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172話

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 夜になってようやく打ち合わせが終わり、夜飛行は危ないということで、ユートピア号の乗組員を残して、僕達だけ一足先にシェーン街に戻らせてもらった。

 僕の力【拠点帰還】を使えば、転移させられるからね。

 最近知ったことなんだけど、この力もレベル次第で一度に飛べる人数が増えることがわかった。

 今のレベルだと、一度に十五人と一緒に飛べるし、消費魔力が99%減なので、【拠点帰還】と使って拠点に戻り、再度【出征地点】でまた元の場所に戻ってを繰り返せるようになった。

 ユートピア号に残して来た乗組員達は、ユートピア号に設置された宿泊設備で泊まっている。

 一緒にシェーン街に帰って来てもいいんだけど、ユートピア号を一人にさせたくないと、みんな居残った。

 表向きは僕達もユートピア号で泊ってるていなんだけどね。

 帰ってすぐにエレナちゃんを家まで送って、屋敷に戻ってスライム達をもふもふしながら一緒に部屋で眠る。

 ベッドの上には僕とコテツが入り、スライム達は部屋中にいっぱいになって眠った。



 次の日。

 セレナさんは各支店の情報をまとめるというので、僕達だけで一度ユートピア号に戻った。

 聖都の皆さんに挨拶をして、すぐにユートピア号に乗り込んでシェーン街に向かう。

 本当は真っすぐ東に向かいたいんだけど、それだとアルフヘイム国の上空を通ってしまうから、いつも通り迂回しながら進んでいく。

 南側から迂回してシェーン街に向かう中、勇者が所属するフェアラート王国が見えた。

 王国の大きさはエデンソ国と同じくらいの領地で、首都と大きな街が二つ、村が点在している比較的に田舎王国って感じだ。

 近日中にフェアラート王国とは戦う・・ことになるだろう。そう思うと少しだけ不安が過った。

 でも僕達には多くの仲間がいて、聖剣もこちら側にあるんだから、何とかなるかな。

 ユートピア号は素早く空を駆け抜けて、フェアラート王国を越えてシェーン街に辿り着いた。



「オーナー!」

 着いて早々セレナさんがやってきた。

「セレナさん? どうかしましたか?」

「少し困ったことになりました」

「えっ!?」

「向かいながら話します」

 足早に歩くセレナさんを、僕とエレナちゃんが追いかける。

 ステラさんはエヴァさんのところに行くみたいだ。

「実は人族の国に支店を出すのが、他の街にバレてしまいまして」

「バレる? というか、元々そう話していましたよね?」

「ええ。実は魔族はそれを待っていたようです」

 一体魔族の皆さんが何をしようとしているのか不安を感じながら、【ぽよんぽよんリラックス】の本店にやってきた。

 入ってすぐに会議室に案内されると、そこには魔族が五人も待っていた。

「お待ちしておりました。ワタル様」

「えっと……どこかでお会いしたような……」

 ど、どこだっけ……。

「ふふっ。バタバタしておりましたからな。わしは魔王国貴族の一人、セルジュと申します。以前エヴァ様と挨拶をさせていただきました」

「ご、ごめんなさい……」

 あの時、紹介された人が多すぎて覚えられなかった。

「いえ。急な出来事や大勢いましたから、これからお見知りおきを…………さて、これでやっと本題が切り出せますね」

 魔族の皆さんが鋭い眼光を光らせて僕に注目した。
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