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ロイエスパーティーとの出会い

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 俺、荷物持ちのイジス。
 このダンジョンが蔓延っている世界で、恐ろしい事に何故か殆ど記憶がない。

 気が付いた時には、この町の近くの草原にいた。

 その直前の記憶すらないのだが、不思議と焦る事は無かった。

 この世界の事についての知識だけはかろうじてあったから、仕事を選ばなければ食いっぱぐれる事は無いと理解できていたからだろうか?

 考えても仕方がない事は考えずに向かった先は、冒険者ギルド。

 もちろん戦闘経験……あるのかもしれないが、そんな記憶が一切ない俺は、比較的安全なサポート系の仕事をする事にした。

 攻略を行っている冒険者のサポートをする立場である為に、魔物に直接襲われる可能性は格段に減る。

 その代わり実入りは少ないが、こればかりは仕方がないだろう。

 何故かダンジョンについての知識もあったので、当初サポートとしては行ったパーティーでも難なく仕事をこなす事が出来ていた。

 そこで気が付いたのだが、俺は意外と力があるらしい。

 全員分の荷物を持っても少しも重く感じない為に、動きに変化が起きないのだ。

 どうやら他のサポーターと比較して有り得ないほどの荷物を持って移動できるらしく、瞬く間にギルドの噂になっていたのだが、正直悪い気はしない。

 本音では嬉しい反面、目立つと碌な事が無いと何故か本能が訴えており、何とも言えない感情に困惑していた所、魔王討伐パーティーに所属していた経験のあるロイエス率いるパーティーからの引き抜きがあったのだ。

 結構な額を提示していたらしく、当時のパーティーの誰一人として俺に何の相談もなく、いつの間にかロイエスパーティーに移籍になっていた。

 本心を言うとかなり寂しかった。
 具体的な金額は知らないが、金で売られたからだ。

 せめて一言あってもよさそうなものなのだが、ある日ギルドに向かったら俺のパーティーは誰一人としておらずに、代わりにロイエスパーティーが待ち構えていたからな。

 ギルドの受付でパーティー移籍の処理がなされている事を確認した俺は、愕然としたのを覚えている。

 その当時のパーティーメンバーは、金を受け取るとさっさとこの町を後にしたらしい。

 そんな俺を見て、パーティーリーダーのロイエスが軽く話しかけてくれたことは今でも覚えている。

「よう、今日から俺達がお前のパーティーメンバーだ。宜しくな」

……これが俺とロイエス達との出会い。

 その後、ロイエス達からいくつかの質問をされた。

 荷物持ちとして優秀なのは知っているという事で、この世界の、特にダンジョンの知識について質問されたのだ。

「今の所、この世界のどのダンジョンも制覇された事は無いと言われている。俺の師匠である<拳者>のホノカですら踏破した経験が無いからな。で、質問だ。仮にダンジョンが攻略できたとしたら、どうなると思う?」

「確か……そのダンジョンを完全に制御できるとか?」

 記憶の片隅の知識を言ってみると、どうやらお気に召した様だ。

「そうだ!その通りだ。誰も実証した事は無いが、俺もそう思っている」

 実は俺、もう少し知識はあったのだが、あえてここでは言わなかった。
 なぜならば……

 攻略後にダンジョンを制御できる事の他に、その制御を出来るに堪え得る肉体が必要になるので、魔族に進化すると言う知識があったからだ。

 それともう一つ。ダンジョンの命とも言えるダンジョンコア。

 これを持って移動して魔族になった魔力を注入すれば、好きな場所にダンジョンを作る事も出来ると知っていた。

 但し元の場所から移動するには相当な力を必要とし、ダンジョンコアが持っている力の半分程度の力を失うようなのだが。

 と、こんな事を言っては、俺の命が危ないと本能が警告していた。

 このロイエス一行が撃破したと言われている魔王も元は人間であった可能性があり、暗に人族殺しと言ってしまう事になるからだ。

 それに何故こんな事を知っているのかと詰め寄られる事は間違いなく、それに対する答えを持ち合わせていないのだが、ロイエス達はそうは思わないだろう。

 世間では噂すらないこの知識を披露してしまえば、これ以上の知識を絞り出そうとするに違いないのだが、本当にこれ以上は分からないし、何故こんな知識を持っているのかもわからないのだ。

 だけど、俺の中のこの知識は何故か本当であると言う確信がある。

 この世界は新たなダンジョンが時折生まれるが、生まれたてのダンジョンは非常に脆いはず。

 しかし未だに誰も踏破者が出ないという事は……実は元は人間であるが故に相当な知識があり、その人間とは当然ダンジョン攻略をしようとしている冒険者という立場だ。

 となれば、どのように攻略されるかも熟知しているので、対策済みなのだろう。
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