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ミスクの追放(1)

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 ボス部屋を何とか攻略し、体力回復のポーションを飲みながら階段を下って行くロイエス一行。

「ふぃー、えれー目にあったな。二階層のボスであそこまできついんじゃ、三階層に来られる冒険者が殆どいないのも理解できるぜ」

「まったくです。今回はバミアの攻撃が何とか当たったから良かったものの、あの攻撃を受け続ける事になっていたと考えるとぞっとしますね」

 体力も戻り、会話も出来るほどになっているロイエスパーティー。

 その後方を少し離れた位置を保ちつつ追っているミスクに関しては、二階層のボスの攻撃が当たっていようがいまいが最早関係ないので、ついてくる気配だけに気を配ってズンズン先に進んでいる。

 ミスクとしてはパーティーの近くに移動したいと思っているのだが、何故か近づこうとすると足が重くなって近づけなかったのだ。

 当初のミスクの予想ではロイエス一行は階段を下った所で休憩をとると思っていたのだが、ロペスが出したポーションによって完全回復した四人は休憩を取る事無く先に進んでいる状況だ。

 ミスクとしても無駄に時間をかけずに依頼が達成できれば母の元に向かえるのが早くなると言う思いが有るので、嬉しくはある。

 そんなミスクの先を歩いているロイエスパーティーだが、もちろん若干の距離が開いているので、先行しているロイエスパーティーには苛烈な攻撃が連続して繰り広げられている中でも、余波も含めてミスクには一切の被害はない。

 イジスはこのダンジョン<水の都>の変更を行ってはおらず、攻撃に関する調整だけをイジス配下のダンジョンマスターが指示を受けて行っていた。

 苛烈な攻撃ではあるのだが、流石は全員が称号を得る可能性が高いと言われている四人のロイエスパーティー。

 連携は一切ないのだが、個々人がそれぞれの攻撃を見事に迎撃して見せていた。

「おっ、あったぜ!あれだ!!」

 当然精神的な疲労はあるのだが、貴重な体力回復薬を摂取して万全に近い状態を維持しているロイエス一行は、目的の鉱石を発見したようだ。

 依頼書に描かれている鉱石の絵と少し先に転がっている鉱石を見比べており、その姿を見た残りの三人も安堵の表情を浮かべる。

「やっとですか。これならこの鉱石が貴重品に位置付けられるのも頷けますね」

「同意」

「本当ですね。ではさっさと回収して帰りましょう」

 その三人のセリフを聞いたロイエスは、珍しく事前にメンバー全員に情報を伝えた。

「俺も早く回収したい所だが、それは難しそうだぜ。なんといっても、この周辺はマジックフィッシュの巣窟らしいからな」

 初めて聞いた魔物の名前に反応したのは、<賢者>を目指しているバウサーだ。

「そのマジックフィッシュと言うのは何ですかね?」

 この場所に到達した時点で魔物からの攻撃を受けなくなっていたロイエスパーティーだが、周囲を警戒しつつ、ロイエスの情報を聞き逃さないようにしている。

「何でも、この鉱石が発している魔力を追い続けて攻撃してくる厄介な魚の魔物だ。今転がっている鉱石を地面から拾い上げた途端に、手にしている者に攻撃をし続けるらしい。だがな、こいつは群れる習性がある。わかるか?」

 群れる魔物という事は、一度攻撃をされてしまうと連続して攻撃を受け続ける事を意味している。

 パーティーで攻略する場合には、全員がこの鉱石を持てば全員が攻撃される事になってしまうと思われているが、真実は異なる。

 ロイエスはギルドマスターであり師でもあるホノカから、このダンジョンの詳細情報を仕入れていた。

 その情報とは、一人が鉱石を持って数秒その場にいるだけで、その者だけがマジックフィッシュの群れの攻撃対象として認識され、対象が死亡しない限り他の人物は攻撃対象にならないと言う物だ。

 一旦攻撃対象になってしまった者は、たとえ鉱石を手放したとしても最早手遅れになる。

 群れの全てを迎撃できる力を持っていれば良いのだが、そこまでの力を持っている冒険者は多くない。

 これも<水の都>の以前のダンジョンマスターが、パーティー内部の不協和音を最大限に生かそうとした最悪の仕様なのだが、逆に言えば誰か一人を犠牲にすれば貴重な鉱石を無事に入手できるという事だ。

 この<水の都>の三階層の攻略難易度は異常に高いと認識されているので、この真の情報を知り得ているのは今の段階ではギルドマスターのホノカと、その弟子であるロイエスだけ。

 その情報の中にあるパーティーメンバーを一人犠牲にしなくてはならないと言う条件については、ロイエスパーティーには当てはまらない。

 もとより囮として連れてきているミスクがいるのだから、むしろおあつらえ向きの状況なのだ。

 ミスクに聞こえないように、パーティーメンバーに全ての事情を今更ではあるが話すロイエス。

 相変わらず互いの信頼関係と言う物が全くないパーティーのままである。
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