9 / 179
ギルドマスター(2)
しおりを挟む
No.5とNo.8の二人は、既にレベルの糧にもならない炎竜を討伐するために、俺からの依頼……いや、俺に対して嫌がらせをするために出された依頼を受注してくれた。
よくよく調べると、炎竜の鱗が必要なのはクソの妻の父の弟であり、別段手に入らなくても良いが、もし手に入れば、今後大きな顔ができる……程度の依頼だったりする。
ほんと、どれ程遠い繋がりだよ!無駄に長い。
俺の役職と言い、何か長い物に呪われているのではなかろうか?
そうそう、何故こんな事を知っているかと言うと、俺達の家、拠点で、すでにNo.5とNo.8から事情を聞いていた他の面々が、瞬時に行動して調べ上げたからだ。
俺が拠点に帰った時点で、既にこの情報を調べ上げた状態だったのだ。
恐るべき速度の情報収集だろ?
この報告を聞いている時、彼女たちの目が血走っていたのが少し怖かった。
彼女達曰く、俺に対する嫌がらせなど言語道断であり万死に値するらしく、怒りから目が血走っているらしい。
そして、依頼の炎竜の鱗だが、既に入手済みで奇麗に包まれていた。
こちらも凄まじい速度だが、彼女達の能力が理解できていれば、問題なくこの依頼を短期間に達成できる事はわかる。
が、俺の為に最大速度でこなしてくれたようだ。
「皆、ありがとな!俺なんかの為に色々してくれて、本当に嬉しい!」
「何を言っているのですかNo.0!私達はあなたの為だけに存在しているのですよ」
「その通りです。あなたの存在だけが、私達の存在意義なのです」
ありがた過ぎて涙が出そうだ。
「ホントありがとうな。俺には過ぎた仲間達だ」
全員が赤い顔をして微笑んでいる。
「キュオーン」
と、そこに、外にいる炎龍の親子の鳴き声が聞こえてきた。
「あらあら、おなかがすいたのかしら。少しお散歩させてきますね」
そう、この鱗を取るために炎龍を狩ろうとした所、子供連れの個体であったために息の根を止めるのはためらわれたそうだ。
この世界では、一般的に高魔力レベルの魔獣は人族の言葉を理解出来る個体が多くなる。
一縷の望みをかけて鱗さえもらえれば攻撃はしないと話しかけた所、炎龍も戦闘では決してかなわないと悟ったのか、自ら鱗を剥がしてくれたらしい。
もちろんその後の傷は、即座に修復してあげたそうだ。
そして、なんとその炎龍の親子は自ら俺たちの番犬?のような位置づけに収まることを強く希望したようなのだ。
番龍だな。
この親子が討伐隊のズボンの裾を咥えて離さなかったため、なんとか理由を問いかけ続けていくうちに、同行したいという事が分かったらしい。
正直、俺達の魔力レベルであればテイムも可能なので、万が一にも俺達に被害がないように実行しておく事にし、この炎龍を連れてきた中で一番古株のNo.2にテイムをしてもらう事になった。
実は俺、自ら望んで俺達の力になってくれる高レベルの魔獣を欲していた所だったのだ。
この屋敷には、俺達の他に奴隷から解放した魔力レベル0の面々も生活をしている。
同じ敷地で生活をしているので安全ではあるのだが、俺達の活動時間中は、屋敷に戦闘能力のある者がいなくなる場合がある。
その時の安全を確保するべく、高ランクの魔獣が必要だと考えていたのだ。
こうして、需要と供給?が一致して、めでたくこの炎龍は俺達の家族の一員となった。
せっかくだからNo.2に名前を付けさせたところ、親龍はピアロ、子龍はコシナに決定した。
この二体にはこの屋敷で生活している面々を覚えさせ、守るように指示を出している。
魔力レベル0の面々は突然現れた炎龍におっかなびっくりではあったが、No.2によってテイムされていると理解できると、思い思いに二体と戯れていた。
こうして、クソギルドマスターのふざけた依頼のおかげで家族も増えて、安全も確保する事ができた。
そして翌日、いつものようにギルドに出勤すると、本当に珍しくギルドマスターが既に出勤していた。
「おい、あと5日だぞ。楽しみだな。俺の助言を一切聞かなかったあの冒険者二人。早い段階でこの俺に詫びを入れれば許してやらない事もない。そう伝えておけよ。だが、お前の降格は確定する事になるがな。ハハハハハ」
この野郎、そんな下らない事を言う為だけに、普段は昼過ぎにしか来ないくせに、わざわざ早く来たのか。
どんだけ暇なんだ!このクズが!と心の中で叫んでおく。
