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ダンジョン攻略再開(1)
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ダンジョンを攻略した者……つまりは魔族になっている者達は、自分の安全のために攻略者である事を秘匿して、この世界で人族として生活しているに違いない。
そんな俺の胸中を知らずに、ロイエスは場所を変えると勇者パーティー時代の話をしてくれるし、もちろん他のメンバーも同席して、酒を飲みつつの歓迎会?をしてくれているのだ。
「そんでよ~、俺も師匠一行の強さには全くついて行けなくてよ。これなら初の完全攻略が見えて来るかと思ったんだがな~。突然引き返したんだよ。訳が分からねーよ」
どうやら魔王が管理しているとされるダンジョン攻略を順調に行っているにも拘らず、勇者パーティーは撤退したようだ。
ロイエスの知らないところで勇者パーティーの他のメンバーが疲弊していた可能性も捨てきれないが……真の理由は当人達にしかわからないだろうな。
「で、地上に出て暫くしてから再度攻略かと思うだろ?でもな、数日経って師匠が言うにはよ~、いつの間にか魔王は始末したっていうんだぜ?酷いと思わねーか?」
どうやら撤退も作戦の内であったようで、事の詳細を知らされなかった事に不満があるようだ。
そんな姿を見て、ロイエスパーティーの一人であるバウサーがこうアドバイスしてくれた。
「イジス、ロイエスの愚痴はいつもの事です。軽く聞き流しておけるようにしないと、酔っぱらうと毎回同じ話ですからね」
右も左も分からないパーティーについて、少しずつ教えてくれたのだ。
「よし、そんじゃ~行くか。ゆっくり休めたしな」
過去の思い出はここまでにして、ロイエスのその声を聞いて少しでも魔力の消費を抑えるために結界の魔道具をすぐに止めてバッグにしまう。
実は俺、このパーティーにいれば、その内どこかのダンジョンを攻略できるんじゃないかと思っている。
そうすれば、俺のこの知識が正しいかどうかの検証も出来るはずだと期待している。
残念なことに、俺の知る限り他のパーティーでは攻略は夢のまた夢、当然俺一人では浅い層でも死亡する可能性が高い……いや、確実にあの世行だろうな。
そんな思いで再びロイエス達の後ろを警戒しつつ、ついて行く。……しかし熱い。
そしてその日の昼過ぎ……正確な時間は分からないが、俺位の荷物持ちになるとダンジョンの中でもある程度の時間は分かるのだが、目的の五階層分攻略の内、三階層目を目前にしたところで精根尽き果てた一行が倒れている。
実際に攻略を開始してからわずか数時間。
歴代最少攻略時間更新と言う程、短い時間しか攻略できなかったのだ。
それ程攻略難易度は劇的に上昇し、その疲労によって結界の魔道具の範囲内で既に意識を飛ばしている。
そして残された元気な俺。
結界の外にはかなり強そうな雰囲気の魔物が数体おり、結界に攻撃を仕掛けている。
かなりの強度を持つ結界だが、補修が必要なほどのダメージを受けると再び多量の魔力を消費する。
すでに充填されている魔力は残り半分に近づいている上に、目も前の魔物による攻撃で、今尚目に見えて減少しているのだが、今この場でロイエス達を起こしたとしても体力や魔力が一切回復していない状態であるために、何かをする事は出来ない。
そうなると、取れる手段は一つ。
ロイエス達が回復した上で目覚めるのを待つしかないのだ。
戦闘力がない俺が、一人で目の前の魔物の恐怖におびえながらパーティーメンバーの目覚めを待つ。
これは力がない俺には中々に辛い作業ではあるのだが、数時間経過後に漸くロイエス達の目が覚めた。
「目覚めたか、ロイエス。起きて早々悪いが、早めにこいつらを何とかしてもらえないか?」
明らかに魔道具の魔力の残りが少なくなっているので、原因となっている目の前の魔物の始末を依頼する。
「まて、まだ少々魔力が戻っていない……おい!」
少々ボーッとしていたロイエスだが、俺の意図を正確にくみ取ってくれたようだ。
彼の目は、俺達を中心に少々狭い範囲を囲うように置かれている魔道具に向けられている。
この魔道具を使用しているのは俺だが、所有者であるロイエスも状態は即把握出来た様なので、これならば説明の必要はないだろうな。
……と思っていたのだが、ロイエスの口からは思いもよらない言葉が聞こえてきた。
「お前!前回の休憩時には半分以上の魔力があったはずだ。それを……今はもう二割切っているじゃねーか!ボーっと何してやがった!」
その言葉を聞いて、バミア、ロペス、バウサーの三人の厳しい視線が俺に向く。
「いや、待ってくれ。俺はなるべく魔力の消費が無いように徐々に範囲を狭めていった。これ以外に俺にできる事なんてないだろう?」
「あ~、ふざけんな!俺達をすぐに起こせばいいだろうが!」
これにはさすがに俺も頭に来た。
