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9.史上最悪のデート⑦
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フェイトが姿を見せるなり、グレースはくるりと体を一周させ、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうざいます。すごく気に入ってしまったわ!」
フェイトは一瞬驚いたように目を見張った。その視線はグレースの顔やウエストのサコッシュや帽子のリボンやあちこちをさまよう。
その反応に、もしかして彼のイメージとは違った!?とグレースは息を呑んだ。だがすぐにフェイトは目を細め「よく似合ってる」とほめてくれたので、グレースはホッと胸をなでおろした。
「よかった。慣れないことをしたから気に入るか心配だったんだ。まさか女性への贈り物でセバスチャンを頼ることになるとは思わなかったが」
セバスチャンの前では幾分か年齢なりのやんちゃさを取り戻すようで、フェイトはいたずらっぽくセバスチャンを見た。それに対してセバスチャンは澄ました顔を返す。
「私は侍女たちが話していた話題の店を思い出しただけで、お選びになったのはフェイト様です」
「もちろん、グレース嬢に似合うものを必死に選んださ。さあ、完全に暗くなる前に送ろう」
フェイトはグレースに腕をとらせ、馬車へエスコートした。
乗り込む時にグレースがやや慎重になると、同じような顔をしてこちらを見ているフェイトと目が合い、二人で苦笑した。
窓の外は、黄昏から夜の闇色に移ろうとしていた。
一日が終わってしまう。
いつもなら一日の楽しかったことを振り返るか、ただ次の朝の訪れを楽しみに思うだけなのに、今日はどこか物足りなかった。
けれど、それは空の変化が惜しいわけではないということはわかっていた。
フェイトの前にいると、どうにもならない胸の締めつけを感じる。
この時間を惜しむようにグレースは口数を減らした。
「ありがとうざいます。すごく気に入ってしまったわ!」
フェイトは一瞬驚いたように目を見張った。その視線はグレースの顔やウエストのサコッシュや帽子のリボンやあちこちをさまよう。
その反応に、もしかして彼のイメージとは違った!?とグレースは息を呑んだ。だがすぐにフェイトは目を細め「よく似合ってる」とほめてくれたので、グレースはホッと胸をなでおろした。
「よかった。慣れないことをしたから気に入るか心配だったんだ。まさか女性への贈り物でセバスチャンを頼ることになるとは思わなかったが」
セバスチャンの前では幾分か年齢なりのやんちゃさを取り戻すようで、フェイトはいたずらっぽくセバスチャンを見た。それに対してセバスチャンは澄ました顔を返す。
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「もちろん、グレース嬢に似合うものを必死に選んださ。さあ、完全に暗くなる前に送ろう」
フェイトはグレースに腕をとらせ、馬車へエスコートした。
乗り込む時にグレースがやや慎重になると、同じような顔をしてこちらを見ているフェイトと目が合い、二人で苦笑した。
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一日が終わってしまう。
いつもなら一日の楽しかったことを振り返るか、ただ次の朝の訪れを楽しみに思うだけなのに、今日はどこか物足りなかった。
けれど、それは空の変化が惜しいわけではないということはわかっていた。
フェイトの前にいると、どうにもならない胸の締めつけを感じる。
この時間を惜しむようにグレースは口数を減らした。
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