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44話 それぞれの師匠
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「「「お願いします! 店長!」」」
ブレインさんが僕に向かって土下座してきた。
「い、いや……そう言われましても…………」
二度目の野営。
さすがに僕の力に感づいた彼らは、理由や理屈は分からなくても、僕が美味しい料理を出していることに気付いた様子。
二日目の焼肉を堪能したブレインさん達は、事前に打ち合わせしていたかのように、自分達を護衛として雇って欲しいと頼んできた。しかも、護衛費用は全てご飯で良いという。
「実は俺達、美味しいものを食べ歩くのが趣味でな! 稼いで余った金は全部美味しいものを食べることに使っているんだ! 店長のご飯は今まで食べたどんな料理よりも美味しかった……! いや、美味しい! それにまだまだ隠している美味しい料理がある気がするんだ! 俺のこの鼻がそう言っている!」
どんな鼻だよ! ポンちゃんならまだしも、ブレインさんの鼻は普通の人のものでしょうに!
「うちは既に護衛がいるので……」
「!?」
「ほら」
僕の隣にちょこんと座っていたポンちゃんを抱きかかえて、彼らの前に見せる。
「僕達の守護神ポンちゃんです!」
『ポンデュガールだニャ!』
「飼い犬じゃなかったのか……?」
『誰が飼い犬ニャ!』
飼い猫と言われなかったから怒ったみたいな言い方すんな!
「うちの仲間です。僕とは会話ができる凄い子なんです」
「へ、へぇ……」
いや、そんな痛い子見る目やめてよ……?
「ということもあるので、護衛は必要ないので、お客様ならいつでも歓迎しますが、メンバーを増やしたいとかではありませんので……」
というか、Cランク冒険者となれば、冒険者の中でも上位冒険者として認められる存在だ。
こんなに凄い戦力が僕達なんかの護衛をしても、世界のためにはならないと思う。
彼らにはCランク冒険者らしく、色んな依頼をこなして、色んな人のためになってもらいたい。
「ですから僕達なんかの護衛をせず、依頼をこなしてください! 冒険者なんですから!」
「ううっ……わ、分かった…………じゃあ、こうして店を開いていなくても、店外で売ってくれるのはいいのか!?」
この人達…………付いてくる気だ…………。
「それなら問題ありませんが、うちのメニューは普通より高いですよ?」
「問題ない! Cランク冒険者ともなれば、それなりに収入があるからな! がーはははっ!」
「でもいつか尽きるでしょうし、毎食焼肉食べたら毎日銀貨一枚が消えちゃいますよ?」
「そ、それは…………」
「僕達は逃げも隠れもしませんが、まあ、暫くは東を目指して移動するので、食べたくなったら探してみてください」
「わ、分かった…………ひとまず、次の町までは一緒でもいいんだよな?」
「もちろん構いませんよ」
そもそも今からダメですとも言えないし、元々屋台というのは、どこでも売れるように作ろうかなと思っていたからな。
街のみで開くつもりもなかった。
「じゃあ、せっかくだから、次の町に向かう間はミレイちゃんに私が魔法を教えてあげるよ」
「わあ~! 本当にいいんですか?」
「もちろん。これだけ繊細な【自然魔法】を操れる人も中々珍しくて、中々教え甲斐がありそうね」
「店長!」
「ああ。僕は構わないよ。むしろ、魔法を教えてくれるなら大歓迎だ。それなら――――シズルさんには特別メニューをご馳走しなくちゃいけないな」
「「!?」」
シズルさんがニヤリと笑う傍で、焦った表情を浮かべたブレインさんとエリナさん。
「せ、セレナちゃん! レンジャーのことなら教えられるけど、狩りの方法とか色々知りたくない?」
「わ~! 知りたいっ~!」
当然のように目をキラキラさせて視線を向けるセレナとエリナさん。
焦ったように回りを見回すブレインさん。
「ふっふっ。残念だったわね~おっさんの出番はないわよ~?」
「ぐあああ! おっさんにも少しは優しくしてくれよな!?」
ぐはっ……アラフォーのおっさん……僕の心も…………。
ニヤニヤしていたセレナが助け船を送る。
「それならブレインさんは、ノアに剣術を教えてあげたらいいんじゃないかな?」
「「ん?」」
「ほら、ノアだって、元々剣術の方が得意だったし~」
あ……得意というか、あれは実家の強制…………。
おっさんのあまりにも眩しい期待の眼差しに抗うことができなかった。
「や、やった~!」
ブレインさんの嬉しそうな声が森中に響き渡った。
ブレインさんが僕に向かって土下座してきた。
「い、いや……そう言われましても…………」
二度目の野営。
さすがに僕の力に感づいた彼らは、理由や理屈は分からなくても、僕が美味しい料理を出していることに気付いた様子。
二日目の焼肉を堪能したブレインさん達は、事前に打ち合わせしていたかのように、自分達を護衛として雇って欲しいと頼んできた。しかも、護衛費用は全てご飯で良いという。
「実は俺達、美味しいものを食べ歩くのが趣味でな! 稼いで余った金は全部美味しいものを食べることに使っているんだ! 店長のご飯は今まで食べたどんな料理よりも美味しかった……! いや、美味しい! それにまだまだ隠している美味しい料理がある気がするんだ! 俺のこの鼻がそう言っている!」
どんな鼻だよ! ポンちゃんならまだしも、ブレインさんの鼻は普通の人のものでしょうに!
