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新種魔獣の正体?

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 翌日、俺は再びギルドに出勤し、と言うか休みなしで毎日出勤しているので、自由な時間などない。

 普通の人であれば、たぶん体に異常が出てくるのだろうが、いかんせん魔力レベルが∞の俺は自分自身の強化を行い続ける事ができるので、全く問題ないのは助かっている。

 魔獣の方に関しては、昨日の話の通りに魔力の調査としてNo.7ジーベンNo.5フュンフNo.8アハトが向かった。

 何かわかれば、すぐにでもギルドに来てくれるらしい。

「平民、昨日の魔獣騒ぎはどうなったのだ?」

 クソギルドマスター、少々早くギルドに出勤して、開口一番俺に聞いてくる。

 何故だかは知らないが、日に日にこいつの態度は悪くなっている気がする。

<何もしないくせに、こんな時だけ情報を俺に求めて来るんじゃねーよ!!>
「いえ、残念ながら魔獣の姿は確認する事ができなかったようです。ですが、冒険者二人は無事に救出する事ができました」

 よし、今日も心の声と本当の声は上手く分離できているな。

 絶好調だ。

「フン、その冒険者どもも、経験のなさから適当なスライムを見て恐れおののいただけじゃないか?平民だけに有り得るな。その無駄な騒ぎで、あの小娘どもは楽に金貨を手に入れた……と」

 あの二人が、報酬を救出した冒険者達にそっと返却していた事を知っているのは、今この場では俺だけだ。

「どんな事情であれば、結果は出たのです。救出依頼があって、無事に救出が完了した。良い事じゃありませんか?」
「平民ごときが偉そうに。だが、魔獣の件、何か情報を得たら俺にも伝えろ。わかったな」

 言いたい事だけを言って去っていくクソギルドマスター。

 一切仕事をしないくせに、この魔獣騒ぎにだけは首を突っ込んでくる。

 きっとあれだな、俺はギルドの為に、いや、皆の為に必死に情報収集して、対処しています~的なアレだ。

 そうは行くか!と言いたいところだが、そこは社畜。いや、ギルド畜。

 ま、前世では働きに出る前に人生が終わってしまったから良く分からないけどな。

 でも、今の現実、副ギルドマスター補佐心得では、逆らう事ができないのが悲しい所だ。

 ただし、個人的に行動した情報については必要に応じて開示する事にするので、今回の調査結果も全てそのまま開示するつもりはない。

 今日は、新種の魔獣についての情報が冒険者達に浸透しており、その魔獣が未だ討伐されていない事から、依頼の受注は極めて低い。

 命を大切にしているので行動としてはとても良いのだが、このままの状態が続いてしまうのであれば、冒険者本人もそうだが、ギルドとしても立ち行かなくなるので、早い所この問題を終わりにしたい。

 だが、ギルドマスターがアレだからな。

 正直色々難しいのではなかろうか。

 そんな訳で、今日は久しぶりに緩やかな業務を行っており、ゆったりと昼ごはんを食べ…られませんよ。

 いや、休憩はゆったりできたけど、お金がないから昼は抜き!!

 こんな時に限って休憩がたっぷり取れるとは、ひょっとして、魔力レベルが∞の代わりに幸運とかなんかのパラメーターがマイナスで振り切っているのではなかろうか。

 そんな不安と、空腹に耐えつつ午後の業務を開始する。

「ジトロ副ギルドマスター補佐心得、少しお話したい事があります」

 昼一番、No.7ジーベン一行が帰還し、俺に面談を求めてきた。

 今日は相変わらず冒険者が少なく、受付業務だけを見れば暇なので、暫く席を外しても問題ないだろう。

「わかりましたミハさん。向こうにいるハルさんとルカさんも同席されるのですよね?」

 ミハ、ハル、ルカとは、冒険者として登録している三人の偽名だ。

 もちろん、仲間全員が偽名で登録している。

「はい、よろしくお願いします」

 パーティーとして登録しているのは、No.5フュンフNo.8アハトであるハルとルカだが、もちろん偽名登録している面々は仲が良いと知れ渡っており、三人が共に行動していたとしても、何ら疑いの目を向けられる事は無い。

「じゃあ、少しここ外すから、よろしくね」
「わかりました。副ギルドマスター補佐心得!」

 他の窓口メンバーに伝えると、ギルドの奥にある個室に三人を案内していつもの通り防音結界を作成する。

「それで、どうだった?何かわかったのか?」
「はい、あの魔力からは異常な魔力を感知しました。ですが、良く調べると、ベースはピグマスで間違いありません」

 ピグマスとは豚の顔をした魔獣で、肉がとてもうまいが、それほど脅威と成り得る魔獣ではなかったはずだ。

 とは言え、あんな薬草採取のエリアにいるのはおかしいが。

「ですが、明らかにピグマスが使えるような魔力ではなく、あの場に残っていた魔力から解析すると、おそらく魔力レベルは20近辺です」

 この世界で魔力レベル20となると、英雄でも手も足も出ないレベルだ。

 そんな魔獣が、薬草採取と言う魔力レベル1や、場合によっては魔力レベル0の人々が行うような依頼場所に出現したのだ。

 この事実が明らかになれば、大問題になるだろう。

 だが、このままクソギルドマスターに伝える訳には行かない。

 何故ここまでの情報を持っているのかを怪しまれるからだ。

 更に、No.7ジーベンの話は続く。

「それに転移の形跡を見ると、自分の力で転移をしているようなのです。となると、その魔獣は次にいつ、どこに出てくるかわからないと言う事になります」

 今日の依頼が極端に少なかったのは正解らしい。

 だが、依頼を受けている冒険者はゼロではない。

 彼らの安全が非常に心配になる。

「そしてピグマス自身も、あの魔力の荒さを見る限り、力を制御できているようには見えませんでした」

 これはかなりまずいかもしれない。

 いつどこに出現するかわからないと言う事は、ギルドを含む、この町中のどこにでも出現する可能性があるのだ。

 実際には、魔力レベル20程度であればかなりの距離を一気に転移することは不可能だ。

 だが、昨日の時点でレベル20の新種の魔獣が、今も魔力レベル20のままでいる保証はない。

 どのようにクソギルドマスターに伝えるかが問題だな。

 そもそも転移出来るほどの魔力レベルの者は、俺達を除いて誰もいないはずだ。

 英雄と言われている者でさえ、魔力レベル10。

 そんなレベルで、運よく転移を発動できたとしても、精々数メートルだろう。

 この時点で、クソギルドマスターに魔獣がどこにでも転移できる可能性があると言う説明がし辛い。

 前回の炎竜の鱗事件でも、散々魔力レベル9のパーティーでは不可能だと言い続けたのに、一切理解する事が出来なかったクソギルドマスターだからな。

 だが、このまま放置してしまうと冒険者達の命の危険がある。

「想定魔力レベル20近辺であれば、昨日の探索で見つけられなかったのか?」

 過去の事を言っても仕方がないが、念のためNo.5フュンフNo.8アハトに聞いて見る。

「はい、残念ながら、近くに気配は一切なくなっていたので」

 まあ、現場に到着した時にとっくに魔獣は逃げていたのであればそうなるか。
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