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騎士隊長ナバロン(3)
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これは終わったかもしれない。
いくら何でも身体強化から魔力を移行せずにあの魔法を食らっては、ひとたまりもないだろう。
次は他の覆面に攻撃を仕掛けるのかと思いきや、私の前にいる覆面が呆れたような声を出す。
「何を遊んでいるんだNo.7!あまり時間をかけるようならば、私が代わるぞ?主が我らの報告を待っているんだ。お待たせしては不敬だろう?」
するとあの炎の中から、何の傷も負っていない、そう、服すら焦げてもいない、あの覆面が出てきた。
おおおお、おかしいだろう!?あのドストラ・アーデの攻撃もおかしいが、それをまともに食らって平然としているNo.7と言う覆面も異常だ。
ついでに言うと、私の前にいる覆面も言っている事がおかしい。
「ごめんなさいNo.4、たしかに主を待たせてしまっては不敬ですね。そこのドストラ・アーデとやら、申し訳ありませんが、私達には時間がありませんので、遊びはここまでにしておきます」
「バカな、たしかにお前は身体強化を使っていたはず。そこから魔力の動きは……未だにないにもかかわらず、何故私の全力の魔法で傷一つ負っていないのだ!!」
良い質問だ!それは私も知りたいぞ、ドストラ・アーデよ。
「急いでいると言っているでしょう?あなた程度の質問に答える義理は有りません」
No.7と言う覆面が話し終わったと思うと、既にドストラ・アーデは倒れ伏していた。
一体どのような攻撃を放ったのかすら、わからない。
私の想定を超える強さとは思っていたが、それすら生ぬるいと言わざるを得ないぞ。
「それではバイチ帝国の皆様、お騒がせしました。引き続き我らが影より護衛いたしますので、このままお進みください」
待ってくれ、お前達のその強さの秘密を知りたい。
いや、そうではない。
知りたいのだが、先ずは覆面の一行との縁を結ぶのだ。
ここまで来れば、我らを守ろうとしている事、疑いようはない。
とすると、これ程の強さを持つ一団との繋がりは、今後の我らの活動に必ず大きく貢献してくれるはずだ。
しかし、早くしないと今にも覆面達は目の前から消えそうだ。
「待ってくれ、No.7とやら!」
ふ~、私がなんと言いだそうか悩んでいる内に、宰相が覆面達を止めてくれた。
「私は、バイチ帝国の宰相、アゾナと言う。先ずは我らを助けてくれた事、礼を言う。貴公らの所属はわからないが、その行動から少なくとも我らバイチ帝国の敵ではないと判断しているのだが、宜しいか?」
「ええ、今は我が主の命により、護衛に付くように言われていますので」
これ程の戦力を持つ面々を統率する主……是非とも我がバイチ帝国に引き入れたいところだが……
「そうですか。とすると、今後の我らの行動によっては敵になる可能性もある…と言う事ですね?」
No.7と名乗った覆面は、この問いには答えなかった。
覆面故に表情は読み取れないが、答えない事が答えになっている。
今後の我らの行動一つで、覆面が敵になるかもしれない…か。
我らは、この覆面の存在を一切気取る事が出来なかった。
つまり、いつ、どんな時でも、覆面の連中にとってみれば我ら程度は容易に滅ぼす事ができると言う事だ。
しかし、我らの真の目的、犯罪奴隷を除く、奴隷制度の廃止を成し遂げるまでは、突き進むしかない。
覆面の一行が、奴隷制度を利用した商売に手を染めていない事を祈るしかないだろうな。
「理解しました。あなた方も急いでいるようですので、この場はこれまでとしましょう。ですが、もし良ければ、あなた方の主とお話をさせて頂ける機会を持たせて頂きたい」
「私の一存では決めかねます。ですが、申し出については主に伝えておきましょう。王都までの道中の安全は、我らが保証します。この男の襲撃でお疲れでしょうから、残りの道中は気を抜いていただいて結構です。魔獣一匹近寄らせる事は致しません。それでは、残りの道中、良い旅を!」
今の今まで、目の前で話をしていたNo.7と呼ばれていた覆面を含む一行は、ドストラ・アーデと共に、忽然とその姿を消した。
気配すらつかめないが、我らを監視…いや、護衛しているのは間違いないだろう。
「宰相、あの一行の動向次第で、我らの悲願がどうなるか……決まるのだろうな」
「わかっていますよ」
そう、我らの悲願である奴隷解放。
実は、私も、宰相であるアゾナも、数代前はバイチ帝国ではない、とある国家の奴隷として生活していた者の血を引いている。
そこに訪問されていたバイチ帝国の当時の皇帝に、その才を認められて召し抱えられたと言う経緯がある。
そのせいか、あの覆面の一団が主とやらを崇拝しているのと同じように、我らもバイチ帝国を、皇帝陛下を崇拝しているのだ。
この考えに、あの一行の主が賛同してくれるかどうか……それによってはバイチ帝国の存続すら危ぶまれるかもしれないな。
「大丈夫ですよ、ナバロン。あの感じであれば、問題ないでしょう」
俺の心中を察してか、アゾナは気楽に言ってのけた。
だが、この男は宰相にまで上り詰めただけあって、人の真意を見抜くのが得意だ。
そんなアゾナが直接覆面と会話して大丈夫だと判断したのだから、大丈夫なのだろう。
「わかった。何はともあれ、今回の任務を完遂するか。おい!お前ら。ついでにハンネル王国の騎士達よ、このまま気楽に向かうぞ!」
ならば、俺もあの覆面の一行を信じよう!!
