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華やかになる拠点と……

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 拠点に帰還し、魔力レベル0のメンバーを全員庭に呼び出した。

「わっ、可愛い~!!」

 あちこちから湧き上がってくる声。

 そう、もちろん目の前に奇麗に並んで尻尾を振っている、犬や狼に見える魔獣達を見た感想だ。

 見た目は非常に可愛いが、この一団の魔力レベルは、全ての個体が魔力レベル60前後。

 あの元クソギルドマスターであるドストラ・アーデが、何人束になってもかなわない程の強者だ。

「よ~し、全員集まってくれたか?」

 魔力レベル0のメンバーのリーダー的な立ち位置にいるイズンを見ると、頷いている。
 
「じゃあ、これから少し話をさせて貰う。知っての通り、俺は、理不尽な奴隷が大嫌いだ。そんな中、俺と志を同じにする大国であるバイチ帝国の方々が、このハンネル王国まで来られた」

 一応、ここまでは既に知っているはずだが、改めて説明した。全員真剣に聞いてくれている。

「そして、現状のハンネル王国は、前クソギルドマスターが国家を裏切り、更には投獄されていた王城内の牢獄で暗殺される始末だ。知っての通り、バリッジと言う組織が関与している可能性が非常に高く、このままでは、同士と言っても過言ではないバイチ帝国の方々にも脅威の手が迫って来る危険性がある。いや、実際に襲撃されそうになった事実がある。更には、ハンネル王国の善良な市民や冒険者達にも危害が及ぶ。裏で動いているバリッジの連中は、王城内部にすら存在できる程の力があるからな」

 頭の切れる者は、これからの話の展開、つまり、魔力レベル0の自分達も含めて、大規模な活動をする可能性があると予想したのだろう。

 より、表情が厳しくなった。

「一部の者は感づいたようだが、俺達は、その裏で動いている連中に対抗する事を決めた。そうすると、場合によっては、この拠点にナンバーズが不在になる時があるかもしれない。更に!君達、魔力レベル0の者達でしかできない任務も出てくるだろう」
「あの、ジトロ様、私達にどのような事ができるのでしょうか?」

 イズンがおずおずと聞いてくる。

 彼は、今の所金銭が絡まない時は大体こんな感じだ。

「例えば、調査対象箇所への潜入だ。いや、勘違いしないでくれよ。本当に闇夜に紛れて潜入するわけではない。例えば、商店であれば従業員として潜り込むのだ。俺達のように魔力レベルがある者は警戒の対象になる可能性があるからな。重要度によってはナンバーズを送り込む事になると思うが、長期的な作戦にナンバーズを使う訳には行かない」
「ですが、その場合、万が一の時にどのように得られた情報を報告すればいいのでしょうか?」

 ナンバーズもそうだし、彼らもそうだが、自分の命の心配ではなく、俺の依頼に対する心配を第一にしてくる。

 普通そこは、万が一の時にどのように避難すれば良いでしょうか?だと思うのだが……

「そこで、ここに並んでいる魔獣達だ。こう見えて、全ての個体が魔力レベル60前後だ。お前達が潜入する際、場合によっては本人の魔力鑑定は行われるだろうが、隠密で付き従っているこの魔獣達は対象にはならない。この魔獣達、基本スキルは感知・転移・隠密を持っているから、万が一の時には転移して戻って来ると良い」
「そこまで考えて頂けるとは、ありがとうございます」

 ホント、ここの住民って真面目だな。

「それと、魔獣達にはNo.10ツェーンの作った魔道具の首輪をつける。こうすれば、彼らの魔力を使用して、俺達の誰にでも念話で会話が可能だ。もちろん、お前達との意思疎通もこれで問題なくなるだろう。よし、魔獣との相性もあるだろうから、好きな個体を選ぶと良いぞ!」

 ま、この魔道具による魔獣からの意思疎通は断片的になるんだ。

 魔獣が人の言葉を完全にマスターしている訳ではないからな。

 魔力レベル0の面々がこの魔獣を通して意思を伝える場合は、魔獣達は人の言葉を中継するだけ、つまり、そのままこちらに伝えてくれるので完全な意思疎通ができる。

「「「「きゃー」」」」

 黄色い声で突撃する女性陣と、にこにこしながら近づいていく男性陣。

 魔力レベル0の女性陣の勢いに押された魔力レベル60の魔獣が、少しだけ後退していた。

 恐るべし、黄色い声。

 よし、じゃあ次は……っと。

 俺は、次の大切な任務を行わなくてはならない。

 そう、この拠点の守り神、いや、守り龍になってくれているピアロとコシナのフォローだ。

 二体の炎竜の魔力レベルは50前後。

 つまり、あの小さな犬や狼の魔獣よりも弱い。

 それに、今までマスコット的な立ち位置だったのがその位置を追われているのだ。

 いや、全員一時的に目の前の魔獣達に目が向いているだけで、決してこの二体を蔑ろに等決してしない事はわかっているけど、少ししょんぼりしているからフォローしないといけないんだよね。

「ピアロ、コシナ、大丈夫だよ。皆お前達に感謝している。そうだ、お前達にもNo.10ツェーンの魔道具をつけておこうか。こうすれば、誰とでも意思疎通ができるぞ!!」

 二体の鱗を撫でてやる。

 「「きゅー」」

 嬉しそうに鼻先をこっちに着けてくる二体。

 早速、首輪??をつけてやる。

 俺やナンバーズは、魔道具がなくてもテイムしている魔獣とある程度の意思疎通はできるが、魔道具を介して、

「「うれしい!ありがとう」」

 と言うメッセージが届いた。

 ふ~、これで全て丸く収まったかな?
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