湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
132 / 159

(131)

しおりを挟む
 神保のダンジョンのレベル、そして以前は召喚直後の弱いダンジョンマスターを積極的に保護していた事、その保護していた対象、今この場所に元々ダンジョンを作っていた二人も庇護下にあったのだが、人族に滅ぼされてしまった事……等を含めて全て湯原セーギ水野カーリに説明したミズイチとハライチ。

「悲しいですね。人族はダンジョンから糧を得ると共に糧を与えます。ですから、ダンジョンマスターが人族に討たれてしまうのは……やむを得ないのかもしれませんが、そこに召喚冒険者と国家が絡んでくるとなると、思う所はあります。セーギ君はどうですか?」

「確かにカーリの言う通りだね。俺達がこの場所に安定してダンジョンを作る事が出来たのも、ダンジョン跡地があったから。そこを考えると、神保と言う人には感謝する必要があるのかもしれない。力を貸すと言っても無駄に人族を襲うような事には手を貸したくないし、どうするか」

セーギ様、カーリ様。今の所は水元の死亡によって警戒態勢を上げているので、ダンジョン外への侵攻等は考えていないようです。今後神保がどのように動くのかを見極めてからでも対応は遅くないと思います」

 スラエの分裂体が神保のダンジョンに潜って常に情報を収集できる状態になっている為に言える言葉ではあるが、一先ずはこの場の全員が同意して様子を見る事にした。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「水元が死ぬなんて……あの三原と岩本と言う召喚冒険者、相当力をつけたに違いないわね。改めてゴーストをつけたから弦間と淀島は安全でしょうけど、私の安全が少々脅かされるかもしれないわ。最近は内包魔力の溜まりも凄く悪いし……あの戦闘の影響もあるけれど、湯原と水野のダンジョンに人が流れたのが痛いわね。まさかダンジョン内部に人族の居住空間を作るなんて、どんな発想かしら。信じられないわね」

 近くにレベル99に至っている<淫魔族>、<光族>、<狼族>の眷属三体がいるにはいるのだが、それでも神保は攻撃に打って出た場合には眷属も出撃させることになると思っているので、戦力に不安があった。

「神保様。私の知識・・によれば、今まで得た情報から湯原と水野のダンジョンは我らダンジョンに匹敵するほどの力を持っていると思われます。ここは慎重に行動されるのが良いでしょう」

 <淫魔族>であるインキュバスの男が自ら・・進言している。

 眷属召喚当初にはやはり信頼関係を得る事が出来ない関係だったが、他のダンジョンマスターを保護する辺りから性格も穏やかになり、徐々に信頼関係が構築されて今に至っている。

「じゃあ、どうするのかしら?時間が経過するにつれて向こうの戦力は増すばかりよ?」

「仰る通りです。ですが、あのダンジョンマスターは極めて冷静であると判断していますので、同じ立場である神保様の事情を話せば敵対する事は無いかと思います」

「それが出来れば苦労はしないわよ。ダンジョンマスターなんて配下にでもしない限り、そうそう会話なんてできないでしょう?」

 一般的には、同じダンジョンマスターと言う立場と言っても敵対する可能性が高く、神保の言っている事は正論だ。

 ここで力のなくなった淀島や弦間を送るような事はしない。

 やはり根っこは庇護下にある者達を守ると言う心が消え去っていないのだ。

「ですので、私が直接侵入してみようと思います。<淫魔族>で弱点はあるとは言えレベル99ですから、向こうのマスター側には私が侵入したとの情報はすぐに流れるはずです」

「危ないわよ!向こうも相当力があるんでしょ?最悪は消されるのよ?二度と召喚出来ないのよ?理解しているのかしら」

「それも承知の上です。ですが私の考えでは突然襲い掛かられる事は無いでしょう。今迄仕入れた5階層までの情報のなかで、3階層までは攻撃もなければ罠もありませんし、1階層にはダンジョンの関係者が受付をしているほどですから。恐らくそこで事情を話せば即向こうのマスターには伝わるでしょう。そこからは……運任せの所は否めませんが、きっと大丈夫です」

 その全てをスラエの分裂体に聞かれているとは知らない<淫魔族>のインキュバスは、何とか主である神保を説得して一人湯原と水野のダンジョンを目指して移動する。

 夜に移動すれば力は全て出し切れるので、レベル99の力を使って一気に隣国のコッタ帝国まで移動してダンジョンに入って行く。

「アレが受付ですか。ここが勝負の分かれ道ですね。何とか神保様の為にこの身を犠牲にしても敵対を避けて頂かなければなりません」

 一階層侵入直後の大きな建屋に向かってできている長い列に律儀に並びながら一人呟くインキュバス。

「少しお話させていただきますので、こちらへどうぞ。神保様の代理人様」

 列に並んでいるインキュバスに対して突然話しかけたのは、受付の一人である<光族>のヒカリ。

 スラエからの情報の他に、侵入者に対して完全な鑑定を行っているアイズの情報もあるので声をかけたのだ。

 インキュバスは表情には出さずに、やはり相当力があるとだけ認識した上で黙ってヒカリについて行く。

 いつもの通りに裏手に回って一つの部屋に入ると、まるで空気が自分を襲って来るかのような錯覚に見舞われるインキュバス。

 部屋の一番奥の席には湯原セーギ水野カーリがおり、護衛の為にデル、レイン、チェー本体、スラビ本体が来ている。

 特に殺気を出している様子がない状態であるのは間違いなく、逆に言うとその存在だけでレベル99の自分がこれほど圧倒されてしまった事で、覆しようのない戦力差があると理解できてしまう、頭の回転が早い<淫魔族>であるインキュバス。

 ここが踏ん張りどころだと思い、優雅に一礼する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...