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メバリアとリージョ(1)

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「……と言う事がありまして、今回ベナマス王国はその名前が大陸から消えてシス連合国に完全に吸収合併されました」

「なるほど、流石はクロイツ殿と言った所ですかな、メバリア陛下」

「フフ、流石は異母弟クロイツ殿だ。普通あのグアトロ王国が攻めてくるとなると、国家上げての対処となると思うのだが……片手間で処理した挙句に諸悪の根源の力を全て奪うとは、見事としか言いようがない。身内であっても尊敬に値する存在だ」

 ここはナスカ王国の王城であり、円卓には国王であるメバリア、ゼリア帝国から友好の印、そして助力をするために派遣されている宰相のアントニアがおり、リージョも座って今回の件について報告をしている。

 当然二人であれば自分達が報告せず共ある程度の情報は持っているのだろうが、当事者の口から詳細を伝える事で信頼関係を構築する事もあったのだが、何故かこの報告についてはクロイツやリサから一刻も早く伝えに行くように背中を押されたリージョだ。

 リージョとしても漸く今迄の怨敵ミューテルに対する恨みも相当無くなっており周囲に目が行くようになったのだが、その際に最も目に付くのが妹と師匠との仲睦ましい姿で、実際に相当嬉しいのだが、その際に自分の気持ちについても気が付き始めていた。

 どうやら師匠であるクロイツの異母姉であるメバリアに対しての気持ちが、恋愛感情である……と。

 もう完治しているが、“彼女欲しい病”のクロイツと“師匠大好き病”のリサから見ればその感情は直ぐに察知できるものであり、恩返しとばかりに事あるたびにメバリアに関する報告や連絡についてはリージョが行う事になっていた。

「では、私は他の方々に事情を説明しておきますので、そうぞリージョ殿は陛下とごゆっくりお過ごしください」

 年の功か、アントニアもリージョの感情程度はお見通しであり、自らの主であるメバリアの感情も直ぐにわかるので、毎回気を利かせて二人きりにしている。

「り、リージョ殿。その……今日はゆっくりできるのだろうか?」

「は、はい。師匠やリサからは今日はナスカ王国側の深淵の森を軽く見て宿泊するように強く指示を受けているので、泊りになります。まぁ、深淵の森はリサやポチ殿の眷属も相当な頻度で見ているでしょうし、メバリア殿についている眷属も監視しているので問題ないのですが……」

 ここまで口にして、二人はクロイツやリサも自分達の事を気にかけてくれていると言う事に気が付いたので、真っ赤になって俯いてしまった。

『ま、まさかこの“無音のリージョ”と過去に呼ばれていた自分がここまで激しく動揺する事になろうとは思ってもいませんでしたよ!』

 とリージョが思っていれば、

『こ、これは異母弟クロイツ殿とリサ殿の強い後押しがあると考えて良いのだろうか?であれば、一つ思い切って行動しなくてはいけないのではなかろうか?』

 メバリアも動揺しつつもこのように思っている。

 実はその様子を、概略程度の情報になるがメバリアの傍にいる眷属からポチを通して嬉しそうに3階層の崖の上で寄り添いながら聞いているクロイツとリサ。

「くっそ~!もう少し詳細がわかりゃーな、雰囲気を作るとか手伝ってやれるのによ~!ハート型の灼熱の炎魔法とか、綺麗な雪の結晶が舞い散る魔法とか!」

「フフフ、早くお兄ちゃんやメバリアさんにも幸せになってほしいですからね。あっ!でも、二人が結婚したらお兄ちゃんはナスカ王国に住むのでしょうか?」

「ん?まぁ、どっちでも良いんじゃねーの?どの道リージョがいれば数分でここまで来られるだろ?」

 こんな会話がなされている中で、恋愛感情について全く理解できないポチはただ一人……クロイツが行使する雰囲気づくりの魔法が行われた時の事を想像していた。

 炎魔法……恐らくハート型に制御するのはクロイツの実力であれば全く問題ないのだろうが、その形でお城が一瞬で燃えてしまうのだろうと思ったり、雪の結晶では周囲一帯あっという間に氷漬けになったりするのだろうな……と考えている。
 
 そんな現実味の有りそうなことを考えていた所に、眷属から新たな漠然とした情報が流れてきたので再度詳細を確認しているポチ。

 その中身は、どうやら二人は正式に恋人と言う者に成れたと言う事だったので、クロイツとリサが喜ぶだろうと直ぐにこの情報を伝える。

『クロイツ様、リサ様。なんだかリージョ様も上手く行ったみたいだよ?』

「何!直ぐに行こうぜ、な?リサ!」

「え?で、でも……嬉しいですけれど、今は二人っきりの方が良いのかもしれませんし、どうしましょうか……」

 その言葉を聞いて興奮して直ぐに祝福の言葉をかけに行こうとするクロイツと、恋人に成れた瞬間は暫くそっとしておいてほしいのだろうと女性目線で思っているリサ。

 結局リサに逆らえるわけもないクロイツはリサの意見を尊重し、リージョが戻ってきてから状況を確認する事にしていた。

「リージョさん・・本当に私なんかで良いのですか?」

「わ、私はメバリアさ……メバリアが良いのです!」

 敬称をつけると可愛く膨れるので恥ずかしいが呼び捨てにしているリージョは、今までのどの戦闘時にも感じた程のない緊張感と、得も知れない達成感、幸福感に包まれており、もうミューテルの事など本当にどうでも良くなるほどになっていた。

 メバリアも眼帯で覆っていない方の綺麗な金目をリージョに向けている。

 実はメバリアの右目、眼帯に隠されている方は金目のオッドアイであり、その金目を使う事でクロイツよりは力は劣るが鑑定を行使する事が出来るのだが、情報量に頭が付いて行かないので普段は眼帯をして隠していた。
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