼度は大きく下がっており、余計な事を言うと、最近評判が急上昇している【癒しの雫】に返り討ちに合うと言っている。

「わかっている。だから あいつらの本当の実力をこのジャロリア王国に知らしめるのだ。しょせんは裏切り者のアルフレドが加入しても冒険者は四人。高ランク魔獣を仕留められるとは言っても、手数には限界がある。わかるだろう?」

「……何を仰っているのですか?」

 その後、ルーカスが帰ったギルド本部。

「どうするべきか。このままルーカス様に乗るか、切るか…今回の提案だけ・・ならば問題ないが、エスカレートするとどうなるか分からない。徐々に距離をとる方が賢明か?」

 ルーカスとの今後について、悩み続けているギルドマスターがいた。

 このギルドマスターも結局は日和見で、自らの立場や権力を失わないようにするにはどうすれば良いか、更なる力を得るにはどうすれば良いか……を日々考えているような男だ。

 そんな男が悩んでも良い結果に結びつく事はないのだが、欲にまみれた男はどうでも良い事を必死で考えている。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

HEAD.HUNTER

佐々木鴻
ファンタジー
 科学と魔導と超常能力が混在する世界。巨大な結界に覆われた都市〝ドラゴンズ・ヘッド〟――通称〝結界都市〟。  其処で生きる〝ハンター〟の物語。  残酷な描写やグロいと思われる表現が多々ある様です(私はそうは思わないけど)。 ※英文は訳さなくても問題ありません。むしろ訳さないで下さい。  大したことは言っていません。然も間違っている可能性大です。。。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

処理中です...