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眷属レムリニア

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 四星四席と、最強の中でも最弱と言う位置にいるレゼニアだが、四星が魔族の中では別格の強さを誇るので、その中で最弱と言われても他の魔族からは畏怖の目で見られている事は間違いない。

 そのレゼニアが眷属としている魔獣の一体が鳥型の魔獣であり、Aランクに分類されているレムリニア。

 もちろん言葉を話せる特殊個体である為に、ギルド本部の分類であるAランクの枠からは大きく逸脱しており、ランクはA+と言った方が良いだろう。

 今回の任務を行うために、その気配を気取られないように遥か上空で滞空している眷属のレムリニアと、森の出口側付近でルーカス達を観察するために待ち構えているレムリニアの主であるレゼニアだ。

 一方で、森の17階層を進んでいるルーカスと共に行動しているアルフレドが使役しているBランクのリアントは、気配を気取られないように行動する魔獣であり、逆に言うと、気配を察知する能力に長けている。

 そのリアントの力で、上空の異常、そして森の先の異常を察知して主であるアルフレドに伝えたのだ。
 その異常な気配の二体には、自分は決して敵わないという情報と共に。

 このダンジョンの魔獣は魔王ゴクドの制御下にあるはずなのだが、ゴクドの制御が甘く、そもそも魔獣の味方であるはずのレゼニアの力に気圧されて姿を隠してしまっている。

 一切の襲撃を受けないまま慎重に進んでいるルーカス一行が、レゼニアが潜んでいるのであろう近辺に近づいた頃には、ルーカスからはアルフレドの姿は見えないほどに距離が離れている。

「ピーッ……」

 突然上空から声が聞こえ、ルーカス達三人は共に警戒態勢を取る。

……ドン……ドンドン……

 声が聞こえた瞬間に上空からの複数の衝撃波を受けて飛ばされる三人だが、準備していた防御系統の魔道具が自動起動したおかげで殆どダメージは無い。

 しかし、吹き飛ばされる前にいた場所は三か所程大穴が開いており、周囲には同行していたアルフレドの姿は見えない。

 元からアルフレドが使役しているリアントは三人には視認できていなかったので、そちらの存在の有無は気にする必要はないのだが、一応・・仲間であるAランクの男の姿がないために、一瞬だけ周囲に気を配る。
 生死を悠長に確認している時間はないからだ。

 いくら注意深く探してもアルフレドの姿や気配がないために、今回の襲撃で木端微塵になったと判断した。

 本来は防御の魔道具をアルフレドにも渡す予定だったのだが、本人がリアントの力を信頼していると言い切って拒否している以上、あの攻撃が直撃しては…と言う思いからだ。

 継続して遥か上空から衝撃波の追撃が来るが、魔道具によって強化されている身体能力と今迄の経験から、魔獣の動きでどのあたりに衝撃波が来るのかを予測し、華麗に躱しながら、ハンナの炎魔術と、ルーカスの雷魔術で反撃して見せた。

 その魔術の威力は相当なものではあるのだが、いかんせん遥か上空を相当な速度で移動している鳥型の魔獣であるレムリニアを捕らえる事は出来ない。

 一進一退の攻防が続くが、やはり上空にいる方が圧倒的に有利であり、ルーカス達に徐々に疲れが見え始める。

 ここに来るまでに完全に体力を温存した状態でこの有様なので、通常の攻略であれば即死は間違いなかっただろう。

 だが、ルーカス達がこの階層に来るまでの状況をこの階層で待ち伏せして監視しているレゼニアは知らないので、ルーカス達はかなり強くなっているのではと考えていた。

 やがてレムリニアもこの攻撃だけでは、ルーカス達の真の力を測る事ができないと踏んだのか、口から爆炎を吐き出して目眩しとすると、一気に森の中に急降下した。

 突然レムリニアが物理攻撃である衝撃波以外の攻撃、炎魔術を行使してきたために一瞬対応が遅れるルーカス達は、レムリニアの目論見通りにその姿を見失う。

「見失った。集まれ!」

 ルーカスの一声で、自然と三人が最中を合わせるように周囲を警戒する態勢を取る。

……ドン……ズザ~~~~~

 三人の内の一人、ハンナに向かって森の中からレムリニアが高速で突進して攻撃したのだが、ハンナも防御態勢を整えていた為に大きなダメージを受ける事がなかった。

 ハンナと共に、背中合わせにして立っていた二人を纏めて大きく動かす程の衝撃を与えるだけにとどまっていたのだ。

「「任せろ!」」

 ハンナが魔道具によって強化されている杖を両手で持ち、レムリニアの突進を受け止めた為、背後にいたルーカスとドリアスは同時にレムリニアに襲い掛かる。

 確実にレムリニアを仕留められるタイミングで襲い掛かった二人だが、突然周囲が発光して攻撃をする事が出来なかった。

「何だ!この鳥の魔術か?」
「落ち着けドリアス!防御態勢を取れ!」

 視界を奪われたために、急襲される事を想定して注意を促すルーカス。

「ピィ~」

 魔力を大量に使って防御力を上げている中、上空から忌々しい鳥の声が聞こえて来た。

 程なくして視力が戻ると、声が聞こえた通りに遥か上空にレムリニアは存在し、やがて遠方に飛び去って行った。

「何だったんだ?」

 思わず呟くルーカス。

 実はあのタイミングでの攻撃は素晴らしい連携になっており、あのまま何もしなければ、なんとAランクの特殊個体であるレムリニアをルーカス達は始末できていたのだ。

 以前ダンジョンの中でルーカスが、たとえAランクの個体であるランドルに対しても、準備さえ整っていれば仕留められると言っていたのは嘘ではなかった。

 今回は眷属の死を良しとしないレゼニアが、レムリニアの命を救うために強力な光を出したのだ。

「やっぱりあいつら、相当強くなっている?でも、僕の眷属であるレムリニアを仕留められる程の実力があるのは証明された、かな?」

 やはり自信がないレゼニアだが、任務は達成したので、自身もこの階層から消えるように去って行く。

 その攻防をかなり離れた位置から確認していたアルフレド。
 リアントから強大な気配二つは消え去ったと教えて貰ったために、今後どのように行動するかを考えつつ、ルーカス達がいる方に向かって進んでいた。

 一応はルーカス達の背後を警戒していたと言えなくもないが、既に視認できない程距離が離れている位置にいたのだから、その事について指摘されると色々面倒だと思っていたアルフレド。

 進路上の安全を確保するべくリアントは先行して行動している為、既にルーカス達の声が聞こえるほどに近接している。

 そこにリアントを介して、ルーカス達の話が聞こえてしまったアルフレド。

「で、アルフレドの遺品は探しますか、ルーカス様」
「あんな気持ちの悪い男の遺品、私は探したくないわ」
「そうだな、ギルドカードさえ見つかれば、脱退処理は楽だから、それだけ探そう」

 最早【勇者の館】には自分の場所は無いと確信し、リアントにギルドカードを適当に置くように指示してその場を去って行く。
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