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フェルモンドとラグロ王国の冒険者(2)
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俺は工房ナップルに向かう。
程なくして到着するも、バイチ帝国で大会が開催されている影響か珍しく冒険者の列はなく、どこかで見た事のある冒険者四人と、奥からバルジーニさんとナップルが出てきた。
「あれ、フェルモンドギルドマスターじゃないですか?」
バルジーニさんとナップルが声を発する前に、どこかで見た冒険者の内の一人が声をかけてきた。
俺は既に35歳。
最近は色々な事を即思い出すという事ができなくなっており、少しだけ考え込む。
「お!思い出したぞ。お前ら、ある日突然依頼達成率が急上昇したパーティーだな」
そう、ここにいたのは工房ナップルの魔道具を購入し、使いこなしているパーティーだった。
こいつらのおかげで、ウチのギルド依頼達成率も突然上昇し、一躍有名になった。
ある日から突然依頼達成率が上昇したので、その原因の調査を命じた結果、こいつらの事が分かったんだったな。
それで、お礼と称して特別にギルドから報奨を出したはずだ。
「おうフェルモンド。突然どうしたんだ?ワシに何か用か?それともナップルか?」
「バルジーニさん、元気そうで何よりだ。実は、俺がこんな事を言っては申し訳ないんだが、このラグロ王国、俺には合わないんだ。今回も、宰相自ら率先してバイチ帝国に粉かけて、挙句に、あのクズはバリッジとか言う極悪組織の一員だったと言うから質が悪い。それで、急なのだが、俺はこの国を出る事にした。既にバイチ帝国側とも話がついているんだ」
俺は申し訳なくなる。
この国、この工房通りで店を構えてくれている鍛冶士に、ある意味国に努めているような立場の俺が、国を貶して去って行くんだからな。
「それとナップル。お前の扱いは聞いていた。助ける事ができなくて済まなかった」
ナップルに向かい、今更ではあるが謝罪し、頭を下げさせてもらった。
この場にいる冒険者、ナップル、バルジーニさん、全員からの罵倒も覚悟していたが、誰からも罵倒などはなかった。
「おいフェルモンド、頭上げろ。お前は今まで良くやった。むしろワシはお前の決断が遅かったと思っている位だ」
「フェルモンドさん、私の事を気にかけて頂いて、ありがとうございます。私は大丈夫です。今は素敵な仲間達に囲われて、とっても幸せですから!生意気を言うようですが、どうかフェルモンドさんも後悔の無いように生きてください!」
バルジーニさんとナップルは、俺の事を気遣ってくれる始末だ。
残りは冒険者パーティーだ。
彼女達からすると、俺はある意味上司にあたる。
その上司が、職場を放棄して逃げます……と言っているのだ。きっと軽蔑しているに違いない。
「フェルモンドギルドマスター、いえ、もうフェルモンドさんですかね?実は私達もナップルさんの話は、つい最近知ったのです。そんな事をする人たちが住むこの場所、このまま拠点にしていいのかなって、皆で話していたんです」
「フェルモンドさんの話、本当ですか?バリッジとか言う組織の件、そしてバイチ帝国での……何かしでかしたのですよね?」
「ああ、向こうの宰相と騎士隊長を、公衆の面前で殺害しようとしたと報告を受けている」
「うわ~、最悪。ねえジュリア、私達も決断の時じゃないの?」
「私もメリンダに賛成。ナップルさん、さっきも確認したけど、この店もバイチ帝国にシフトして行くって本当よね?」
俺の知らないところでこの工房ナップルもラグロ王国を見限り、どうやら同じバイチ帝国で店を構えていくようだ。
「はい。私の魔道具を購入してくださった人に説明が終わり次第、この工房ナップルもバイチ帝国に移ります!!」
「「「「決めた。私達もバイチ帝国に行くわ!!!」」」」
なんだか別れの挨拶に来たつもりが、バイチ帝国への勧誘?になったような気がしないでもないが、結果は良かったのか?