「そんな事できる訳無いだろうが!お前らは魔力も体力もなく、倒れたんだよ。そんな状態のお前らを起こして何が出来るんだ!少しでも早く回復させるために、この恐怖を俺一人で耐えたんだ!」
そんな俺の胸中を知らずに、ロイエスは場所を変えると勇者パーティー時代の話をしてくれるし、もちろん他のメンバーも同席して、酒を飲みつつの歓迎会?をしてくれているのだ。
「そんでよ~、俺も師匠一行の強さには全くついて行けなくてよ。これなら初の完全攻略が見えて来るかと思ったんだがな~。突然引き返したんだよ。訳が分からねーよ」
どうやら魔王が管理しているとされるダンジョン攻略を順調に行っているにも拘らず、勇者パーティーは撤退したようだ。
ロイエスの知らないところで勇者パーティーの他のメンバーが疲弊していた可能性も捨てきれないが……真の理由は当人達にしかわからないだろうな。
「で、地上に出て暫くしてから再度攻略かと思うだろ?でもな、数日経って師匠が言うにはよ~、いつの間にか魔王は始末したっていうんだぜ?酷いと思わねーか?」
どうやら撤退も作戦の内であったようで、事の詳細を知らされなかった事に不満があるようだ。
そんな姿を見て、ロイエスパーティーの一人であるバウサーがこうアドバイスしてくれた。
「イジス、ロイエスの愚痴はいつもの事です。軽く聞き流しておけるようにしないと、酔っぱらうと毎回同じ話ですからね」
右も左も分からないパーティーについて、少しずつ教えてくれたのだ。
「よし、そんじゃ~行くか。ゆっくり休めたしな」
過去の思い出はここまでにして、ロイエスのその声を聞いて少しでも魔力の消費を抑えるために結界の魔道具をすぐに止めてバッグにしまう。
実は俺、このパーティーにいれば、その内どこかのダンジョンを攻略できるんじゃないかと思っている。
そうすれば、俺のこの知識が正しいかどうかの検証も出来るはずだと期待している。
残念なことに、俺の知る限り他のパーティーでは攻略は夢のまた夢、当然俺一人では浅い層でも死亡する可能性が高い……いや、確実にあの世行だろうな。
そんな思いで再びロイエス達の後ろを警戒しつつ、ついて行く。……しかし熱い。
そしてその日の昼過ぎ……正確な時間は分からないが、俺位の荷物持ちになるとダンジョンの中でもある程度の時間は分かるのだが、目的の五階層分攻略の内、三階層目を目前にしたところで精根尽き果てた一行が倒れている。
実際に攻略を開始してからわずか数時間。
歴代最少攻略時間更新と言う程、短い時間しか攻略できなかったのだ。
それ程攻略難易度は劇的に上昇し、その疲労によって結界の魔道具の範囲内で既に意識を飛ばしている。
そして残された元気な俺。
結界の外にはかなり強そうな雰囲気の魔物が数体おり、結界に攻撃を仕掛けている。
かなりの強度を持つ結界だが、補修が必要なほどのダメージを受けると再び多量の魔力を消費する。
すでに充填されている魔力は残り半分に近づいている上に、目も前の魔物による攻撃で、今尚目に見えて減少しているのだが、今この場でロイエス達を起こしたとしても体力や魔力が一切回復していない状態であるために、何かをする事は出来ない。
そうなると、取れる手段は一つ。
ロイエス達が回復した上で目覚めるのを待つしかないのだ。
戦闘力がない俺が、一人で目の前の魔物の恐怖におびえながらパーティーメンバーの目覚めを待つ。
これは力がない俺には中々に辛い作業ではあるのだが、数時間経過後に漸くロイエス達の目が覚めた。
「目覚めたか、ロイエス。起きて早々悪いが、早めにこいつらを何とかしてもらえないか?」
明らかに魔道具の魔力の残りが少なくなっているので、原因となっている目の前の魔物の始末を依頼する。
「まて、まだ少々魔力が戻っていない……おい!」
少々ボーッとしていたロイエスだが、俺の意図を正確にくみ取ってくれたようだ。
彼の目は、俺達を中心に少々狭い範囲を囲うように置かれている魔道具に向けられている。
この魔道具を使用しているのは俺だが、所有者であるロイエスも状態は即把握出来た様なので、これならば説明の必要はないだろうな。
……と思っていたのだが、ロイエスの口からは思いもよらない言葉が聞こえてきた。
「お前!前回の休憩時には半分以上の魔力があったはずだ。それを……今はもう二割切っているじゃねーか!ボーっと何してやがった!」
その言葉を聞いて、バミア、ロペス、バウサーの三人の厳しい視線が俺に向く。
「いや、待ってくれ。俺はなるべく魔力の消費が無いように徐々に範囲を狭めていった。これ以外に俺にできる事なんてないだろう?」
「あ~、ふざけんな!俺達をすぐに起こせばいいだろうが!」
これにはさすがに俺も頭に来た。
「そんな事できる訳無いだろうが!お前らは魔力も体力もなく、倒れたんだよ。そんな状態のお前らを起こして何が出来るんだ!少しでも早く回復させるために、この恐怖を俺一人で耐えたんだ!」
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