上 下
78 / 83
連載

193話

しおりを挟む
「さあ、皆さん。こちらにどうぞ」
 
 ガイア様に誘われて案内されたところに、真っ白なテーブルの上には金色の美しい刺繍の白いティーポットやカップ、皿が並んでおり、その上には美味しそうなクッキーやケーキが並んでいた。
 
「美味しそう~!」
 
 すぐに目を光らせるエレナちゃんがテーブルの隣で微笑むガイア様のところに入っていく。
 
 まだ皆さんはガイア様に少し遠慮している感じがあって、エレナちゃんが先に行ってくれるといいきっかけになってくれてすごくいいね。
 
 ちゃんとアルトくんとカミラさん用のテーブルまで準備してくれて、カミラさんが食べやすいように小さく切ったものが並ぶ。
 
 やっぱりガイア様ってちゃんと見ていたんだね!
 
「「「「いただきます!」」」」
 
 みんなで手を合わせてから美味しそうなクッキーを食べてみる。
 
 口の中にふんわりと甘みとともに、ハチミツとリンゴの香りがふんわりと鼻を抜けてくる。
 
「「「「美味しい~!」」」」
 
 こんなにも美味しいクッキーは人生初めてと言って過言ではないくらい美味しい。しかも、クッキーを食べたら口の中の水分を全部奪われて喉が渇くはずなのに、こちらのクッキーはそうなることなく、クッキーから溢れた甘いみずみずしさが喉を潤す。
 
 嬉しそうな笑みを浮かべたガイア様はすぐに茶を入れてくれる。色はミルクティーのような明るい茶色。
 
 ミルクの香りがふんわりと広がり、続けて紅茶の独特な香りに、思わずつばを飲み込んだ。
 
「神界で取れるもので作ったクッキーと紅茶です。たくさんありますから遠慮なさらずに食べてくださいね」
 
 そっとハンカチを持った手を伸ばして隣に座っていたエレナちゃんの口元を拭いてあげるガイア様。
 
 美味しそうにパクパク食べていたエレナちゃんが「えへへ~」と満面の笑みを浮かべた。
 
 段々ガイア様と打ち解けた皆さんは余裕のある表情を浮かべるようになった。
 
 お茶会を楽しんでから、まだ時間があるってことで、ガイア様とステラさんはコテツと遊んでいて、エヴァさんとセレナさんは周りの景色に目を輝かせていた。
 
『ワタル~あそこの丘の上に行ってみようぜ!』
 
「離れていいのかな……? ガイア様~向こうの丘に行ってきてもいいですか~?」
 
「もちろん大丈夫ですよ~」
 
「ありがとうございます!」
 
 僕はアルトくんの背中に、エレナちゃんはカミラさんの背中に乗り込んで、一気に駆け抜ける。
 
 神界は虹色の不思議な光の波があっちこっちで見られ、植物や地面もいくつかの色に変化していったりする。
 
 温かい追い風がとても気持ちよくて、走ってるアルトくんとカミラさんも気持ちよさそう。
 
 丘の上に着いてので、高台から周りを見渡してみる。
 
 そこから見えたのは――――無数の浮島。空を舞う虹色の生物達。虹色の光のうねり。神秘的な光景が広がっており、真っ青な空と流れる雲も見ているだけで時間を忘れてしまうほどだ。
 