有能な冒険者パーティーや鍛冶士が、このラグロ王国で腐っていくのは見たくなかったからな。
「よし、それじゃあ俺はもう行くぞ。先に行っているから、お前らも気を付けて来いよ!」
ここからバイチ帝国までは、馬車で二週間以上かかる。
この移動中に、自分の強さを改めて見つめ直すいい機会だと思って、再び修練でもしようかと思っている。
何と言っても、最大魔力レベルの概念が覆されたのだ。
今の俺は魔力レベル9。
そして、つい先日までの最強と言われている魔力レベルは10だった。
既になかなかレベルを上げる事ができなくなっている俺は、ほぼ最強だと言う事で甘ったれていたのだ。
だが突き付けられた現実は、最大魔力レベルは10などではなかったという事実。
宰相カードナーが引き連れて行った冒険者、名前はピンファイとか言うらしいが、俺は聞いたことがないので、恐らくバリッジとか言う組織から調達した冒険者だろうが、その男の魔力レベルが42だと言うのだ。
そのレベルと比較すると、俺はまるで初心者冒険者レベル以下だ。
そんなレベルで満足していた自分が恥ずかしくなり、再びこの身を鍛える事を決心した。
今までの経験から、魔力レベルを上げる一番手っ取り早い方法は、自分と同格以上の魔獣を倒す事だ。
同格であればかなりの数を倒さなくては魔力レベルは上がらないが、格上であればある程、魔力レベルは上がりやすかった。
もう一つ、ただひたすら魔力を使用した術を繰り返す事。
これは、同格の魔獣を倒すよりもかなり上りが悪い。
俺もレベルが低い段階で、魔獣と戦わずに魔力レベルを安全に上げるべく試したことがあるのだが、数年かかってレベルは1しか上がらなかった。
その間は、両親の蓄えで食わせてもらっていたドラ息子だ。
だとすると、俺の選択肢は一つ。
格上の魔獣の討伐になるのだが、魔力レベル10の魔獣ですら発見するのは難しい。
ホイホイその辺りで発見できる様ならば、今の人族は滅んでいるだろうからな。
そう考えると、あのピンファイとか言う男の魔力レベル42。
相当高い魔獣がこの世に存在しているか、俺の知らない第三の方法で魔力レベルを上げたか。
だが、今は旅の途中。
襲ってくる魔力レベル5程度の魔獣は、護衛の依頼を受けて同行している冒険者が対処しているし、このレベルの魔獣を狩ったとしても、俺の魔力レベルの糧にはならない。
その為、ただひたすらに剣を振って体の動きを確かめ、身体強化に魔力を使い続ける事により、少しでも魔力レベルを上げる努力を行う他ないのだ。
正直に言うと、身体強化を使い続けているだけでかなり辛い。
魔力レベル9の魔力全てを身体強化に移行しているのだが、体全体を一様に強化しているわけではない。
たとえば、緊急退避の際には足の部分に魔力を多めに割り当てる。
こう言った細かい技術があればこそ、俺は今まで生きてこられたのだ。
他の冒険者達がどのように魔力を使用しているかは知らないが、これは俺自身が必死で修練して手に入れた力。
この力を基本にして、必ず魔力レベル10を超えて見せる!
程なくして到着するも、バイチ帝国で大会が開催されている影響か珍しく冒険者の列はなく、どこかで見た事のある冒険者四人と、奥からバルジーニさんとナップルが出てきた。
「あれ、フェルモンドギルドマスターじゃないですか?」
バルジーニさんとナップルが声を発する前に、どこかで見た冒険者の内の一人が声をかけてきた。
俺は既に35歳。
最近は色々な事を即思い出すという事ができなくなっており、少しだけ考え込む。
「お!思い出したぞ。お前ら、ある日突然依頼達成率が急上昇したパーティーだな」
そう、ここにいたのは工房ナップルの魔道具を購入し、使いこなしているパーティーだった。
こいつらのおかげで、ウチのギルド依頼達成率も突然上昇し、一躍有名になった。
ある日から突然依頼達成率が上昇したので、その原因の調査を命じた結果、こいつらの事が分かったんだったな。
それで、お礼と称して特別にギルドから報奨を出したはずだ。
「おうフェルモンド。突然どうしたんだ?ワシに何か用か?それともナップルか?」
「バルジーニさん、元気そうで何よりだ。実は、俺がこんな事を言っては申し訳ないんだが、このラグロ王国、俺には合わないんだ。今回も、宰相自ら率先してバイチ帝国に粉かけて、挙句に、あのクズはバリッジとか言う極悪組織の一員だったと言うから質が悪い。それで、急なのだが、俺はこの国を出る事にした。既にバイチ帝国側とも話がついているんだ」
俺は申し訳なくなる。
この国、この工房通りで店を構えてくれている鍛冶士に、ある意味国に努めているような立場の俺が、国を貶して去って行くんだからな。
「それとナップル。お前の扱いは聞いていた。助ける事ができなくて済まなかった」
ナップルに向かい、今更ではあるが謝罪し、頭を下げさせてもらった。
この場にいる冒険者、ナップル、バルジーニさん、全員からの罵倒も覚悟していたが、誰からも罵倒などはなかった。
