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167話
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帝国を出発して、次に着いたのは、大陸中央のアルフヘイム国に近いエデンソ王国だ。
帝都や聖都とは違って、シェーン街の雰囲気があるエデンソ王国の王都は個人的にとても好きだ。
ユートピア号を王都壁面にくっつけて橋で王都を囲う城壁に降り立つと、兵士さん達が迎えに来てくれた。
「提督から連絡を受けています。皆さまが着いたら案内するようにとのことで、こちらにどうぞ」
兵士長と名乗った方の後ろについて行く。
もちろん、百匹を超えるスライム達も後を追う。
王都民のみなさんが珍しがって僕達を見つめる中、大通りを通り過ぎて建物が一切ない丘がある場所に辿り着いた。
お城からは少し遠い。それにしても王都内にこのような丘があるなんて珍しいと思う。
敷地に入ると、すぐに広い敷地内の平屋で工事が進んでいてマテオ提督が指揮を執っていた。
「提督。ワタル様をお連れしました」
「ワタル様。いらっしゃいませ。急いで工事を進めております。みなさんが過ごす家はこちらになります。案内しましょう」
ひと際大きな屋敷に案内を受けて入った。
どうやら、ここは【ぽよんぽよんリラックス】の従業員が住む部屋兼オーナーである僕の別荘とのことだ。
「マテオさん? こんな立派な建物を貸していいんですか?」
「貸すなんてとんでもない。この建物はこれからワタル様の所有物でございます」
「ええええ!?」
「【ぽよんぽよんリラックス】がこれから我が国にもたらす効果は言うまでもありません。特に帝都や聖都と距離が離れている分、周辺諸国から多くの観光客が来るのは確定事項でございます。ワタル様に爵位をお渡ししたいのですが、断れると思い、こちらの王家代々伝わる別荘と敷地をお渡しします」
「ええええ!? それはもっとダメですよ!」
「ふふっ。王様の命令なのです。それくらい【ぽよんぽよんリラックス】を楽しみに、しかも感謝しているのです。ですからこれからくれぐれも別荘として大切にしてくださると嬉しいです」
「そ、そんな……あ、ありがとうございます…………」
ここが僕の別荘になったってことは、【ぽよんぽよんリラックス】をここから撤去できなくする上に、休暇地としてここを利用できるってことは、エデンソ王国との関係性も深くなるというものだ。
セレティアさんとはまた違う思惑が伝わってくる。
マテオさんは、ニヤリと「ワタル様。言わなくても分かると思いますが、エデンソ王国をこれからもよろしくお願いします」を、視線だけで僕に伝えてくれた。
お店の概要などセレナさんとの打ち合わせに入ったので、僕はエレナちゃんとスライム達と広い丘で遊び始めた。
「あ~! ワタル!」
「うん?」
「ワタルがうちの町に来た時さ。コテツくんに骨を投げていたでしょう?」
そう言われてみれば、あの骨を見つけた時にそんなことをしていたね。
「こんなの作ってみたんだけど、どう?」
そう言いながら前に出してくれたのは、丈夫そうな木材に噛みやすく中心部に布が巻かれていた。
「凄い! これってエレナちゃんが作ったの?」
「うん! コテツくんが欲しがりそうだったから!」
投げ棒を見たコテツは興奮して「ワンワン!」とその場ではしゃぎ始めた。
最近旅とか戦いばかりで、コテツとあまり遊んであげれなかったから、丁度良いかも知れない。
「コテツも凄く嬉しそう!」
「えへへ~コテツくん~行くよ~?」
「ワフッ!」
エレナちゃんが丘に向かって投げ棒を投げると、コテツと共に周りのスライム達も一斉に飛び出した。
中でもエレナちゃんを守ってくれる猫スライムが特別に目立っていた。
涼しい風が吹く丘にコテツの楽しそうな鳴き声と、スライム達のぽよんぽよんの音が鳴り響いた。
帝都や聖都とは違って、シェーン街の雰囲気があるエデンソ王国の王都は個人的にとても好きだ。
ユートピア号を王都壁面にくっつけて橋で王都を囲う城壁に降り立つと、兵士さん達が迎えに来てくれた。
「提督から連絡を受けています。皆さまが着いたら案内するようにとのことで、こちらにどうぞ」
兵士長と名乗った方の後ろについて行く。
もちろん、百匹を超えるスライム達も後を追う。
王都民のみなさんが珍しがって僕達を見つめる中、大通りを通り過ぎて建物が一切ない丘がある場所に辿り着いた。
お城からは少し遠い。それにしても王都内にこのような丘があるなんて珍しいと思う。
敷地に入ると、すぐに広い敷地内の平屋で工事が進んでいてマテオ提督が指揮を執っていた。
「提督。ワタル様をお連れしました」
「ワタル様。いらっしゃいませ。急いで工事を進めております。みなさんが過ごす家はこちらになります。案内しましょう」
ひと際大きな屋敷に案内を受けて入った。
どうやら、ここは【ぽよんぽよんリラックス】の従業員が住む部屋兼オーナーである僕の別荘とのことだ。
「マテオさん? こんな立派な建物を貸していいんですか?」
「貸すなんてとんでもない。この建物はこれからワタル様の所有物でございます」
「ええええ!?」
「【ぽよんぽよんリラックス】がこれから我が国にもたらす効果は言うまでもありません。特に帝都や聖都と距離が離れている分、周辺諸国から多くの観光客が来るのは確定事項でございます。ワタル様に爵位をお渡ししたいのですが、断れると思い、こちらの王家代々伝わる別荘と敷地をお渡しします」
「ええええ!? それはもっとダメですよ!」
「ふふっ。王様の命令なのです。それくらい【ぽよんぽよんリラックス】を楽しみに、しかも感謝しているのです。ですからこれからくれぐれも別荘として大切にしてくださると嬉しいです」
「そ、そんな……あ、ありがとうございます…………」
ここが僕の別荘になったってことは、【ぽよんぽよんリラックス】をここから撤去できなくする上に、休暇地としてここを利用できるってことは、エデンソ王国との関係性も深くなるというものだ。
セレティアさんとはまた違う思惑が伝わってくる。
マテオさんは、ニヤリと「ワタル様。言わなくても分かると思いますが、エデンソ王国をこれからもよろしくお願いします」を、視線だけで僕に伝えてくれた。
お店の概要などセレナさんとの打ち合わせに入ったので、僕はエレナちゃんとスライム達と広い丘で遊び始めた。
「あ~! ワタル!」
「うん?」
「ワタルがうちの町に来た時さ。コテツくんに骨を投げていたでしょう?」
そう言われてみれば、あの骨を見つけた時にそんなことをしていたね。
「こんなの作ってみたんだけど、どう?」
そう言いながら前に出してくれたのは、丈夫そうな木材に噛みやすく中心部に布が巻かれていた。
「凄い! これってエレナちゃんが作ったの?」
「うん! コテツくんが欲しがりそうだったから!」
投げ棒を見たコテツは興奮して「ワンワン!」とその場ではしゃぎ始めた。
最近旅とか戦いばかりで、コテツとあまり遊んであげれなかったから、丁度良いかも知れない。
「コテツも凄く嬉しそう!」
「えへへ~コテツくん~行くよ~?」
「ワフッ!」
エレナちゃんが丘に向かって投げ棒を投げると、コテツと共に周りのスライム達も一斉に飛び出した。
中でもエレナちゃんを守ってくれる猫スライムが特別に目立っていた。
涼しい風が吹く丘にコテツの楽しそうな鳴き声と、スライム達のぽよんぽよんの音が鳴り響いた。
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