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161話
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帝都で一泊して、エデンソ王国に向かう前に早速セレティア第三皇女様が執務室で待ってるってことで、エレナちゃんと共にやってきた。
「お待ちしておりました。ワタル様」
「お待たせしました。セレティア様」
「私のことはセレティアと気楽に呼んでください」
さすがに皇女様を呼び捨てにするのは難しい。
「あはは……よろしくお願いします。セレティアさん。僕も普通に呼んでください」
「はいっ」
嬉しそうに笑顔に染まるセレティアさん。ここに来るまで同年代の人族の女の子は久しぶりだ。エレナちゃんは猫耳族だし。
「こちらはエレナちゃん。猫耳族です」
「エレナだよ~!」
「初めまして。エレナ様」
「エレナって呼んで~! 私もセレティアちゃんって呼ぶから~」
「はい」
女の子同士、すぐに仲良くなったみたいで本当に良かった。
「それでセレティアさん。今日の用事というのは……」
「はい。お父様からも昨日言われた通り、ワタルくんとの交易を全権頂きました。私もワタルくんに同行したいのですが、まだ婚約もしていない皇女の身で殿方に付いていくことは許されておりません。となると、ワタルくんがまたいつ来られるか分からない以上、今しかないと判断しました」
昨日はどうして彼女に全権を託したのか分からなかった。
今日ここに呼ばれたことがその答えみたいだ。
「もちろんいいですよ。元々各街に【ぽよんぽよんリラックス】を設立できたら人族と魔族の橋渡しになれると思いましたから」
「とても助かります。では早速用意したこちらの書類を見てください」
セレティアさんが渡してくれた紙を受け取る。
エレナちゃんも興味津々で隣から僕の腕に顔を当てて覗き込んできた。
「ふふっ。お二人はとても仲良しなんですね」
「うん! ワタルが大きくなったら結婚してあげてもいいの~!」
エレナちゃん!?」
「ふふっ。エレナちゃん? それはいけません」
「え? どうして?」
「結婚というのは、お互いに利益があるか、お互いを好きな人同士でなければなりません。だからワタルくんがエレナちゃんをちゃんと好きにならないと結婚はできませんよ」
セレティアさんの冷静な説明に、エレナちゃんが僕を見上げた。
「ワタルは私と結婚するの嫌?」
「ええええ!? い、嫌とかじゃなくて、まだ早いというか。そういうのはもうちょっと長い時間をかけて……お互いを知って……それから…………」
すると、エレナちゃんは曇り一つない満面の笑顔に染まった。
「なら大丈夫! 私はずっとワタルの隣にいるから!」
「……羨ましいです」
ボソッとセレティアさんが呟く。「どうして?」と聞くエレナちゃんに彼女は、
「私は皇女ですから、婚約者の方以外では一緒に出かけることも許されていないんです。ですからこうして商売を勉強して、帝国の商売で実績を残しました。結果的にここに立てているので良かったとは思います。ですがエレナちゃんのような自由は……ないんです」
「そうか……皇女様って大変だね」
「ええ。でもそれを言い訳にして弱気になっても何も変わりません。助けてくれる白馬の王子様を待つくらいなら私が勝ちとりますっ!」
い、意外にセレティアさんって熱い人なんだね。
何となく帝王様の面影が見えた。その父にその娘だね。
「では正式に帝国の宰相代理として、こちらの商売交渉に入ります。ワタルくん。資料を見てください」
「は、はいっ!」
それから凛々しいセレティアさんの交渉で、帝都で【ぽよんぽよんリラックス】の支店を開店させる方向で話が決まった。
立地、建物、従業員の安全、従業員の待遇、価格、現状の【ぽよんぽよんリラックス】の店舗と支店とのサービスの差など、多角度の視点から話を進めて、短時間で細かい部分まで決めることができた。
