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各場所で(4)
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まごう事なき命の危機と理解しているベルヘルトは、今までと違って非常に従順な態度になる。
「良い反応じゃねーか。でよ?改めて聞くが、アロッサーラはどこに行った?」
「え?私はシシリーを連れてくるように頼んだだけなので、そのような人物もいなくなっているとは知りません!」
「あ?誰に頼んだんだよ?」
ベルヘルトはシシリーにしか興味が無かったのでアロッサーラと言われても良くわからず、期待通りの答えではなかったので少し圧を無意識でかけてしまうクロイツ。
その様子を見て慌てて必要以上に全てを曝け出すベルヘルト。
「わ、私はベナマス王国が赤の紋章が必要と言っていた事から、その人材を差し出す代わりにシシリーを連れてくるように頼んだだけです。誓ってそのアロッサーラと言う女性を連れてくるようにとは言っておりませんし、赤の紋章をつけてもいません!」
「……テメーが二人に紋章をつけてねーことは知っている。で、ベナマス王国はなんで赤が必要なんだ?」
「それは……ポーションを作る素材に魔核が必要で、グアトロ王国からの依頼としてベナマス王国に採取依頼を出したのです。恐らくダンジョン侵入の際に、赤の紋章を使って仕事を楽に遂行する為でしょう」
具体的な話までは聞いていないが、間違いなくこうするだろうと思っていた事を正直に話すベルヘルト。
「で、そいつらはどこのダンジョンに向かうんだ?それと、そいつらがこの国を出たのはいつ頃だ?」
「ダ、ダンジョンについては分かりません。彼らがこの国を出たのは……シシリーを連れてきてくれた直後と考えると10日程前です」
「チッ、やべーな。時間がね~ぞ。ダンジョンの場所によっちゃ、もう潜っていてもおかしくねー。おい、ブタ野郎!今すぐベナマス王国に連絡して、どこのダンジョンに向かったのかを聞け!」
「は、はい!!」
「リージョ、お前も調査に向かえ。っと、その前に、シシリーの契約を今すぐ解除しろ。念のため、一時的にリージョが主になって契約がしっかりと解除された事を確認した後に開放する」
こうして主がリージョになった事が確認できた直後に契約を破棄し、元の状態に戻ったシシリー。
「では師匠、私は急いで向こうに向かいます。師匠の方で情報を掴んだ際には、先程と同じサインを送らせてください」
「あぁ、わかった。こっちも動くようであればサインは送るが、どこに行くのかは伝えようがね~から……そうだな、“龍と高ランカーの集い”に伝言を頼んでおく」
シシリーは優しく下ろされると、直後にリージョは消えて行く。
「で、シシリー。コイツに何かされたか?それによってこいつの罰の重さが変わるんだがな。まぁ、言いたくねー事もあるだろうから申し訳ねーが……」
「あの、幸か不幸か接触はなかったのです。何やら、私が自発的に好意を持つために必要な工程だそうで……有り得ないですけれど、助かりました」
狼の魔獣が反応を示さない事を確認したクロイツは必死で手紙を書いているベルヘルトを睨みつけ、この後はあのダンジョン下層の作業場行きだなと考えている。
この体格でノルマを達成するのは不可能なのでそう長く生きる事は出来ない事も理解しているのだが、相応の罪を犯した以上は対処するのも当然だと思っている。
「お、終わりました」
手紙を書き終えて、必死で鳥型の魔獣に手紙を渡して作業が終了した旨を伝えてくるベルヘルト。
「んじゃ~よ?ちょっと質問だ。さっき赤の紋章を差し出したと言ったな。今迄のテメーの態度から察するに、テメー自身も赤の紋章を散々使って悪さしただろう?」
ここで嘘を言っても良い事は一つもない事、既に悪事は明らかになっている上で聞かれていると思っているベルヘルトは、包み隠さず事実を告げる。
「は、はい。この地位に上り詰めるために赤の紋章を使っていました」
「で、当然その連中はこの世にはいねー……と?」
「……そうです」
この会話だけで、相当ノルマを軽くしてやろうかと言う甘い考えは一切なくなったクロイツは、用はないとばかりにベルヘルトから視線を切ってシシリーと向かい合う。
「シシリー。よく頑張ったな。アロッサーラに関しては全力を尽くすとしか言えねーが、とりあえずハルミュレや仲間を安心させるために、一旦“龍と高ランカーの集い”に戻るぞ」
完全に無視して出て行かれたベルヘルトは助かったのかと思ったのだが、窓の外から自分を見つめているポイズナックの存在に気が付いて逃げられない事を悟った。
「シシリー!」
店に着くと真っ先にハルミュレが出迎え、他の仲間達もワラワラと集まって無事の帰還を喜んでいたのだが……もう一人が見当たらない事に気が付いたハルミュレ。
「クロイツ様。その、アロッサーラは?」
「すまねー。別の場所に連れて行かれたみてーで、今リージョが情報を仕入れている」
