湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
55 / 159

(54)

しおりを挟む
 一応寝る時には全員が各ダンジョンコアに戻ったのだが、ハライチに手を出すなとさりげなく水野から釘を刺されていた湯原。

 もとよりそんなつもりは一切なかったのだが、その時の水野の背後には阿修羅のオーラが見えたような気がしたので、余計な事は言わずにいた。

 翌朝、それぞれのコアルームではハライチとミズイチが活動を開始しており、メイドよろしく自発的に・・・・朝食の準備を終え、ダンジョンの構想案も地面に複数描かれていた。

 これが最も<淫魔族>の力を有効に発揮できている時の彼女達の行動の一つなのだが、眷属を強制的に外して主従契約をするなどとは他のダンジョンマスターでは不可能だ。

 そもそも、睡眠を必要としない者達に柔らかい寝床を準備する事自体、今迄どのダンジョンマスターすら実行する事は出来なかった。

 これに近い環境にできたダンジョンマスターは過去に二人、この場にダンジョンを構えていた二人だが、ここまでできたのは歴史上初めての快挙だったりする。

「おはよう、皆。おっ、良い匂いがすると思ったら、悪いね。無理はしないように頼むよ?」

「はい。ありがとうございます、主様」

「「「「おはようございます(なの)!」」」」

 そこに、同じように準備してくれたのであろう食事を持った水野、レイン、プリマがミズイチを伴って乱入してきた。

「あっ、やっぱりハライチちゃんもダンジョンの構想を考えてくれていたのですね。フフ、ミズイチちゃんと同じですね。ありがとうございます」

 地面に描かれているダンジョンの構想を見て水野が感心していると、耳をピコピコさせながらプリマも口を開く。

「ミズイチさんは凄いなの。私はさっぱりわからないなの」

 そのフォローなのか、デルとレインも続く。

「私達ではこれほどの知識はありませんので……カーリ水野様とセーギ湯原様の安全につながるこの力、本当に感謝しています」

「レインの言う通りです。某を含めて皆、どちらかと言うと肉体派とでも言うのでしょうか、知識に対しては非常に弱い所がありますので」

 水野のコアルームに残っているスラエを除いて全員が集合しているこの場で、再び昨晩のように無条件で褒められるハライチとミズイチ。

 こうして朝食が始まったのだが、やはり話はダンジョンの話になる。

「で、レベル40になると長寿命になると言う恩恵を得られる。逆に言うと、そこに至れる者があまりいない……と言う事なんだよね?俺達は、魔物を二階層に保管・吸収していただけなのに、なんでこれ程レベルが上がったのか分からないんだ」

「そうですよね。冒険者さん達に手は出していませんし、おかしいですよね?」

 今の時点で、湯原のダンジョンレベルは41、水野のレベルも40になっており、既に二人共長寿の証である金目金髪に変化している。

 その説明を受けて何故これ程の力を得ていたのかを考えたのだが、知識が無い為に可能性すら思い浮かばなかった。

湯原様。少々確認させて頂けますか?今までのダンジョンのレベルアップには、魔物を捕縛して二階層に幽閉、その後吸収。この作業のみと言う事で宜しいでしょうか?」

 ハライチの問いに湯原と水野共に頷くと、<淫魔族>のハライチとミズイチは互いを見て頷いており、恐らく各自の知識による推測が正しいと確認したのだろう。

「では、推測にはなりますが、ほぼ間違いないと思います……一つ確認をさせて下さい。捕縛する際に、元より弱っていた魔物はおりましたでしょうか?」

 これについては作業を行っている眷属達しか分からないが、代表してデルが回答する。

「……今確認した所、複数回瀕死の魔物が倒れているのを連れ帰った事があるようです」

 その答えを聞き、再びハライチが説明を始める。

「わかりました。であれば、他のレベルの高いダンジョンマスターの眷属、または所属の魔物が瀕死の状態の所を連れ帰り、ダンジョンの糧にしたと言う事で間違いないでしょう。これ以外には考えられません」

「ハライチの説明の通りで、ここまでレベルが上がると言う事は、その相手……魔物か眷属かはわかりませんが、相当レベルが高かったはずです。当時の皆様では、申し訳ありませんが正面から行っては確実に返り討ちにされているレベルだと想定されます」

 補足するように恐ろしい事をサラッと言うミズイチ。

「……でも、なんでそんな奴らが瀕死で?」

 湯原の疑問は当然だ。

セーギ湯原様。この世界、召喚者の冒険者とダンジョンマスターは対極の存在と言われておりますが、ダンジョンマスター同士も敵になり得るのです。その時の瀕死の……眷属だと仮定しますが、眷属に止めを刺さなかったと言う事は、眷属を糧にする冒険者が相手ではないと言う事です。そして、その者よりも遥かにレベルが上であれば瀕死の眷属に止めを刺しても糧にはならない同じ位置にいる存在、他のダンジョンマスターの手先によるものだと判断できます」

「え?ミズイチちゃん。その……私達のレベルを大幅に上げてくれた眷属よりも、もっと上の存在が、同じ立場のダンジョンマスター私達を狙っていると言う事なの?」

 不安そうになる水野。

水野様。とあるダンジョンマスターを狙っている他のダンジョンマスターがいると言う事は確実だと思います。申し訳ありません。皆様の安全に直結する事ですので、安易に楽観的な事を申し上げる訳にはまいりません」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...