そのどれも、事前にシェーン街の本店の状況を知って作ったと言っていた。
第三皇女という身分以上に、彼女は――――帝国で随一の商才を持つ存在だった。
「お待ちしておりました。ワタル様」
「お待たせしました。セレティア様」
「私のことはセレティアと気楽に呼んでください」
さすがに皇女様を呼び捨てにするのは難しい。
「あはは……よろしくお願いします。セレティアさん。僕も普通に呼んでください」
「はいっ」
嬉しそうに笑顔に染まるセレティアさん。ここに来るまで同年代の人族の女の子は久しぶりだ。エレナちゃんは猫耳族だし。
「こちらはエレナちゃん。猫耳族です」
「エレナだよ~!」
「初めまして。エレナ様」
「エレナって呼んで~! 私もセレティアちゃんって呼ぶから~」
「はい」
女の子同士、すぐに仲良くなったみたいで本当に良かった。
「それでセレティアさん。今日の用事というのは……」
「はい。お父様からも昨日言われた通り、ワタルくんとの交易を全権頂きました。私もワタルくんに同行したいのですが、まだ婚約もしていない皇女の身で殿方に付いていくことは許されておりません。となると、ワタルくんがまたいつ来られるか分からない以上、今しかないと判断しました」
昨日はどうして彼女に全権を託したのか分からなかった。
今日ここに呼ばれたことがその答えみたいだ。
「もちろんいいですよ。元々各街に【ぽよんぽよんリラックス】を設立できたら人族と魔族の橋渡しになれると思いましたから」
「とても助かります。では早速用意したこちらの書類を見てください」
セレティアさんが渡してくれた紙を受け取る。
エレナちゃんも興味津々で隣から僕の腕に顔を当てて覗き込んできた。
「ふふっ。お二人はとても仲良しなんですね」
「うん! ワタルが大きくなったら結婚してあげてもいいの~!」
エレナちゃん!?」
「ふふっ。エレナちゃん? それはいけません」
「え? どうして?」
「結婚というのは、お互いに利益があるか、お互いを好きな人同士でなければなりません。だからワタルくんがエレナちゃんをちゃんと好きにならないと結婚はできませんよ」
セレティアさんの冷静な説明に、エレナちゃんが僕を見上げた。
「ワタルは私と結婚するの嫌?」
「ええええ!? い、嫌とかじゃなくて、まだ早いというか。そういうのはもうちょっと長い時間をかけて……お互いを知って……それから…………」
すると、エレナちゃんは曇り一つない満面の笑顔に染まった。
「なら大丈夫! 私はずっとワタルの隣にいるから!」
「……羨ましいです」
ボソッとセレティアさんが呟く。「どうして?」と聞くエレナちゃんに彼女は、
「私は皇女ですから、婚約者の方以外では一緒に出かけることも許されていないんです。ですからこうして商売を勉強して、帝国の商売で実績を残しました。結果的にここに立てているので良かったとは思います。ですがエレナちゃんのような自由は……ないんです」
「そうか……皇女様って大変だね」
「ええ。でもそれを言い訳にして弱気になっても何も変わりません。助けてくれる白馬の王子様を待つくらいなら私が勝ちとりますっ!」
い、意外にセレティアさんって熱い人なんだね。
何となく帝王様の面影が見えた。その父にその娘だね。
「では正式に帝国の宰相代理として、こちらの商売交渉に入ります。ワタルくん。資料を見てください」
「は、はいっ!」
それから凛々しいセレティアさんの交渉で、帝都で【ぽよんぽよんリラックス】の支店を開店させる方向で話が決まった。
立地、建物、従業員の安全、従業員の待遇、価格、現状の【ぽよんぽよんリラックス】の店舗と支店とのサービスの差など、多角度の視点から話を進めて、短時間で細かい部分まで決めることができた。
そのどれも、事前にシェーン街の本店の状況を知って作ったと言っていた。
第三皇女という身分以上に、彼女は――――帝国で随一の商才を持つ存在だった。
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