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承『記憶喪失の《討伐者》』
第35話 決戦9「爆発音」
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薄暗い通路を注意しながら歩み進める。
先から聞こえていた戦闘音が一切聞こえなくなった。戦闘が無事に終わったのならいいが、勝ったのはどっちだ。全てはスカイとドラゴン様に委ねられている。頼むから、無事でいてくれ。
それにしてもこの通路、終わりがない。かれこれ数分間ずっと歩いているが、先が見えない。
「この通路、本当に合っているのか?」
アレアもこの道を疑っていた。
来た道を戻るべきか、それとも先に進むべきか、この選択は私に委ねられた。
一旦、立ち止まる。壁によっかかり、深く考えることにしよう。
ササッ……
砂のような何かが零れ落ちる音が聞こえた。通路からではない、また近くに空洞がある。
足元……には何も無い。ならば天井……には何かがある。スイッチか?
2人で協力して天井のスイッチを押すと、どこからか大きな音がした。方向的には……私たちが来た方向から聞こえたな。
少しだけ戻ると、少し前までは壁だったところに通路が開いていた。こっちの通路は少し明るく、先に階段も見えた。出口が近い……!
階段を上ると、地上へ続く扉らしき物が見えた。鍵は必要なかったが、複雑な構造をしていて、簡単には開けられないようになっていた。
ガチャガチャ……カチャン……
「開いた」
アレアと協力し、何とか開けることができた。かかった時間は僅か10秒。グリーランでの修行の成果が出ているな。
扉を開けて外に出てみると、ここは森の中。ユー・エンドの地下室と同じやり方。かつてこの地下室に出入りしていた人間も、私たちと同じように、外に情報が一切漏れないように警戒をしていたのだろう。
この通路を見るだけで、ユー・エンドでの事件が思い出させられる。二度と起きてはいけない、起こしてもいけない。
森の外に出てみると、いつの間にか雨が降っていた。通路の中は防音で全く音が聞こえなかったから知らなかったが。それにしても雷が落ちた跡もある、ここまで局地的に落ちることなんてあるのか。
そうして見つけた、傷だらけのドラゴン様が横たわっているのを。
思わず声を出しそうになったが、それよりもアレアが何かを見つけた。
「ガイアさん!」とアレアが叫んだ。
赤く染まった草原に、屈強な男ガイアが立っている。その横には、マキシミと思われる男が横たわっていた。その前にドラゴン様が傷だらけで倒れているという状況だが、ここにはスカイが居ない。
マキシミを倒したのか。よかった。
ガイアに駆け寄ろうとすると、マキシミと思われる男が強く赤く発光した。奴の目からも口からも、穴という穴から赤い光が見える。
これは……死ぬ直前に下手な情報を漏らさないように、機密保持として自爆する奴らと同じ手口だ。となると……危ない!
急いでアレアの首根っこを掴んで引き戻そうとしたものの、間に合わなかった。
「ガイ……ア!」
ドゴォン!!
----------
巨大な爆発音で、俺は目覚めた。
俺の名前は……スカイで合っているよな?
ここは……マキシミの城の跡地で、何がどうなったんだっけ。ドラゴンと共に奴を倒そうと努力したが、その努力も虚しく……ドラゴンは死んだんだった。
更に俺も奴の足に……なら、何で俺は生きている? 奴の足に踏み潰された時の感触も記憶もある、だが生きている。
自分の身体を見渡すも、何一つ傷がついていない。背中に差していた剣や盾やマントは消え、それどころか上半身の服は破れたのか無くなっており、直接肌が見える。
上半身裸の俺が目覚めたの場所は、草原。城の跡地からは離れており、周りには赤く染まった草が生えている。城の瓦礫の山の方に走ると、より赤く染まった草や地面が見えた。間違いない、ここで奴と戦った。
所々赤い地面が円形に抉れており、若干歩きにくい。1番抉れている地形の中心部には1人の男が横たわっていた。
傷だらけだがガイアさんだ、間違いない。全身赤く染まっていた。モンスターの血を全身に浴びたようなものだ。彼の元に駆け寄って、呼吸しているかどうか確認する。頭を持ち、口のところに耳を近づけて、彼の胸が上がっているかどうか確認する。
……ない、呼吸していない。
どうすれば呼吸が再び戻るかなんて知らない。そうだ、ヘイトリッドとロックは何処に行ったんだ。あの2人なら、絶対分かる。そうだよな。
ドラゴンの元にも駆け寄る。ヤツは完全に息を引き取っており、既に身体は青白く硬直していた。ここから助かる見込みはもうないだろう。
ヤツの陰に2人の人間がいた。間違いない、ヘイトリッドとロックだ。彼らもまた横たわっていたが、彼らは呼吸をしている。どうにか起こせないか。
「おい、大丈夫か?」と顔をペチペチ叩きながら彼らを起こす。
「ここは……?」
よかった、ヘイトリッドもロックも無事に起きた。彼らもまた傷だらけだが……。
「生きていたのか?」
ロックは形相を変えて俺に尋ねる。
「あぁ、何とかな」と返答すると、彼らはほっとした様子を見せた。
「それよりもガイアさんを……!」
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薄暗い通路を注意しながら歩み進める。
先から聞こえていた戦闘音が一切聞こえなくなった。戦闘が無事に終わったのならいいが、勝ったのはどっちだ。全てはスカイとドラゴン様に委ねられている。頼むから、無事でいてくれ。
それにしてもこの通路、終わりがない。かれこれ数分間ずっと歩いているが、先が見えない。
「この通路、本当に合っているのか?」
アレアもこの道を疑っていた。
来た道を戻るべきか、それとも先に進むべきか、この選択は私に委ねられた。
一旦、立ち止まる。壁によっかかり、深く考えることにしよう。
ササッ……
砂のような何かが零れ落ちる音が聞こえた。通路からではない、また近くに空洞がある。
足元……には何も無い。ならば天井……には何かがある。スイッチか?
