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メバリアとベナマス(3)

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「これで数日後にはこのナスカ王国も余の支配下よ。全く、道中あまりの旅路の長さにイライラしたが、ここまで素晴らしい成果が得られると知っていれば全く苦にならなかったのだがな」

「仰せの通りでございます。して、請求書と言う事でございますが如何様に致しましょうか?」

「聞くまでもないだろう?向こうは契約書すら持っていなかったのだぞ。まぁ、その事実を知っていればもう少しやりようはあったが、そこは仕方がない。だが、ヨド・ナスカやドレア・ナスカも消えた以上はどうにでもやりようはある。ゼリア帝国が後ろにいるとなれば……ヨド・ナスカの時代から未納であるとするのが正解だろう?」

 少し前までは約2年の遅延の所を3年にすれば十分かと思っていたのだが、後ろにゼリア帝国がいるとなればもっと大幅な増額が必要だと判断して10年相当の金額を請求する事にしたのだ。

 遅延金で虹金貨1200枚(120億円)、賃貸料で虹金貨120枚(12億円)となり、その額何と虹金貨1320枚(132億円)だ。

 大国でも相当な金額だが、小国であるベナマス王国にとってみればとてつもない大金であり、万が一にもゼリア帝国の援助によってナスカ王国が一括で支払い、ナスカ王国が手に入らなかったとしても十分な成果が得られると考えていた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「……虹金貨1320枚(132億円)だそうですよ、メバリアさん。中々のやり手ですね、あの国王は。詐欺ですが」

「ハハハ、全くこちらの思い通りに事が運びすぎて怖い位だ、リージョ殿。公式な書類である請求書がこちらに来れば、大きな損害を故意に起こしたと証明できる事になるからな。結果的に本当の遅延金も払わなくて良いと言う事か。流石はクロイツ殿、頼りになる異母弟だ!」

 王城の一室で、高級宿ではしゃいでいるベナマス一行の情報を余す事無く吸い上げてメバリアに報告しているリージョ。

「まさか此処まで予想に反しない行動をするとは、あの国……シス連合国の重鎮があの国を不安がっていた事も理解できますな」

「アントニア殿の言う通りだ。我がナスカ王国ももう少し安定した暁には是非とも貴殿の国であるゼリア帝国と同じように他国とも友誼を結びたいと思っている」

 クロイツの提言通りに事が進んで心が非常に軽くなっているメバリアは、ゼリア帝国から派遣されている文官のアントニアとも今後について楽しそうに話している。

 そして再び翌朝……またも早朝からベナマスが城に現れる。

「お待ちしておりました、ベナマス殿。どうぞお座りください」

 ベナマスからしてみれば、目の前の多少遜っているメバリアが請求書を見て腰を抜かすのではないかと期待している。

「では失礼して。朝も早くから申し訳ありませんな。当方としてもメバリア陛下が気を揉んでいると思ったので、少しでも早く現状を理解していただいた方が良いだろうと言う親切心からですので、ご容赦ください」

 本当は少しでも早くベナマスとしての結論、このナスカ王国を利息と言う名目で支配下に置くのか、ゼリア帝国の援助の元に一気に大金を手に入れてシス連合国に戻るのかを知りたかっただけだ。

「それは大変ありがたい。こちらとしてもモヤモヤしたままでは今日の業務に差し支えるからな。では早速請求書とその内訳を見せて頂きたい」

「こちらです」

 恭しく請求書を差し出して、メバリアの表情の変化を楽しみにしているベナマスとその一行だが……確かにメバリアの表情は変わったのだが、何故か笑みを浮かべていたのだ。

「如何しましたか?復興中のナスカ王国には少々値が張ると思いますが、大変申し訳ありませんが契約は契約ですから、そこはきっちりと守って頂く必要があります。まぁ、この程度の事は言わず共ご理解いただけていると思いますが」

 あえて少々煽るように言い始めるベナマスだが、ここでもやはり予想の返しとは異なる言葉がメバリアから返ってくる。

「確かにベナマス殿の言う通り、契約は必ず守るべきだと思う。私はそこの所に意見の一致を見て非常に嬉しい限りだ」

「??そ、そうでしょうとも。そうでなくては、国家元首は務まりませんからな。ではメバリア国王陛下!今後どのようにお支払いいただくのか、国家元首としてご回答いただきましょうか」

 強気になり始めるベナマスなのだが、メバリアは相変わらず笑みを浮かべたまま請求書をゼリア帝国の文官であるアントニアに渡す。

「アントニア殿。この請求書が公的に認められるか……ベナマス王国の、ベナマス国王発行のものであると確実に認められるかを判断いただきたい」

 ベナマスは、メバリアのこの発言で間違いなくゼリア帝国がメバリア率いるナスカ王国に対して援助をするものだと確信し、今回の成果はナスカ王国を支配下に置くのではなく大金を得て帰還する方になったのかと判断した。

「……間違いなく国王発行、王国発行のものであると認識できます。つまりは公的な証文になり得ますな」

「それはそうでしょう。国王であるこの私が作成したのですから、そうでなくては困ります。契約とはそう言った信頼関係から成り立つのですよ?」

 少し呆れたような表情を作って諭すように告げるベナマスだが、口元がにやけるのは抑えきる事が出来ておらず、お供の者達も笑みを浮かべている状態だ。

「では、この請求書に対してのナスカ王国の判断をお伝えする。もちろん契約書に則った形で不手際なく事を進めるので、そこは安心してもらいたい」

 貰うものを貰えば、あとはさっさと帰還するだけだと考えているベナマス一行だ。
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