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攻略後の闘い
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本来ダンジョン完全攻略は終了しているはずのルーカス一行。
ゴクドの指示によって巨大な蛇型のAランク魔獣、特殊個体であるマスネとの死闘を余儀なくされている。
そんな中、果敢に攻めて行ったAランク冒険者のドリアスが迎撃されて吹き飛ばされたのだ。
「ドリアスさん!」
視界・音共に隠密行動には今の状況は有利であると判断したドリアスが、決死の覚悟で、最後の短剣を手に持ってマスネの死角と思われるルーカスとは逆の位置に移動して攻撃しようとしたのだが、気が付けば全身を岩に叩きつけられていた。
何故か全身が激しく痛み、目の前には偶然ではあるのだがハンナがいると気が付いたドリアス。
丁度ハンナのいる所に吹き飛ばされたドリアスは、ハンナの回復術によって事なきを得た。
「すまない、ハンナ。クソ、あのデカブツ、何故俺の近接が……」
「あの、ドリアスさん。あの魔獣マスネは蛇型です。貴方の体温を感知していたのではないでしょうか?」
あっさりと正解に辿り着くハンナ。
ハッキリ言って、まさかの油断だ。
結果的にはルーカスだけではなく、ドリアスでさえも緊張の糸がいったん切れた事により、正確な判断が出来なくなっていたのだ。
「いくら視界が悪くても、マスネには関係がありません。常に視認されていると思って行動をしないと……」
既に防御の魔道具を持っているのはハンナのみ。それも最後の魔道具だ。
毒を付与した短剣も無くなり、ドリアスは自らの剣術によってのみ攻撃する事が出来る状態になってしまっている。
あの巨体、そして固そうな鱗を見るに、遠方から魔力で身体能力を底上げした上での何かしらを投げつける程度ではダメージは与えられそうにないのだ。
そんな事を考えているこの時にも、ルーカスに対して猛攻を仕掛けているマスネ。
どう見ても劣勢である為に、再度特攻するドリアス。
細心の注意を払いながらの攻撃であり流石に致命傷を受けるような事は無くなっているのだが、敵の攻撃に注意を払っている分、自らの攻撃力は激減しているので、未だマスネには傷一つついていない。
「皆さん、マスネは、お腹周辺は比較的柔らかいはずです!」
これのハンナの叫びも、魔獣であるマスネには理解できている。
誰もが知っている事であり、マスネ自身も口の中と腹に対する攻撃については気を付けている。
攻撃をしているルーカスとドリアスにしてみれば、ハンナの声でようやく少々冷静になれるのだが、弱点として聞こえて来た腹……常に固いダンジョンの岩に接触しており、巨大なマスネを裏返しにしない限り見えてこないからだ。
「ならば、魔力がどうとは言っていられない。ハンナ!炎魔術だ。そうすれば、熱を感知して俺の位置を悟られる事は無いはずだ!」
ドリアスが、偶然目の前に落ちていた毒付きの短剣を拾って再度特攻しようと考えていたので、同じ失敗をしないように炎魔術を使うように進言する。
ルーカスも炎魔術は使えるが、暫く一人でマスネの猛攻を耐えるために魔力を身体強化に使用しており、既に魔力は枯渇気味である為に灯火程度しか出せなくなっている。
その程度、見ればわかるドリアスが直接ハンナに依頼したのだ。
直後……ハンナは炎魔術を行使しようと術の起動に意識を集中したのだが、人の言葉を理解しているマスネが即座に対策し、無数の石礫を風魔法と共にハンナに叩き込む。
「キャア~……はぁ、はぁ、私の魔道具も……終わりです」
魔術に意識が向いていた分回避が遅れ、マスネは風魔法で攻撃速度を上げていたために直撃を受けて防御の魔道具が使用不可になったハンナ。
態々全員、マスネにも聞こえる位の声で追加報告までしてしまう。
「魔力も、あと回復一回分程度です」
その報告にルーカスとドリアスは顔を顰め、表情に動きがないマスネは内心笑い転げていた。
「まずいぞ。どうするか……」
「ルーカス様、ここは俺が……」
魔王ゴクドの思惑通り、最早目の前のマスネを迎撃できるほどの力は残っていないルーカス一行。
その状態を把握している三人の冒険者の内の一人、ドリアスは自ら囮になると進言するのだが、ドリアス程度が囮になっても何も変わらないので、三人で同時に攻撃する方がまだましだと判断するルーカス。