 丘にエレナちゃんと並んで座り、風景を堪能する。
 
「ガイア様、すごく優しかった!」
 
「お菓子も美味しかったもんね」
 
「うんうん。う~また食べたくなった」
 
「あはは~その時はまたお願いしたら作ってくださると思うよ」
 
「でも神界っていつも来れるわけじゃないでしょう?」
 
「そうだね。ガイア様も力をたくさん使うみたいだから。でも最近は力も貯まるようになったって仰ってたから、また来れると思うよ」
 
「そっか! また楽しみにしておこ~」
 
 ボーっと吹いてくる優しい風に揺れていると、アルトくんが近付いてきた。
 
『ワタル。あの下って気にならないか?』
 
「下? この島の?」
 
『ああ! ここからだと空しか見えないからな! 下がどうなっているのか見てみたい!』
 
 ここも浮遊島だから、周りは空ばかり見える。
 
 アルトくんに言われた通り、島の下がどうなっているのか僕も見たことがない。
 
 というか、神界にそこまで頻繁に来るわけじゃないし、今までだと時間も短かったからね。
 
「行ってみようか!」
 
『行こうぜ~!』
 
 またアルトくんの背中に乗って走る。
 
 そういえば、前回の戦いからアルトくん達がまた強くなったみたいで、走るスピードはまた一段と速くなった。
 
 あの激しかった戦いも一か月が経っているんだよね……。
 
 お茶会をした場所に戻り、その先にある崖の前に立った。
 
 エレナちゃんとアルトくんとおそるおそる崖に近付いてうつ伏せになる。
 
 ほふく前進のようにして、崖から落ちないように気を付けながら崖の端にたどり着いた。
 
 島から下を覗いたところ――――広大な海が広がっていた。でも僕が知っているような海ではない。
 
 何か巨大な――――水で作られた龍のような一体感のある動きをしている。しかも、見渡せる範囲では端が見えず、どこまでも青くて、何だか空が広がっているような。
 
 空と海が逆転しているかのような錯覚を覚えるくらい綺麗な流れる海に目が奪われる。
 
「ワタル~綺麗だね」
 
「うん……! すごく綺麗!」
 
 アルトくんとカミラさんも神秘的な光景に満足げに笑みを浮かべた。
 
 楽しい時間はあっという間に終わり、僕達は神界から元の世界に戻る時間となった。
 
 コテツはまたしばらく残ってガイア様と遊んでくるってことで、コテツを左腕で抱っこして右手を振るガイア様に見送られ、僕達は神界を後にした。



――――【あとがき】――――
 本日、書籍版二巻が発売になりました~!
 ぜひ本屋で手に取っていただけたら幸いです!(電子版の発売は来月のようです)
 毎週更新していきますので、続きもお楽しみに~
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

最弱悪役令嬢に捧ぐ

クロタ
ファンタジー
死んで乙女ゲームの最弱悪役令嬢の中の人になってしまった『俺』 その気はないのに攻略キャラや、同じ転生者(♂)のヒロインとフラグを立てたりクラッシュしたりと、慌ただしい異世界生活してます。 ※内容はどちらかといえば女性向けだと思いますが、私の嗜好により少年誌程度のお色気(?)シーンがまれにあるので、苦手な方はご注意ください。

フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!

荒井竜馬
ファンタジー
旧題:フェンリルに育てられた転生幼女。その幼女はフェンリル譲りの魔力と力を片手に、『創作魔法』で料理をして異世界を満喫する。  赤ちゃんの頃にフェンリルに拾われたアン。ある日、彼女は冒険者のエルドと出会って自分が人間であることを知る。  アンは自分のことを本気でフェンリルだと思い込んでいたらしく、自分がフェンリルではなかったことに強い衝撃を受けて前世の記憶を思い出した。そして、自分が異世界からの転生者であることに気づく。  その記憶を思い出したと同時に、昔はなかったはずの転生特典のようなスキルを手に入れたアンは人間として生きていくために、エルドと共に人里に降りることを決める。  そして、そこには育ての父であるフェンリルのシキも同伴することになり、アンは育ての父であるフェンリルのシキと従魔契約をすることになる。  街に下りたアンは、そこで異世界の食事がシンプル過ぎることに着眼して、『創作魔法』を使って故郷の調味料を使った料理を作ることに。  しかし、その調味料は魔法を使って作ったこともあり、アンの作った調味料を使った料理は特別な効果をもたらす料理になってしまう。  魔法の調味料を使った料理で一儲け、温かい特別な料理で人助け。  フェンリルに育てられた転生幼女が、気ままに異世界を満喫するそんなお話。  ※ツギクルなどにも掲載しております。

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 【5/22 書籍1巻発売中!】

異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)
ファンタジー
陸奥さわこ 3*才独身 父が経営していた居酒屋「酒話(さけばなし)」を父の他界とともに引き継いで5年 折からの不況の煽りによってこの度閉店することに…… 家賃の安い郊外へ引っ越したさわこだったが不動産屋の手違いで入居予定だったアパートはすでに入居済 途方にくれてバス停でたたずんでいたさわこは、そこで 「薬草を採りにきていた」 という不思議な女子に出会う。 意気投合したその女性の自宅へお邪魔することになったさわこだが…… このお話は ひょんなことから世界を行き来する能力をもつ酒好きな魔法使いバテアの家に居候することになったさわこが、バテアの魔法道具のお店の裏で居酒屋さわこさんを開店し、異世界でがんばるお話です

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。