「おいフェルモンド、頭上げろ。お前は今まで良くやった。むしろワシはお前の決断が遅かったと思っている位だ」
「フェルモンドさん、私の事を気にかけて頂いて、ありがとうございます。私は大丈夫です。今は素敵な仲間達に囲われて、とっても幸せですから!生意気を言うようですが、どうかフェルモンドさんも後悔の無いように生きてください!」
バルジーニさんとナップルは、俺の事を気遣ってくれる始末だ。
残りは冒険者パーティーだ。
彼女達からすると、俺はある意味上司にあたる。
その上司が、職場を放棄して逃げます……と言っているのだ。きっと軽蔑しているに違いない。
「フェルモンドギルドマスター、いえ、もうフェルモンドさんですかね?実は私達もナップルさんの話は、つい最近知ったのです。そんな事をする人たちが住むこの場所、このまま拠点にしていいのかなって、皆で話していたんです」
「フェルモンドさんの話、本当ですか?バリッジとか言う組織の件、そしてバイチ帝国での……何かしでかしたのですよね?」
「ああ、向こうの宰相と騎士隊長を、公衆の面前で殺害しようとしたと報告を受けている」
「うわ~、最悪。ねえジュリア、私達も決断の時じゃないの?」
「私もメリンダに賛成。ナップルさん、さっきも確認したけど、この店もバイチ帝国にシフトして行くって本当よね?」
俺の知らないところでこの工房ナップルもラグロ王国を見限り、どうやら同じバイチ帝国で店を構えていくようだ。
「はい。私の魔道具を購入してくださった人に説明が終わり次第、この工房ナップルもバイチ帝国に移ります!!」
「「「「決めた。私達もバイチ帝国に行くわ!!!」」」」
なんだか別れの挨拶に来たつもりが、バイチ帝国への勧誘?になったような気がしないでもないが、結果は良かったのか?
有能な冒険者パーティーや鍛冶士が、このラグロ王国で腐っていくのは見たくなかったからな。
「よし、それじゃあ俺はもう行くぞ。先に行っているから、お前らも気を付けて来いよ!」
ここからバイチ帝国までは、馬車で二週間以上かかる。
この移動中に、自分の強さを改めて見つめ直すいい機会だと思って、再び修練でもしようかと思っている。
何と言っても、最大魔力レベルの概念が覆されたのだ。
今の俺は魔力レベル9。
そして、つい先日までの最強と言われている魔力レベルは10だった。
既になかなかレベルを上げる事ができなくなっている俺は、ほぼ最強だと言う事で甘ったれていたのだ。
だが突き付けられた現実は、最大魔力レベルは10などではなかったという事実。
宰相カードナーが引き連れて行った冒険者、名前はピンファイとか言うらしいが、俺は聞いたことがないので、恐らくバリッジとか言う組織から調達した冒険者だろうが、その男の魔力レベルが42だと言うのだ。
そのレベルと比較すると、俺はまるで初心者冒険者レベル以下だ。
そんなレベルで満足していた自分が恥ずかしくなり、再びこの身を鍛える事を決心した。
今までの経験から、魔力レベルを上げる一番手っ取り早い方法は、自分と同格以上の魔獣を倒す事だ。
同格であればかなりの数を倒さなくては魔力レベルは上がらないが、格上であればある程、魔力レベルは上がりやすかった。
もう一つ、ただひたすら魔力を使用した術を繰り返す事。
これは、同格の魔獣を倒すよりもかなり上りが悪い。
俺もレベルが低い段階で、魔獣と戦わずに魔力レベルを安全に上げるべく試したことがあるのだが、数年かかってレベルは1しか上がらなかった。
その間は、両親の蓄えで食わせてもらっていたドラ息子だ。
だとすると、俺の選択肢は一つ。
格上の魔獣の討伐になるのだが、魔力レベル10の魔獣ですら発見するのは難しい。
ホイホイその辺りで発見できる様ならば、今の人族は滅んでいるだろうからな。
そう考えると、あのピンファイとか言う男の魔力レベル42。
相当高い魔獣がこの世に存在しているか、俺の知らない第三の方法で魔力レベルを上げたか。
だが、今は旅の途中。
襲ってくる魔力レベル5程度の魔獣は、護衛の依頼を受けて同行している冒険者が対処しているし、このレベルの魔獣を狩ったとしても、俺の魔力レベルの糧にはならない。
その為、ただひたすらに剣を振って体の動きを確かめ、身体強化に魔力を使い続ける事により、少しでも魔力レベルを上げる努力を行う他ないのだ。
正直に言うと、身体強化を使い続けているだけでかなり辛い。
魔力レベル9の魔力全てを身体強化に移行しているのだが、体全体を一様に強化しているわけではない。
たとえば、緊急退避の際には足の部分に魔力を多めに割り当てる。
こう言った細かい技術があればこそ、俺は今まで生きてこられたのだ。
他の冒険者達がどのように魔力を使用しているかは知らないが、これは俺自身が必死で修練して手に入れた力。
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