この店の人達はクロイツ達が本人だと教えられていたので、大陸最大戦力がハルミュレを助け出す為に動いてくれている事に感謝して、只管アロッサーラの無事の帰還を祈り続けた。
「良い反応じゃねーか。でよ?改めて聞くが、アロッサーラはどこに行った?」
「え?私はシシリーを連れてくるように頼んだだけなので、そのような人物もいなくなっているとは知りません!」
「あ?誰に頼んだんだよ?」
ベルヘルトはシシリーにしか興味が無かったのでアロッサーラと言われても良くわからず、期待通りの答えではなかったので少し圧を無意識でかけてしまうクロイツ。
その様子を見て慌てて必要以上に全てを曝け出すベルヘルト。
「わ、私はベナマス王国が赤の紋章が必要と言っていた事から、その人材を差し出す代わりにシシリーを連れてくるように頼んだだけです。誓ってそのアロッサーラと言う女性を連れてくるようにとは言っておりませんし、赤の紋章をつけてもいません!」
「……テメーが二人に紋章をつけてねーことは知っている。で、ベナマス王国はなんで赤が必要なんだ?」
「それは……ポーションを作る素材に魔核が必要で、グアトロ王国からの依頼としてベナマス王国に採取依頼を出したのです。恐らくダンジョン侵入の際に、赤の紋章を使って仕事を楽に遂行する為でしょう」
具体的な話までは聞いていないが、間違いなくこうするだろうと思っていた事を正直に話すベルヘルト。
「で、そいつらはどこのダンジョンに向かうんだ?それと、そいつらがこの国を出たのはいつ頃だ?」
「ダ、ダンジョンについては分かりません。彼らがこの国を出たのは……シシリーを連れてきてくれた直後と考えると10日程前です」
「チッ、やべーな。時間がね~ぞ。ダンジョンの場所によっちゃ、もう潜っていてもおかしくねー。おい、ブタ野郎!今すぐベナマス王国に連絡して、どこのダンジョンに向かったのかを聞け!」
「は、はい!!」
「リージョ、お前も調査に向かえ。っと、その前に、シシリーの契約を今すぐ解除しろ。念のため、一時的にリージョが主になって契約がしっかりと解除された事を確認した後に開放する」
こうして主がリージョになった事が確認できた直後に契約を破棄し、元の状態に戻ったシシリー。
「では師匠、私は急いで向こうに向かいます。師匠の方で情報を掴んだ際には、先程と同じサインを送らせてください」
「あぁ、わかった。こっちも動くようであればサインは送るが、どこに行くのかは伝えようがね~から……そうだな、“龍と高ランカーの集い”に伝言を頼んでおく」
シシリーは優しく下ろされると、直後にリージョは消えて行く。
「で、シシリー。コイツに何かされたか?それによってこいつの罰の重さが変わるんだがな。まぁ、言いたくねー事もあるだろうから申し訳ねーが……」
「あの、幸か不幸か接触はなかったのです。何やら、私が自発的に好意を持つために必要な工程だそうで……有り得ないですけれど、助かりました」
狼の魔獣が反応を示さない事を確認したクロイツは必死で手紙を書いているベルヘルトを睨みつけ、この後はあのダンジョン下層の作業場行きだなと考えている。
この体格でノルマを達成するのは不可能なのでそう長く生きる事は出来ない事も理解しているのだが、相応の罪を犯した以上は対処するのも当然だと思っている。
「お、終わりました」
手紙を書き終えて、必死で鳥型の魔獣に手紙を渡して作業が終了した旨を伝えてくるベルヘルト。
「んじゃ~よ?ちょっと質問だ。さっき赤の紋章を差し出したと言ったな。今迄のテメーの態度から察するに、テメー自身も赤の紋章を散々使って悪さしただろう?」
ここで嘘を言っても良い事は一つもない事、既に悪事は明らかになっている上で聞かれていると思っているベルヘルトは、包み隠さず事実を告げる。
「は、はい。この地位に上り詰めるために赤の紋章を使っていました」
「で、当然その連中はこの世にはいねー……と?」
「……そうです」
この会話だけで、相当ノルマを軽くしてやろうかと言う甘い考えは一切なくなったクロイツは、用はないとばかりにベルヘルトから視線を切ってシシリーと向かい合う。
「シシリー。よく頑張ったな。アロッサーラに関しては全力を尽くすとしか言えねーが、とりあえずハルミュレや仲間を安心させるために、一旦“龍と高ランカーの集い”に戻るぞ」
完全に無視して出て行かれたベルヘルトは助かったのかと思ったのだが、窓の外から自分を見つめているポイズナックの存在に気が付いて逃げられない事を悟った。
「シシリー!」
店に着くと真っ先にハルミュレが出迎え、他の仲間達もワラワラと集まって無事の帰還を喜んでいたのだが……もう一人が見当たらない事に気が付いたハルミュレ。
「クロイツ様。その、アロッサーラは?」
「すまねー。別の場所に連れて行かれたみてーで、今リージョが情報を仕入れている」
この店の人達はクロイツ達が本人だと教えられていたので、大陸最大戦力がハルミュレを助け出す為に動いてくれている事に感謝して、只管アロッサーラの無事の帰還を祈り続けた。
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