2人で協力して天井のスイッチを押すと、どこからか大きな音がした。方向的には……私たちが来た方向から聞こえたな。
少しだけ戻ると、少し前までは壁だったところに通路が開いていた。こっちの通路は少し明るく、先に階段も見えた。出口が近い……!
階段を上ると、地上へ続く扉らしき物が見えた。鍵は必要なかったが、複雑な構造をしていて、簡単には開けられないようになっていた。
ガチャガチャ……カチャン……
「開いた」
アレアと協力し、何とか開けることができた。かかった時間は僅か10秒。グリーランでの修行の成果が出ているな。
扉を開けて外に出てみると、ここは森の中。ユー・エンドの地下室と同じやり方。かつてこの地下室に出入りしていた人間も、私たちと同じように、外に情報が一切漏れないように警戒をしていたのだろう。
この通路を見るだけで、ユー・エンドでの事件が思い出させられる。二度と起きてはいけない、起こしてもいけない。
森の外に出てみると、いつの間にか雨が降っていた。通路の中は防音で全く音が聞こえなかったから知らなかったが。それにしても雷が落ちた跡もある、ここまで局地的に落ちることなんてあるのか。
そうして見つけた、傷だらけのドラゴン様が横たわっているのを。
思わず声を出しそうになったが、それよりもアレアが何かを見つけた。
「ガイアさん!」とアレアが叫んだ。
赤く染まった草原に、屈強な男ガイアが立っている。その横には、マキシミと思われる男が横たわっていた。その前にドラゴン様が傷だらけで倒れているという状況だが、ここにはスカイが居ない。
マキシミを倒したのか。よかった。
ガイアに駆け寄ろうとすると、マキシミと思われる男が強く赤く発光した。奴の目からも口からも、穴という穴から赤い光が見える。
これは……死ぬ直前に下手な情報を漏らさないように、機密保持として自爆する奴らと同じ手口だ。となると……危ない!
急いでアレアの首根っこを掴んで引き戻そうとしたものの、間に合わなかった。
「ガイ……ア!」
ドゴォン!!
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巨大な爆発音で、俺は目覚めた。
俺の名前は……スカイで合っているよな?
ここは……マキシミの城の跡地で、何がどうなったんだっけ。ドラゴンと共に奴を倒そうと努力したが、その努力も虚しく……ドラゴンは死んだんだった。
更に俺も奴の足に……なら、何で俺は生きている? 奴の足に踏み潰された時の感触も記憶もある、だが生きている。
自分の身体を見渡すも、何一つ傷がついていない。背中に差していた剣や盾やマントは消え、それどころか上半身の服は破れたのか無くなっており、直接肌が見える。
上半身裸の俺が目覚めたの場所は、草原。城の跡地からは離れており、周りには赤く染まった草が生えている。城の瓦礫の山の方に走ると、より赤く染まった草や地面が見えた。間違いない、ここで奴と戦った。
所々赤い地面が円形に抉れており、若干歩きにくい。1番抉れている地形の中心部には1人の男が横たわっていた。
傷だらけだがガイアさんだ、間違いない。全身赤く染まっていた。モンスターの血を全身に浴びたようなものだ。彼の元に駆け寄って、呼吸しているかどうか確認する。頭を持ち、口のところに耳を近づけて、彼の胸が上がっているかどうか確認する。
……ない、呼吸していない。
どうすれば呼吸が再び戻るかなんて知らない。そうだ、ヘイトリッドとロックは何処に行ったんだ。あの2人なら、絶対分かる。そうだよな。
ドラゴンの元にも駆け寄る。ヤツは完全に息を引き取っており、既に身体は青白く硬直していた。ここから助かる見込みはもうないだろう。
ヤツの陰に2人の人間がいた。間違いない、ヘイトリッドとロックだ。彼らもまた横たわっていたが、彼らは呼吸をしている。どうにか起こせないか。
「おい、大丈夫か?」と顔をペチペチ叩きながら彼らを起こす。
「ここは……?」
よかった、ヘイトリッドもロックも無事に起きた。彼らもまた傷だらけだが……。
「生きていたのか?」
ロックは形相を変えて俺に尋ねる。
「あぁ、何とかな」と返答すると、彼らはほっとした様子を見せた。
「それよりもガイアさんを……!」
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