「ダメだ。三人で攻撃する方がまだ可能性がある!」
この判断も、もちろん少しでも自分の生存確率を上げる事だけを考えた結果だが、真意を勘違いしている二人は気力を振り絞る。
最早致命傷を受ければ、死亡する可能性が高い。
特にハンナは、自分自身が致命傷を受ければ回復術を行使すらできなくなるので、細心の注意を払いつつも必死で攻撃する。
目の前の小粒な最早取るに足らない三人、但し未だ毒が付与されている短剣を持っているドリアスだけには一応注意を払いつつ、甚振るように攻撃をするマスネ。
絶対的な強者であるレゼニアに強制的に拉致されて、不本意ながら相手をしているマスネにとってみれば、目の前の三人の人族は甚振る為だけの恰好の的としての存在に成り下がっていたのだ。
基本的な体力が違いすぎる為ルーカス達の動きは徐々に散漫になり、マスネはそろそろ始末しようと考える。
一体一体を攻撃するのも面倒臭くなってきたので、始めの方で行った体躯を活かして暴れまわる事による攻撃をする事にした。
マスネとしては、適当にこの場で少し暴れるだけで小物三人を始末できるのだから、最後の仕事とばかりに暴れる。
三人は、マスネの体躯の直撃は避けた様だが、飛び散る岩を全て避ける事は出来なかったようで、少なくないダメージを受けてよろよろと立ち上がっている。
唯一ハンナだけは、最後の魔力を振り絞って自らを回復させたようだが、完全回復には至っていないようだ。
逆に、完全に魔力を使い切った事によって、よろけている始末だ。
最早この状態では死を待つだけだろうと判断して、元の住処に戻るために出口を破壊しつつ出て行くマスネ。
出口と19階層に向かう階段を破壊する事で、19階層の魔獣が20階層に侵入可能になるのだ。
ダンジョンの守り主であるランドルマスタは死亡しているのでこのダンジョンには新たな魔獣は生まれないが、生き残りは多数いるので、そう時間をおかずに三人は死亡するだろうと判断して悠々とダンジョンの出口を目指すマスネだ。
「助かった……のか?」
「どうやらそのようだ。油断せず、俺達も慎重に出口に向かうぞ」
「……ハイ」
残された三人は、ルーカスの収納袋の奥に隠れていたポーションによって、辛うじて回復していたのだ。
ゴクドの指示によって巨大な蛇型のAランク魔獣、特殊個体であるマスネとの死闘を余儀なくされている。
そんな中、果敢に攻めて行ったAランク冒険者のドリアスが迎撃されて吹き飛ばされたのだ。
「ドリアスさん!」
視界・音共に隠密行動には今の状況は有利であると判断したドリアスが、決死の覚悟で、最後の短剣を手に持ってマスネの死角と思われるルーカスとは逆の位置に移動して攻撃しようとしたのだが、気が付けば全身を岩に叩きつけられていた。
何故か全身が激しく痛み、目の前には偶然ではあるのだがハンナがいると気が付いたドリアス。
丁度ハンナのいる所に吹き飛ばされたドリアスは、ハンナの回復術によって事なきを得た。
「すまない、ハンナ。クソ、あのデカブツ、何故俺の近接が……」
「あの、ドリアスさん。あの魔獣マスネは蛇型です。貴方の体温を感知していたのではないでしょうか?」
あっさりと正解に辿り着くハンナ。
ハッキリ言って、まさかの油断だ。
結果的にはルーカスだけではなく、ドリアスでさえも緊張の糸がいったん切れた事により、正確な判断が出来なくなっていたのだ。
「いくら視界が悪くても、マスネには関係がありません。常に視認されていると思って行動をしないと……」
既に防御の魔道具を持っているのはハンナのみ。それも最後の魔道具だ。
毒を付与した短剣も無くなり、ドリアスは自らの剣術によってのみ攻撃する事が出来る状態になってしまっている。
あの巨体、そして固そうな鱗を見るに、遠方から魔力で身体能力を底上げした上での何かしらを投げつける程度ではダメージは与えられそうにないのだ。
そんな事を考えているこの時にも、ルーカスに対して猛攻を仕掛けているマスネ。
どう見ても劣勢である為に、再度特攻するドリアス。
細心の注意を払いながらの攻撃であり流石に致命傷を受けるような事は無くなっているのだが、敵の攻撃に注意を払っている分、自らの攻撃力は激減しているので、未だマスネには傷一つついていない。
「皆さん、マスネは、お腹周辺は比較的柔らかいはずです!」