こんな事をしていると、そのうち心の声が口から出てしまいそうで怖いな。
「珍しく早いですねギルドマスター。ご心配なく。あの二人であれば問題なく炎龍の鱗程度ならすぐに持ってきてくれますよ」
少しだけ心の声が出てしまったが、仕方がないだろう。
「フン、口だけならどうとでも言える。だが現実は甘くはない」
本当にこいつは!魔力レベル9のパーティーで簡単に依頼達成できると豪語していただろうが。
いや、あの二人の魔力レベルは偽装しているから、そう思われても仕方がないか。
実際にあの二人の登録魔力レベルは、確かNo.5が5で、No.8も5だったな。
「おはようございます」
「あ、ジトロ様、おはようございます」
すると、タイミングを計ったかのように二人がギルドにやってきた。
いや、明らかに意図的だが、クソギルドマスターにはそんな事はわからない。
「おやおや、こんなに早くギルドに来る暇があるなら、炎龍の居場所でも必死で探した方が良いんじゃないか?残り5日あるとは言え、生息場所までの往復でかなりの時間が必要になるはずだからな。それとも、依頼が達成できない事に気が付いて俺に詫びに来たのかな?」
何とも言えない笑みを浮かべて、二人を見つめているクソギルドマスター。
こいつは、どうやっても俺を降格させたいらしい。
だが、そうはいかない。
俺がこのふざけた名前の役職にいるだけで、ギルドに集まる情報を掌握できる。
ま、安定した仕事をしたいと言うのももちろんあるが、以前母さんに大怪我をさせた魔獣について、いまだに正確な原因が分かっていないのだ。
もちろん、俺の思いを知っている面々は折に触れ情報収集をしてくれているのだが、時間が経ちすぎている事、更には魔獣の死骸もとっくに焼却処分されてしまっている事から、情報を掴めないでいた。
因みに、噂ではあるが、魔獣の焼却を指示したのが、当時このギルドにいなかったはずのこのクソらしい。
噂なので、真実はわからない。
よくよく調べると、炎竜の鱗が必要なのはクソの妻の父の弟であり、別段手に入らなくても良いが、もし手に入れば、今後大きな顔ができる……程度の依頼だったりする。
ほんと、どれ程遠い繋がりだよ!無駄に長い。
俺の役職と言い、何か長い物に呪われているのではなかろうか?
そうそう、何故こんな事を知っているかと言うと、俺達の家、拠点で、すでにNo.5とNo.8から事情を聞いていた他の面々が、瞬時に行動して調べ上げたからだ。
俺が拠点に帰った時点で、既にこの情報を調べ上げた状態だったのだ。
恐るべき速度の情報収集だろ?
この報告を聞いている時、彼女たちの目が血走っていたのが少し怖かった。
彼女達曰く、俺に対する嫌がらせなど言語道断であり万死に値するらしく、怒りから目が血走っているらしい。
そして、依頼の炎竜の鱗だが、既に入手済みで奇麗に包まれていた。
こちらも凄まじい速度だが、彼女達の能力が理解できていれば、問題なくこの依頼を短期間に達成できる事はわかる。
が、俺の為に最大速度でこなしてくれたようだ。
「皆、ありがとな!俺なんかの為に色々してくれて、本当に嬉しい!」
「何を言っているのですかNo.0!私達はあなたの為だけに存在しているのですよ」
「その通りです。あなたの存在だけが、私達の存在意義なのです」
ありがた過ぎて涙が出そうだ。
「ホントありがとうな。俺には過ぎた仲間達だ」
全員が赤い顔をして微笑んでいる。
「キュオーン」
と、そこに、外にいる炎龍の親子の鳴き声が聞こえてきた。
「あらあら、おなかがすいたのかしら。少しお散歩させてきますね」
そう、この鱗を取るために炎龍を狩ろうとした所、子供連れの個体であったために息の根を止めるのはためらわれたそうだ。
この世界では、一般的に高魔力レベルの魔獣は人族の言葉を理解出来る個体が多くなる。
一縷の望みをかけて鱗さえもらえれば攻撃はしないと話しかけた所、炎龍も戦闘では決してかなわないと悟ったのか、自ら鱗を剥がしてくれたらしい。
もちろんその後の傷は、即座に修復してあげたそうだ。
そして、なんとその炎龍の親子は自ら俺たちの番犬?のような位置づけに収まることを強く希望したようなのだ。
番龍だな。
この親子が討伐隊のズボンの裾を咥えて離さなかったため、なんとか理由を問いかけ続けていくうちに、同行したいという事が分かったらしい。
