【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。

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45話 騎士道ではない戦い方

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 イデラ王国のシーラー街からティス町までは、馬車で半日あれば着くが、歩きだと大体三日はかかる。

 そこに僕達は寄り道したりすると、四日以上かかる計算になる。

 二日目の夜。

 ブレインさん達パーティーによる授業が始まった。

 ミレイちゃんはシズルさんと【呪文魔法】や魔法全体について。

 セレナはエリナさんとレンジャーとしての動きや知識を。

 僕はブレインさんと実戦訓練だ。

 何だか誰かと対峙するのは久しぶりだ。

「ほぉ……てっきり、店長は非戦闘員だと思って居tあんだけど、まさかここまでオーラがあるとはな」

「まあ、追い出されましたが、実家が厳しかったので」

 もちろん、才能アプリに【中級武術家】が入っているからでもある。

 たった2GBにしては性能が非常に高い。

 これを上級や最上級に上げたらどれだけ強くなるのか想像もつかない。

 まあ、今はそれよりもレシピが欲しいけど。

「さあ! どこからでも打ってきてくれ!」

 剣術ではなく、武術のまま挑む。

 というのも、僕自身があまり剣術を習いたいと思わないからだ。

 武術をインストールした理由も、魔物を傷つけずに倒すためであって、戦うためでもないが、せっかくなら覚えた武術のまま、経験を積みたい。

 ライラさんが「ふぁいと~」と応援してくれる中、僕とブレインさんの実戦訓練が始まった。

 ブレインさんに近づいて、右手に気を纏わせて叩きつける。

 鞘に入ったままの剣を持ったブレインさんは、それを巧みに横に流す。

 剣を持つ人とこういう実戦訓練を行うのは久しぶりだが、ブレインさんの高い技量が一瞬で理解できた。

 相性が良いからCランク冒険者だよと言っていたけど、ブレインさんだけじゃなく、シズルさんやエリナさんの実力から、一人でもCランク冒険者になれるんじゃないかってくらい、強さを感じる。

 特にブレインさんの剣術。

 騎士のそれとはまた違って、野生みのある剣術ながら、非常に繊細な動きをする。

 僕の両手両足による武術の攻撃を、いとも簡単に受け流し続ける。

 騎士の戦いからは、基本的に正面から叩き込むか、カウンターだ。

 だが、ブレインさんの戦うスタイルはどちらでもなく――――相手の攻撃を流し続けて、相手を疲れさせる戦法にみえる。

 これが訓練じゃなければ、戦い方も変わるかも知れない。

 けれど、動き一つ一つで感じるのは、僕の動きを全て見切った上で、必要最小限で動く技量の高さだ。

 剣士ってパワー型ばかりだと思っていたら、こういう技巧型もあるんだなと感動すら覚える程だ。

「中々良い動きをするじゃないか!」

「これでも生まれながらずっと武系でしごかれましたので」

「うむ。動きのどこかに騎士道を感じるな。でも君自身はあまり気に入ってないんだな?」

「やっぱりわかります?」

「当然だ~これでもCランク冒険者だからな! がーはははっ!」

 それなりに全力で挑んでるのに、息一つ乱れることなく、大声で笑うくらい余裕があるようだ。

「では、次からこういうのを見せてあげるよ」

 今度はブレインさんから攻撃が始まった。

 というより、相手の攻撃を流すために・・・・・押し付ける・・・・・感覚だ。

 なるほど。騎士道からしたら、まさに――――邪道・・だ。

「どうだ? こっちの方が君には合うかも知れないな」

「ええ……! 少しずつ自分が戦いやすい感覚がわかるようです!」

 ずるいと言われるかも知れないけど、効率的なことを考えれば、騎士道はあまりにも真っすぐすぎる。

 それに比べてブレインさんの剣の筋は、とにもかくにも相手が嫌がる動きが多い。特に――――相手をおちょくる動きが多いのだ。

 これは相手を馬鹿にするのではなく、挑発して自分のペースに持ち込もうとしている。

「まさかここまで早く俺の動きを真似れるとはな……実はノアくんって戦いの才能があるんじゃないのか?」

「そうかも知れませんけど、ブレインさんの戦い方が性に合ってるみたいです」

 訓練を始めた頃よりも、一回り強くなった気がする。

 腕力が上がったとか、そういう類ではなく、戦法一つでぐっと強くなった感覚だ。

「よし。今日はここまで!」

「はいっ。ありがとうございました!」

 師匠に敬意を表してお辞儀をして、訓練が終わりを迎えた。
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