いくら何でも身体強化から魔力を移行せずにあの魔法を食らっては、ひとたまりもないだろう。
次は他の覆面に攻撃を仕掛けるのかと思いきや、私の前にいる覆面が呆れたような声を出す。
「何を遊んでいるんだNo.7!あまり時間をかけるようならば、私が代わるぞ?主が我らの報告を待っているんだ。お待たせしては不敬だろう?」
するとあの炎の中から、何の傷も負っていない、そう、服すら焦げてもいない、あの覆面が出てきた。
おおおお、おかしいだろう!?あのドストラ・アーデの攻撃もおかしいが、それをまともに食らって平然としているNo.7と言う覆面も異常だ。
ついでに言うと、私の前にいる覆面も言っている事がおかしい。
「ごめんなさいNo.4、たしかに主を待たせてしまっては不敬ですね。そこのドストラ・アーデとやら、申し訳ありませんが、私達には時間がありませんので、遊びはここまでにしておきます」
「バカな、たしかにお前は身体強化を使っていたはず。そこから魔力の動きは……未だにないにもかかわらず、何故私の全力の魔法で傷一つ負っていないのだ!!」
良い質問だ!それは私も知りたいぞ、ドストラ・アーデよ。
「急いでいると言っているでしょう?あなた程度の質問に答える義理は有りません」
No.7と言う覆面が話し終わったと思うと、既にドストラ・アーデは倒れ伏していた。
一体どのような攻撃を放ったのかすら、わからない。
私の想定を超える強さとは思っていたが、それすら生ぬるいと言わざるを得ないぞ。
「それではバイチ帝国の皆様、お騒がせしました。引き続き我らが影より護衛いたしますので、このままお進みください」
待ってくれ、お前達のその強さの秘密を知りたい。
いや、そうではない。
知りたいのだが、先ずは覆面の一行との縁を結ぶのだ。
ここまで来れば、我らを守ろうとしている事、疑いようはない。
とすると、これ程の強さを持つ一団との繋がりは、今後の我らの活動に必ず大きく貢献してくれるはずだ。
しかし、早くしないと今にも覆面達は目の前から消えそうだ。
「待ってくれ、No.7とやら!」
ふ~、私がなんと言いだそうか悩んでいる内に、宰相が覆面達を止めてくれた。
「私は、バイチ帝国の宰相、アゾナと言う。先ずは我らを助けてくれた事、礼を言う。貴公らの所属はわからないが、その行動から少なくとも我らバイチ帝国の敵ではないと判断しているのだが、宜しいか?」
「ええ、今は我が主の命により、護衛に付くように言われていますので」
これ程の戦力を持つ面々を統率する主……是非とも我がバイチ帝国に引き入れたいところだが……
「そうですか。とすると、今後の我らの行動によっては敵になる可能性もある…と言う事ですね?」
No.7と名乗った覆面は、この問いには答えなかった。
覆面故に表情は読み取れないが、答えない事が答えになっている。
今後の我らの行動一つで、覆面が敵になるかもしれない…か。
我らは、この覆面の存在を一切気取る事が出来なかった。
つまり、いつ、どんな時でも、覆面の連中にとってみれば我ら程度は容易に滅ぼす事ができると言う事だ。
しかし、我らの真の目的、犯罪奴隷を除く、奴隷制度の廃止を成し遂げるまでは、突き進むしかない。
覆面の一行が、奴隷制度を利用した商売に手を染めていない事を祈るしかないだろうな。
「理解しました。あなた方も急いでいるようですので、この場はこれまでとしましょう。ですが、もし良ければ、あなた方の主とお話をさせて頂ける機会を持たせて頂きたい」
「私の一存では決めかねます。ですが、申し出については主に伝えておきましょう。王都までの道中の安全は、我らが保証します。この男の襲撃でお疲れでしょうから、残りの道中は気を抜いていただいて結構です。魔獣一匹近寄らせる事は致しません。それでは、残りの道中、良い旅を!」
今の今まで、目の前で話をしていたNo.7と呼ばれていた覆面を含む一行は、ドストラ・アーデと共に、忽然とその姿を消した。
気配すらつかめないが、我らを監視…いや、護衛しているのは間違いないだろう。
「宰相、あの一行の動向次第で、我らの悲願がどうなるか……決まるのだろうな」
「わかっていますよ」
そう、我らの悲願である奴隷解放。
実は、私も、宰相であるアゾナも、数代前はバイチ帝国ではない、とある国家の奴隷として生活していた者の血を引いている。
そこに訪問されていたバイチ帝国の当時の皇帝に、その才を認められて召し抱えられたと言う経緯がある。
そのせいか、あの覆面の一団が主とやらを崇拝しているのと同じように、我らもバイチ帝国を、皇帝陛下を崇拝しているのだ。
この考えに、あの一行の主が賛同してくれるかどうか……それによってはバイチ帝国の存続すら危ぶまれるかもしれないな。
「大丈夫ですよ、ナバロン。あの感じであれば、問題ないでしょう」
俺の心中を察してか、アゾナは気楽に言ってのけた。
だが、この男は宰相にまで上り詰めただけあって、人の真意を見抜くのが得意だ。
そんなアゾナが直接覆面と会話して大丈夫だと判断したのだから、大丈夫なのだろう。
「わかった。何はともあれ、今回の任務を完遂するか。おい!お前ら。ついでにハンネル王国の騎士達よ、このまま気楽に向かうぞ!」
ならば、俺もあの覆面の一行を信じよう!!
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