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クロイツの一日

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『ねぇ、クロイツ様。いつの間にかダンジョンをもう一つ手に入れたの?』

 今日は防壁の上にいるクロイツとポチ。

 いつもの通りにポチの体に寄り掛かりながら、フサフサの尻尾に撫でられてのんびりと過ごしているクロイツ。

「そんなつもりはねーんだがよ、あのリュー幼龍とは繋がった感触があったからな。それが攻略ととられたのかもしれねーな」

『そうなの?僕の所にダンジョン攻略情報が流れて来たよ。僕の時もこんな形で他のダンジョンの管理者に流れたんだね』

「そっか。で、その情報が流れた結果、他のダンジョンが地上に何か悪さする可能性はあるか?」

『え~、わかんないよ。でも相当強いダンジョンみたいだから、余計な事をして自分の所が侵略されるのを恐れて何もしないんじゃないかな?調べてみる?』

「いや……いらねーかな?前にSランクの魔獣が地上に出てきた時があっただろ?あんな感じで見た目に異常があった時には調査を頼むかもしれねーが、今の所は必要ね~んじゃねーか?」

『そうだよね。僕も面倒な事は嫌いだし……コレって絶対に主であるクロイツ様に似たんだね!』

 平気で主である自分をディスってくる眷属ってどうなの?と思わなくもないクロイツだが、この尻尾の感触にやられているので何かを深く考える事が出来なくなっており、やがて幼子のように寝息を立て始めた。

『フフフ、クロイツ様。ゆっくり休んでね。クロイツ様は色々と働きすぎだからね』

 いくら最強のクロイツとは言え人族であり、相当無理して行動していたので疲れているのは否定できず、いつの間にか寝入ってしまったのだ。

「師匠は私達の為に常に全力投球ですから少し心配です。でも、本当に気持ちよさそうに寝ていますね。ポチさん、ありがとうございます」

 そこに様子を見に来たリサが現れ、寝息を立てているクロイツを嬉しそうに見つめながらポチの横に座る。

『リサ様も疲れていないの?大丈夫?』

「フフ、ありがとうございます、ポチさん。私は師匠程無理な事はしていないので疲れていませんよ。でも師匠、本当によく寝ていますね。外では絶対にこんな事にはなりませんからね」

 このダンジョン町の中では気配察知もほとんど使う事は無いし、そもそも警戒する必要が無いと思っているクロイツ。

 本来リサ程の存在が近くに来れば敵味方関係なく、気配察知をしていなくてもどれほど深く眠っていようが警戒態勢をとれるのだが、町中にいると言うだけでその辺りの無意識下の行動も完全に無くなっているようで、未だに安らかな寝息を立てている。

「これだけ私達を信頼してくださっていると言う事ですよね」

『そうだよね!うん、うん!嬉しいな。僕、もっと頑張っちゃうよ!クロイツ様は、なんだかいつの間にかもう一つダンジョンを手に入れたみたいだから、今度はそっちの管理者と比較されちゃうからね!』

 ポチとしては、今まで比較対象がいなかったので何かを気にする必要はないと思っていたのだが、明らかに同じ存在であるダンジョン管理者がクロイツの眷属になった為に明確に優劣が分かれてしまう事に少々焦っており、その焦りをしっかりと理解したリサは、ポチに優しくこう諭した。

「ポチさん、大丈夫ですよ。師匠は細かい事を気にする人ではありませんし、ポチさんの良さ、そして新しく仲間に加えた方、どのような方かは知りませんが、その方の良さもしっかりと理解してくださいますよ。私としては、ポチさんは師匠の事を本当に癒していただける存在でい続けて頂けると嬉しいです」

 リサとポチの視線の先にはクロイツの寝顔が見える。

『わかったよリサ様。これからもクロイツ様の立派な枕と布団になれるように頑張るよ』

「えっと、はい。お願いします」

 少しだけ自分が言いたい事とは違う理解をしていると思いつつも、まぁ、その部分も含まれるし……と思うリサだ。

 暫くすると……

「ふぁ~、いつの間にか寝ちまったんだ?ポチの尻尾は魔性の尻尾だよな。抗えね~何かがある!って、リサもいつの間にいたのか」

「ウフフ、師匠の寝顔も素敵でしたよ!」

 ポリポリと頬を掻くクロイツは、随分と頭がすっきりしたので今後について丁度良いとばかりに話す事にした。

「あのよ?あの四人はこのままこの町で錬金術の修行をしてもらおうかと思っているが工房にできそうな場所は地上にはねーんだよな。どの道門から見えちまうのも問題だから、仕事場は3階層にしようかと思っている。ポチ、工房に相応しい建屋を準備してもらえるか?」

『任せてよ、クロイツ様!』

 いつも以上にやる気に満ち溢れているポチの事情は知らないクロイツは、その勢いに少々飲まれている。

「お、おぅ、頼んだぜ。んでよ?ハルミュレの店の守りと市場のポーションについては俺達が何とかしなくちゃならねーと思っている」

「お店は当然ですが、ポーションはグアトロ王国と錬金術師組合に任せないのですか?」

 正直、全ての事情を聞いているリサとしては、グアトロ王国の錬金術師組合の尻拭いをしたいと言う気持ちが起きなかったのだ。
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