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安全対策のために、秘密を明かす
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クオウが出した【癒しの雫】の安全対策として、人族の誰も知識がないので種族名を口にしても問題ないだろうと言う事で、自分の眷属であるラトールを召喚する案を提示したのだが、思わぬ所で待ったがかかった。
「クオウ様。確かに安全でしょうが、クオウ様が近くにいらっしゃらないと、制御ができなくなりませんか?」
フレナブルも制御できなくはないが、殆ど力技になるために周囲に多大な被害を及ぼす恐れがあるのだ。
このラトール、実力は折り紙付きで疑いようはないのだが、クオウから離れる事を極度に嫌う。
その結果、クオウが外出中に【癒しの雫】にお留守番……は出来ないだろうとフレナブルは判断した。
「確かにラトールは寂しがり屋だからな~」
ラトールを思い出して何故か嬉しそうにしているクオウだが、仮にラトールがクオウ不在中にクオウを探してこの場で暴れるような事があれば、【癒しの雫】はもとより、この周囲一帯が焦土になる程、超危険な魔獣なのだ。
ラトールの事を知らないミハイル達は、ただ単にクオウのペットでも呼ぶのかと思っているので聞き流しており、更に安全対策についての話は続く。
「俺達が作る魔道具で外壁の補強は出来るが、中で直接人に攻撃されると……一応防御の魔道具をマスターに持たせているが、そうだな、例えば拘束して拉致されるとかは防げねーぞ、クオウの旦那」
「そうだな。それに、あの短剣の魔道具を奪われればお終いだしな」
「今回と違って俺達に気が付かれずに襲撃されたら、対応できないし……」
魔道具バカ三人の意見は尤もな意見なのでクオウも悩む中、フレナブルはあっさりとこう告げる。
「では、もう一人冒険者を加入させては如何でしょうか?」
「そうは言うがフレナブル、信頼できる冒険者でマスターを守れるほどの力がある人材に当てがあるのかい?」
「はい、クオウ様。以前マスターとクオウ様が本部で聞いた情報が有ったではありませんか。【変質者の館】のAランカーが一人行方不明になっている……と。私、その方の居場所を存じております。Bランクのリアントを使役しておられる方でしたが、使役している魔獣に対する偏見が多く、一人で活動されている方です」
本部受付であるラスカから聞いた情報、【勇者の館】の中でダンジョン攻略後に行方知れずになっており、ギルド脱退の処理がなされていたAランク冒険者のアルフレドを見つけたと言うのだ。
この場で初めて、かなり重要な情報を伝えるフレナブル。
本来は発見時に伝えるべき所だが見つけたのは昨日の夕方であり、フレナブルも初めてのパーティーが楽しみ過ぎてすっかり忘れていたのだ。
そのように謝罪付きで言われてしまっては、可愛らしいな!と思う程度で何も言う事は出来ないので、具体的な検討に入る。
「Aランクなら申し分ないけど……」
「確かにそうだな、クオウの旦那。だがフレナブルさん、問題は信頼に足るかどうかだぜ?そこの所はどう確認するんだ?」
当然の疑問がミハイルから投げかけられる。
クオウとしてもそこは気になるのだが、何故かフレナブルは緊張した表情に変わる。
このようにフレナブルが緊張する所を見た事が無いクオウは、心配になる。
「フレナブル?」
「何でもありません、クオウ様。ですが、私達についても説明が必要になります。宜しいですか?」
突然振られたクオウだが、種族、つまり魔族と言う事を明らかにするのだろうと判断した。
その結果……今の環境が破壊され、二度と戻らなくなるかもしれない覚悟が必要になる。
余りにも楽しい今の生活を続けるには、種族を黙っている、元魔王である事も黙っている方が良いという事は理解しているのだが、やはり隠し事があって生活している事には若干の後ろめたさがあったのだ。
少々悩んだクオウは、【癒しの雫】の仲間を信じる事にした。
もしここで拒絶された場合、ある程度魔術を封入した魔道具を置き土産にして、フレナブルと共に去ろうと思ったのだ。
「わかった。良いぞ、フレナブル」
覚悟の返事に、フレナブルは少しだけ涙目になりながら優しく微笑む。
「ふ~。きっと大丈夫ですよ、クオウ様。えっと、ミハイルさん、その証拠は……その、種族的な物です」
これだけでは何も理解できないミハイル達だが、クオウだけは理解できている。
今回フレナブルが推薦してきた元【勇者の館】所属Aランク冒険者であるアルフレドは、人族ではないと言っているのだ。
更に裏切る事は無いと言う根拠が“種族”と言っているので、元自分の配下である魔族なのだろうと確信した。
クオウの推測は正しく、実はアルフレドも争いを好まない魔族としては本当に特殊な個体であり、ゴクドが魔王となってから即魔王国を抜け出していたのだ。
