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慰安旅行(7)

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 大概No.10ツェーンがとぼけた表情をしており、他のナンバーズが呆れた目を向けている時は、ナンバーズですら驚く位の何かをしでかしている。

 仕方がないと言わんばかりの仕草でNo.3ドライの発言を引き継いだNo.5フュンフ

「ジトロ様、拠点からアンノウンゼロでも中継なしで転移できる場所に丁度良いダンジョンを見つけました。階層は50階層なのですが、あの……」

 やはり最後まで話す事ができない様子のNo.5フュンフ

 二人のナンバーズに見られているNo.10ツェーンは、いつもの感じで飄々と話し始める。

 この時点で、ろくでもない話は確定している。

「えっと、ジトロ様~。私達が見つけたダンジョンなのですが、実は魔獣は大型魔獣が多くて、中もとっても広かったのですっ!!それで、私良い事を思いついちゃったんです~。前に、森を平地に変える事ができた“炸裂玉”、その改良版を使える程広い場所だし、きっとダンジョンの外に影響は出ないって!」

 OH、結果が見えてきたよ。大体、平地に変える事ができた・・・ってなんだよ。

 その時点でおかしいぞ。事実を誤認している。

「二人にも、ナップルさんとの最高傑作を見て貰おうと思って、5階層で使ってみました~!!丁度5階層は森でしたので!!」

 No.3ドライNo.5フュンフは、その話を聞いている最中に疲れ切った表情をしている。

 あの戦闘大好き人間のNo.3ドライにここまでダメージを与えるとは、恐るべしNo.10ツェーン

「その結果~、聞いてくださいジトロ様。ナップルさんとの最高傑作の実力が証明されましたっ!!なんと、5階層の中央付近で使ってみたのですが~、5階層全て、一面平原にする事に成功しました~。これは快挙ですよ、快挙~」

 何が快挙だ、このド天然が!

 俺は恐る恐る、既に魂が抜けきっているような遠い目をしている二人に確認する。

「なぁ、No.3ドライNo.5フュンフ、その炸裂玉、No.10ツェーンが使う前に教えて貰ったか?」

 力なく首を横に振る二人。
 やはり……このド天然、何も言わずに突然“炸裂玉(改)”をブチかましやがった。

「えっ、でもジトロ様~、事前に教えてしまったら、驚きも半減してしまうじゃないですか~」

 本当に……
 いや、これ以上言っても無駄だろうな。それほどの被害でも、俺達ならば怪我を負う事もないし、問題ないという事にしておこう。

 でないと、なぜかこちらにダメージが来るからな。

「その結果、5階層の地形を変えて、魔獣も全て滅ぼした……と言う事だよな?」
「そうなんです!これは工房ナップルの革命、冒険者達への超目玉商品ですよ~」

 何とかしてほしくて、この場にいる他のナンバーズを見るが、諦めの表情だ。

 ここは俺が伝えるしかないな。

「えっとな、No.10ツェーン。その魔道具は確かに素晴らしいかもしれないが、冒険者に売るのは止めておいた方が良いぞ」
「えっ?何故でしょうか~?」

 こいつはやっぱりわかっていなかったか。

「ナップルも販売するのに賛成していたか?」
「いいえ~、まだテストが終わっていないので、その話はしていませんが~」

 良かった。まだナップルは真面である可能性が残っている。

「あのな、その魔道具を普通の冒険者が使ったとしよう。ダンジョンの地形を一気に変える程の力が出る魔道具。そんな物を使った冒険者が無事でいられると思うか?」

 あっ、しまった!みたいな顔をするな!

「確かにそうかもしれません。私の周りが全員大丈夫なので、皆さんがそうかと思い込んでしまいました~。流石ですジトロ様」

 よし、これで工房ナップルの評判を劣悪な物にせずに済んだ。

 既にラグロ王国から移住してバルジーニさんとディスポと共にバイチ帝国に店を構える準備をしているナップル。

 バイチ帝国で初めて販売した魔道具が、使用者をも巻き込む無差別殺人魔道具と言われずに済んだのは良かっただろう。

 いや、しかしNo.10ツェーンに色々理解させるのは疲れる。

 そんな俺を見かねたのか、No.1アインスが俺の話を引き継いだ。

「最終的に5階層は大ダメージを負っている事はわかりました。しかしダンジョンであれば時間と共に修復されるでしょう。それ以外は問題がないという事で良いですか?」
「はい、その通りです」

 俺とNo.10ツェーンの会話を聞いて、すっかり疲れてしまったNo.3ドライの代わりにNo.5フュンフが答えてくれた。

「ふ~。良し、じゃあこの国の、いや、この町…なんて言ったっけ?ペトロス町か?この町の領主と門番、そしてあのふざけた連中をとりあえず5階層に移動させておいてくれ。もちろんアンノウンとしてだぞ」

 幸か不幸か、今の5階層は魔獣が一切いない階層になっている。

 余計な警戒をする必要はなく、あいつらに躾をできる良い環境だ。決してNo.10ツェーンを褒めているわけではないぞ。

 既にNo.10ツェーンを含めたナンバーズの三人は、クズ共の捕縛に向かっている。

 いや、きっと既に捕縛は終わっているだろうな。

「じゃあNo.1アインス、俺達も向かうか」
「承知いたしました」

 こうして、No.10ツェーンが破壊しまくったダンジョン入り口に転移し、即5階層に移動する。もちろんアンノウンとしてだ。

 ダンジョンの中に直接転移する事はなぜかできないので、仕方がない。

「首領がお見えだ。その薄汚い顔を下げろクズ共」

 現場に着くと、No.3ドライが豪華な服を着ている一人の頭を踏みつけている。

 あいつがこの町の領主だろうな。No.3ドライは、さっきのNo.10ツェーンの対応でのストレスもあってか、いつも以上に厳しい対応をしている。

 クズ共は既にダンジョンの入り口までは“転移”で連れてこられているはずだ。
この時点で、少なくとも俺達の最低限の力は理解している事だろう。

 そして、その後ろで鎧を着ていながら震えているのが門番と、ラフな格好をしているのが馬車にいた一行だな。

「罪もない子供達を奴隷にして、観光客の資産を盗むとはどうしようもない奴らだな。それも、ようやく到着して入国の手続きの列に並んでいる最中にそんな行動を起こすとは。門番もグル、領主もグルか。シーラス王国のペトロスの町は観光で有名だったのだが、ここまで落ちぶれているとは知らなかった」
「待ってください。覆面でお顔はわかりませんが、あなた様はなぜそのような言い掛かりを?」
「そうです。我らはまっとうな商人。奴隷はもとより、人の資産を奪うなど有り得ない!濡れ衣は止めて頂きたい」

 頭を踏みついけられている領主は何も言える状態ではないが、門番と馬車にいた一人が誤解だと宣う。

 これは想定されているパターンだな。

No.1アインス、アレを出してやれ」
「承知いたしました」

 そう言いつつ、破壊しておいた奴隷の首輪を奴らに投げつけるNo.1アインスだ。
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