これのハンナの叫びも、魔獣であるマスネには理解できている。
誰もが知っている事であり、マスネ自身も口の中と腹に対する攻撃については気を付けている。
攻撃をしているルーカスとドリアスにしてみれば、ハンナの声でようやく少々冷静になれるのだが、弱点として聞こえて来た腹……常に固いダンジョンの岩に接触しており、巨大なマスネを裏返しにしない限り見えてこないからだ。
「ならば、魔力がどうとは言っていられない。ハンナ!炎魔術だ。そうすれば、熱を感知して俺の位置を悟られる事は無いはずだ!」
ドリアスが、偶然目の前に落ちていた毒付きの短剣を拾って再度特攻しようと考えていたので、同じ失敗をしないように炎魔術を使うように進言する。
ルーカスも炎魔術は使えるが、暫く一人でマスネの猛攻を耐えるために魔力を身体強化に使用しており、既に魔力は枯渇気味である為に灯火程度しか出せなくなっている。
その程度、見ればわかるドリアスが直接ハンナに依頼したのだ。
直後……ハンナは炎魔術を行使しようと術の起動に意識を集中したのだが、人の言葉を理解しているマスネが即座に対策し、無数の石礫を風魔法と共にハンナに叩き込む。
「キャア~……はぁ、はぁ、私の魔道具も……終わりです」
魔術に意識が向いていた分回避が遅れ、マスネは風魔法で攻撃速度を上げていたために直撃を受けて防御の魔道具が使用不可になったハンナ。
態々全員、マスネにも聞こえる位の声で追加報告までしてしまう。
「魔力も、あと回復一回分程度です」
その報告にルーカスとドリアスは顔を顰め、表情に動きがないマスネは内心笑い転げていた。
「まずいぞ。どうするか……」
「ルーカス様、ここは俺が……」
魔王ゴクドの思惑通り、最早目の前のマスネを迎撃できるほどの力は残っていないルーカス一行。
その状態を把握している三人の冒険者の内の一人、ドリアスは自ら囮になると進言するのだが、ドリアス程度が囮になっても何も変わらないので、三人で同時に攻撃する方がまだましだと判断するルーカス。
「ダメだ。三人で攻撃する方がまだ可能性がある!」
この判断も、もちろん少しでも自分の生存確率を上げる事だけを考えた結果だが、真意を勘違いしている二人は気力を振り絞る。
最早致命傷を受ければ、死亡する可能性が高い。
特にハンナは、自分自身が致命傷を受ければ回復術を行使すらできなくなるので、細心の注意を払いつつも必死で攻撃する。
目の前の小粒な最早取るに足らない三人、但し未だ毒が付与されている短剣を持っているドリアスだけには一応注意を払いつつ、甚振るように攻撃をするマスネ。
絶対的な強者であるレゼニアに強制的に拉致されて、不本意ながら相手をしているマスネにとってみれば、目の前の三人の人族は甚振る為だけの恰好の的としての存在に成り下がっていたのだ。
基本的な体力が違いすぎる為ルーカス達の動きは徐々に散漫になり、マスネはそろそろ始末しようと考える。
一体一体を攻撃するのも面倒臭くなってきたので、始めの方で行った体躯を活かして暴れまわる事による攻撃をする事にした。
マスネとしては、適当にこの場で少し暴れるだけで小物三人を始末できるのだから、最後の仕事とばかりに暴れる。
三人は、マスネの体躯の直撃は避けた様だが、飛び散る岩を全て避ける事は出来なかったようで、少なくないダメージを受けてよろよろと立ち上がっている。
唯一ハンナだけは、最後の魔力を振り絞って自らを回復させたようだが、完全回復には至っていないようだ。
逆に、完全に魔力を使い切った事によって、よろけている始末だ。
最早この状態では死を待つだけだろうと判断して、元の住処に戻るために出口を破壊しつつ出て行くマスネ。
出口と19階層に向かう階段を破壊する事で、19階層の魔獣が20階層に侵入可能になるのだ。
ダンジョンの守り主であるランドルマスタは死亡しているのでこのダンジョンには新たな魔獣は生まれないが、生き残りは多数いるので、そう時間をおかずに三人は死亡するだろうと判断して悠々とダンジョンの出口を目指すマスネだ。
「助かった……のか?」
「どうやらそのようだ。油断せず、俺達も慎重に出口に向かうぞ」
「……ハイ」
残された三人は、ルーカスの収納袋の奥に隠れていたポーションによって、辛うじて回復していたのだ。
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