その後、偶然にもクオウのいる【勇者の館】の冒険者として活動し、目立たないように人族とは距離を置きつつ、魔族としての力を使って単独で魔獣を始末・納品して、最終的には短期間でAランクにまでなっていた。
「クオウ様。確かに安全でしょうが、クオウ様が近くにいらっしゃらないと、制御ができなくなりませんか?」
フレナブルも制御できなくはないが、殆ど力技になるために周囲に多大な被害を及ぼす恐れがあるのだ。
このラトール、実力は折り紙付きで疑いようはないのだが、クオウから離れる事を極度に嫌う。
その結果、クオウが外出中に【癒しの雫】にお留守番……は出来ないだろうとフレナブルは判断した。
「確かにラトールは寂しがり屋だからな~」
ラトールを思い出して何故か嬉しそうにしているクオウだが、仮にラトールがクオウ不在中にクオウを探してこの場で暴れるような事があれば、【癒しの雫】はもとより、この周囲一帯が焦土になる程、超危険な魔獣なのだ。
ラトールの事を知らないミハイル達は、ただ単にクオウのペットでも呼ぶのかと思っているので聞き流しており、更に安全対策についての話は続く。
「俺達が作る魔道具で外壁の補強は出来るが、中で直接人に攻撃されると……一応防御の魔道具をマスターに持たせているが、そうだな、例えば拘束して拉致されるとかは防げねーぞ、クオウの旦那」
「そうだな。それに、あの短剣の魔道具を奪われればお終いだしな」
「今回と違って俺達に気が付かれずに襲撃されたら、対応できないし……」
魔道具バカ三人の意見は尤もな意見なのでクオウも悩む中、フレナブルはあっさりとこう告げる。
「では、もう一人冒険者を加入させては如何でしょうか?」
「そうは言うがフレナブル、信頼できる冒険者でマスターを守れるほどの力がある人材に当てがあるのかい?」
「はい、クオウ様。以前マスターとクオウ様が本部で聞いた情報が有ったではありませんか。【変質者の館】のAランカーが一人行方不明になっている……と。私、その方の居場所を存じております。Bランクのリアントを使役しておられる方でしたが、使役している魔獣に対する偏見が多く、一人で活動されている方です」
本部受付であるラスカから聞いた情報、【勇者の館】の中でダンジョン攻略後に行方知れずになっており、ギルド脱退の処理がなされていたAランク冒険者のアルフレドを見つけたと言うのだ。
この場で初めて、かなり重要な情報を伝えるフレナブル。
本来は発見時に伝えるべき所だが見つけたのは昨日の夕方であり、フレナブルも初めてのパーティーが楽しみ過ぎてすっかり忘れていたのだ。
そのように謝罪付きで言われてしまっては、可愛らしいな!と思う程度で何も言う事は出来ないので、具体的な検討に入る。
「Aランクなら申し分ないけど……」
「確かにそうだな、クオウの旦那。だがフレナブルさん、問題は信頼に足るかどうかだぜ?そこの所はどう確認するんだ?」
当然の疑問がミハイルから投げかけられる。
クオウとしてもそこは気になるのだが、何故かフレナブルは緊張した表情に変わる。
このようにフレナブルが緊張する所を見た事が無いクオウは、心配になる。
「フレナブル?」
「何でもありません、クオウ様。ですが、私達についても説明が必要になります。宜しいですか?」
突然振られたクオウだが、種族、つまり魔族と言う事を明らかにするのだろうと判断した。
その結果……今の環境が破壊され、二度と戻らなくなるかもしれない覚悟が必要になる。
余りにも楽しい今の生活を続けるには、種族を黙っている、元魔王である事も黙っている方が良いという事は理解しているのだが、やはり隠し事があって生活している事には若干の後ろめたさがあったのだ。
少々悩んだクオウは、【癒しの雫】の仲間を信じる事にした。
もしここで拒絶された場合、ある程度魔術を封入した魔道具を置き土産にして、フレナブルと共に去ろうと思ったのだ。
「わかった。良いぞ、フレナブル」
覚悟の返事に、フレナブルは少しだけ涙目になりながら優しく微笑む。
「ふ~。きっと大丈夫ですよ、クオウ様。えっと、ミハイルさん、その証拠は……その、種族的な物です」
これだけでは何も理解できないミハイル達だが、クオウだけは理解できている。
今回フレナブルが推薦してきた元【勇者の館】所属Aランク冒険者であるアルフレドは、人族ではないと言っているのだ。
更に裏切る事は無いと言う根拠が“種族”と言っているので、元自分の配下である魔族なのだろうと確信した。
クオウの推測は正しく、実はアルフレドも争いを好まない魔族としては本当に特殊な個体であり、ゴクドが魔王となってから即魔王国を抜け出していたのだ。
その後、偶然にもクオウのいる【勇者の館】の冒険者として活動し、目立たないように人族とは距離を置きつつ、魔族としての力を使って単独で魔獣を始末・納品して、最終的には短期間でAランクにまでなっていた。
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