「うちは既に護衛がいるので……」
「!?」
「ほら」
僕の隣にちょこんと座っていたポンちゃんを抱きかかえて、彼らの前に見せる。
「僕達の守護神ポンちゃんです!」
『ポンデュガールだニャ!』
「飼い犬じゃなかったのか……?」
『誰が飼い犬ニャ!』
飼い猫と言われなかったから怒ったみたいな言い方すんな!
「うちの仲間です。僕とは会話ができる凄い子なんです」
「へ、へぇ……」
いや、そんな痛い子見る目やめてよ……?
「ということもあるので、護衛は必要ないので、お客様ならいつでも歓迎しますが、メンバーを増やしたいとかではありませんので……」
というか、Cランク冒険者となれば、冒険者の中でも上位冒険者として認められる存在だ。
こんなに凄い戦力が僕達なんかの護衛をしても、世界のためにはならないと思う。
彼らにはCランク冒険者らしく、色んな依頼をこなして、色んな人のためになってもらいたい。
「ですから僕達なんかの護衛をせず、依頼をこなしてください! 冒険者なんですから!」
「ううっ……わ、分かった…………じゃあ、こうして店を開いていなくても、店外で売ってくれるのはいいのか!?」
この人達…………付いてくる気だ…………。
「それなら問題ありませんが、うちのメニューは普通より高いですよ?」
「問題ない! Cランク冒険者ともなれば、それなりに収入があるからな! がーはははっ!」
「でもいつか尽きるでしょうし、毎食焼肉食べたら毎日銀貨一枚が消えちゃいますよ?」
「そ、それは…………」
「僕達は逃げも隠れもしませんが、まあ、暫くは東を目指して移動するので、食べたくなったら探してみてください」
「わ、分かった…………ひとまず、次の町までは一緒でもいいんだよな?」
「もちろん構いませんよ」
そもそも今からダメですとも言えないし、元々屋台というのは、どこでも売れるように作ろうかなと思っていたからな。
街のみで開くつもりもなかった。
「じゃあ、せっかくだから、次の町に向かう間はミレイちゃんに私が魔法を教えてあげるよ」
「わあ~! 本当にいいんですか?」
「もちろん。これだけ繊細な【自然魔法】を操れる人も中々珍しくて、中々教え甲斐がありそうね」
「店長!」
「ああ。僕は構わないよ。むしろ、魔法を教えてくれるなら大歓迎だ。それなら――――シズルさんには特別メニューをご馳走しなくちゃいけないな」
「「!?」」
シズルさんがニヤリと笑う傍で、焦った表情を浮かべたブレインさんとエリナさん。
「せ、セレナちゃん! レンジャーのことなら教えられるけど、狩りの方法とか色々知りたくない?」
「わ~! 知りたいっ~!」
当然のように目をキラキラさせて視線を向けるセレナとエリナさん。
焦ったように回りを見回すブレインさん。
「ふっふっ。残念だったわね~おっさんの出番はないわよ~?」
「ぐあああ! おっさんにも少しは優しくしてくれよな!?」
ぐはっ……アラフォーのおっさん……僕の心も…………。
ニヤニヤしていたセレナが助け船を送る。
「それならブレインさんは、ノアに剣術を教えてあげたらいいんじゃないかな?」
「「ん?」」
「ほら、ノアだって、元々剣術の方が得意だったし~」
あ……得意というか、あれは実家の強制…………。
おっさんのあまりにも眩しい期待の眼差しに抗うことができなかった。
「や、やった~!」
ブレインさんの嬉しそうな声が森中に響き渡った。
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