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プロローグ

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 ここは番のダンジョンと呼ばれている不思議な空間の、とある浅めの階層……

「あ、おはようございます!セーギ様!カーリ様!全員整列!!」

「おはよう、皆。って、毎日言っているけど、一々並んでくれなくても良いし、作業の手を止める必要もないから」

「そうですよ。皆さん大変でしょうから」

 ダンジョンのとある階層は既に村と言うよりも町と言った方が良い状態となっており、ダンジョン内部にも拘らず、一般的・・・にはダンジョンを攻略する事を目標としている冒険者ギルドまで存在している。

 だが、ダンジョンの中なのにこの階層に危険な魔物、獣の類は一切存在しておらず安全だ。

「お二人のおかげでこうして危険が無く暮らせているのですから。これは私達の最低限のケジメです!」

「そうです。お二人のお力で幸せに暮らせているのですから当然の事です!」

 ダンジョン内部で生活をしている者達は、この階層で酪農・農業・林業等を営んで平和に暮らしている。

 時折薬草採取を行っているのだが、もちろん危険は一切ない。

 冒険者と呼ばれている魔物や獣を倒して生活の糧にする人材もいるのだが、そう言った者達は依頼を受けると下の階層に移動して活動する。

 そこには階層が深くなる程強い魔物が存在しており、自らの実力以上の階層に進むと命を落とすのだが、逆に言うと、実力に合った依頼を受けている限りは絶対に安全だという事だ。

 この部分の見極めはダンジョン内部にある冒険者ギルドが行っており、事実ここ十年程は依頼中の死亡事故は発生していない。

「今日も平和だね、カーリ。ここのギルドも朋美さんに任せておけば安心だしね」

「はい。全部セーギ君のおかげです」

 呑気に話している二人の後ろには護衛なのか、小さな角を持つ屈強な男と七色の髪を持つ美しい女性が控えており、周囲を警戒しているように見える。

 二人が一階層の入り口にある冒険者ギルドに立ち寄ろうとした所……

「アンタ達のせいで!」

 突如建屋の影に隠れていた女性が、セーギとカーリと呼ばれている二人に襲い掛かった。

「セーギ様!カーリ様!」

「そいつを取り押さえろ!!」

 周囲の冒険者やギルドの職員達が二人の安全を確保しようと動くのだが、襲われかけている二人は驚く素振りも見せないし、焦る事も一切ない。

 背後に控えている男女も、この状況下にあって主人を守る立ち位置に移動する事もない。

……シャララララ…… 

「う…ぎゃーーーー」

 突然地中から鎖が出てきて、女性にキツク絡みついた。

「またあなたですか。懲りもせずによくやりますね」

 がんじがらめにされて一切動く事が出来ずに倒れている女性は、射殺すほどの視線をセーギとカーリと呼ばれている二人に向けている。

「全てが自業自得だよ。まっ、頑張ってくれ」

 セーギと呼ばれている人物は襲ってきた人物に興味が無いのか、さっさとギルドに入ってしまう。

 この場に残っているカーリと呼ばれている人物は、鎖から逃れようともがいている女性の近くでしゃがむと、笑顔でこう告げる。

「貴方のおかげで私達は強くなったとも言えます。ですから、貴方にこれ以上今ここで何かをする事もありませんが、余りにもしつこいと……下層に送りますよ?」

 その笑顔を見てガタガタ震えてしまう襲撃者の女性。

「わかっていただければ良いのです。契約者が誰だか……想像はつきますが、早く解放されると良いですね?」

 奴隷の紋章である左手首の黒い痣を見てこう言うと完全に興味が無くなったのか、護衛の七色の髪の女性と共にセーギと呼ばれていた男の後を小走りで追っていくカーリと呼ばれている女性。

 その直後、鎖は襲撃者から離れて地中に潜って消えて行く。

 カーリと呼ばれている女性が襲撃者に何もしないと宣言している以上、この場の職員や冒険者も今のところは何かをする事は無かったのだが、まるで親の仇を見る様な視線を向けており、その視線に気が付いた襲撃者の女性は逃げる様にダンジョンの上層に向かって行った。

 本当に稀にこのようなトラブルも有るのだが、誰しもが平和に暮らせている番のダンジョン。番と言っても入り口は一つしかないが……

 この中で生活をしている訳ではない外部の冒険者や他のダンジョンを管理している存在達から常に狙われているのだが、内部で生活している人物達を守りつつもそんな侵入者達を容易に迎撃できる程の力を持っている二人のダンジョンマスター。

 この力を得るまでには相当な試練が有ったのだが……

 そんな試練の数々を乗り越えて来た二人のダンジョンマスターであるセーギとカーリの話をしてみたいと思う……
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