迷探偵湖南ちゃん

迷井花

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10.追い詰める女

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 昼のチャイムが鳴り響く中、坂浦の研究室の扉をノックをしかけ、湖南はふとその手を止めた。
 
 ジャケットのポケットには、あの幽霊が見える薬が入っている。
 眞木の作戦では、一太の幽霊を見せ動揺した坂浦に自白させるらしいが。

『本当にそんなんで上手くいくんですか?』
『あいつの危機感を大いに煽った後ならな』
『私だけじゃ危機感ないと思うんですけど……』 
 
 そういった湖南に眞木は憎たらしい笑顔で言った。

『キミ一人だからいいんだ。最初から僕がいたらただ警戒するだけだろう。
 大したやつじゃないと油断させてから落とす。相手の動揺を誘うのに一番効果的な方法だ』
  
 ただしタイムリミットは30分。それで万が一うまくいかなければ戻ってこいと言って、送り出された。
 
 私に演技ができるとでも――!?
 
 不安しかないが、ここまで来た以上、眞木が書いた脚本を信じるしかなかった。
 
「あれ?コナンちゃん、どうしたの?」

 覚悟を決める前に、突然内側から扉が開かれ、湖南はつんのめるようにして坂浦の研究室へ足を踏み入れた。

 もういつもこんなのばっかり!
 湖南はイテテとひねった足を気にしながら、眞木に用意された台本を思い出しながら、口を開いた。
 
「えーと、いつでもお話聞かせてくださるとおっしゃってましたよね」
「ああ、それで遊びにきてくれたんだ? どうぞ」 

 あっさりと部屋に通してくれた坂浦は、椅子に積み上げられていた資料をどかし、湖南が座るスペースを作ってくれた。

「散らかっててごめんね。今研究が佳境でさ」
「そうみたいですね」

 二日前に来た時よりさらに雑然とした部屋の様子に目を配りながら、湖南はうなずいた。坂浦も目の下のクマが濃くなったように感じる。

「最近は来客がくることもほとんどないから、お茶とかあったかな」

 慣れない足取りでミニキッチに向かう坂浦に「私、淹れますよ」と湖南が後を追う。これも眞木の思惑通りだ。

「編集部でもお茶係なので任せてください」
「へえ、今時女性のお茶汲みとかあるんだ?」
「下っ端の役目なんです」

 後輩がなかなかいつかないので、まだしばらくは湖南のお茶係は続きそうだった。雑談を交わしながら、湖南は紅茶に薬を入れるのを忘れなかった。

 湯気の立った紅茶を白いテーブルの上へ置く。こちらは眞木の研究室のものとは違ってダイニングテーブルのようなタイプだった。

「ありがとう」
  
 坂浦はそういって椅子を引いて、湖南の向かい側に座った。
 
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