正直、俺達の魔力レベルであればテイムも可能なので、万が一にも俺達に被害がないように実行しておく事にし、この炎龍を連れてきた中で一番古株のNo.2にテイムをしてもらう事になった。
実は俺、自ら望んで俺達の力になってくれる高レベルの魔獣を欲していた所だったのだ。
この屋敷には、俺達の他に奴隷から解放した魔力レベル0の面々も生活をしている。
同じ敷地で生活をしているので安全ではあるのだが、俺達の活動時間中は、屋敷に戦闘能力のある者がいなくなる場合がある。
その時の安全を確保するべく、高ランクの魔獣が必要だと考えていたのだ。
こうして、需要と供給?が一致して、めでたくこの炎龍は俺達の家族の一員となった。
せっかくだからNo.2に名前を付けさせたところ、親龍はピアロ、子龍はコシナに決定した。
この二体にはこの屋敷で生活している面々を覚えさせ、守るように指示を出している。
魔力レベル0の面々は突然現れた炎龍におっかなびっくりではあったが、No.2によってテイムされていると理解できると、思い思いに二体と戯れていた。
こうして、クソギルドマスターのふざけた依頼のおかげで家族も増えて、安全も確保する事ができた。
そして翌日、いつものようにギルドに出勤すると、本当に珍しくギルドマスターが既に出勤していた。
「おい、あと5日だぞ。楽しみだな。俺の助言を一切聞かなかったあの冒険者二人。早い段階でこの俺に詫びを入れれば許してやらない事もない。そう伝えておけよ。だが、お前の降格は確定する事になるがな。ハハハハハ」
この野郎、そんな下らない事を言う為だけに、普段は昼過ぎにしか来ないくせに、わざわざ早く来たのか。
どんだけ暇なんだ!このクズが!と心の中で叫んでおく。
こんな事をしていると、そのうち心の声が口から出てしまいそうで怖いな。
「珍しく早いですねギルドマスター。ご心配なく。あの二人であれば問題なく炎龍の鱗程度ならすぐに持ってきてくれますよ」
少しだけ心の声が出てしまったが、仕方がないだろう。
「フン、口だけならどうとでも言える。だが現実は甘くはない」
本当にこいつは!魔力レベル9のパーティーで簡単に依頼達成できると豪語していただろうが。
いや、あの二人の魔力レベルは偽装しているから、そう思われても仕方がないか。
実際にあの二人の登録魔力レベルは、確かNo.5が5で、No.8も5だったな。
「おはようございます」
「あ、ジトロ様、おはようございます」
すると、タイミングを計ったかのように二人がギルドにやってきた。
いや、明らかに意図的だが、クソギルドマスターにはそんな事はわからない。
「おやおや、こんなに早くギルドに来る暇があるなら、炎龍の居場所でも必死で探した方が良いんじゃないか?残り5日あるとは言え、生息場所までの往復でかなりの時間が必要になるはずだからな。それとも、依頼が達成できない事に気が付いて俺に詫びに来たのかな?」
何とも言えない笑みを浮かべて、二人を見つめているクソギルドマスター。
こいつは、どうやっても俺を降格させたいらしい。
だが、そうはいかない。
俺がこのふざけた名前の役職にいるだけで、ギルドに集まる情報を掌握できる。
ま、安定した仕事をしたいと言うのももちろんあるが、以前母さんに大怪我をさせた魔獣について、いまだに正確な原因が分かっていないのだ。
もちろん、俺の思いを知っている面々は折に触れ情報収集をしてくれているのだが、時間が経ちすぎている事、更には魔獣の死骸もとっくに焼却処分されてしまっている事から、情報を掴めないでいた。
因みに、噂ではあるが、魔獣の焼却を指示したのが、当時このギルドにいなかったはずのこのクソらしい。
噂なので、真実はわからない。
0
お気に入りに追加
492
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
貞操観念が逆転した世界で、冒険者の少年が犯されるだけのお話
みずがめ
恋愛
ノイッシュは冒険者として索敵、罠外し、荷物運び、鑑定などあらゆるサポートをしていた。だが彼がパーティーに求められることは他にもあったのであった……。男一人に美女二人パーティーの非道な日常のお話。
※貞操観念逆転世界で気弱な男が肉食系の女に食べられちゃうお話です。逆レイプが苦手な方は引き返すなら今ですよ(注意書き)
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる