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155話
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地面を覆う大きな影。
曇りならそれも理解できるけど、今日は晴天のはずだ。
そもそもエデンイール世界は戦争時以外では雨は降らない。だからこそ曇るってことがほぼない。
僕達を覆う影の存在。
一言で言えば――――船だ。
そう。船。
ただし、見えるのは船の下部だ。
つまり僕達が見上げているのは単純に【空飛ぶ船】である。
「凄い~! ワタルっ! 船が飛んでるよ~!」
「そ、そうだね。まさかこんなにも早く完成するとは思いもしなかったよ」
ゆっくりとシェーン街のすぐ隣に降りてくる空飛ぶ船。
甲板のところでこちらに向かって手を振るのは、研究者リオくんの幼馴染のシアラさんだ。
「シアラちゃ~ん! 久しぶり~!」
「ワタルくん~! エレナちゃん~! やっほ~!」
さすがにお互いの声は届かないと思うけど、何となくわかる。
丁度シェーン街の壁の隣に泊まった空飛ぶ船に、広い渡り橋が掛けられシアラさんがやってきた。
「みんな~久しぶり! リオはすぐに来ると思う!」
「うん! まさかこんなに早くできるとは!」
「ふふっ。グライン街のみんなが手伝ってくれたんだ。それに――――ホワイトナイトの件もあるからリオに色々聞いてね!」
「ありがとう!」
アタフタするみんなと共に城壁の上から待ち続ける。
すぐに空飛ぶ船の中から複数名の魔族が現れて軽やかな足取りでやってきた。
「リオくん!」
「やあ。ワタルくん。久しぶりだね。元気そうで何よりだよ」
「リオくんもね。それにしても早すぎだよ~」
「まあ、色々あってさ。それに関してはまた話すとして――――エヴァ様に紹介してくれる?」
後ろでこちらを見守っているエヴァさんたちと目が合う。
「そうだね。エヴァさん。みなさん。紹介します。グライン街で研究をしているリオくんです。以前僕が大型魔道具をお願いしたんですけど、まさかこんなに早く完成するとは思わなくてびっくりしてます。もっと時間がかかると思ってました」
「以前、少しだけ相談してくれた大型魔道具ね。まさかこんなものを作ろうと思っていたなんて……ワタルくんっていつもとんでもないわね」
「あはは……リオくん。こちらは魔王様のエヴァさん。後ろは昨日会談のために来てくださった人族の代表のみなさんだよ」
「会談か。そういうことになっていたのか。エヴァ様。初めまして。グライン街で研究者をやってますリオといいます」
「よろしくね」
それぞれ挨拶を交わしていく。
リオくんを手伝ってくれたというチームメンバーが六人の魔族。みんな白衣を着こんでいて研究者っぽいといえば研究者っぽいね。
空飛ぶ船に興味津々なみなさんに、リオくんに詳細に説明してもらう。もちろん人族のみなさんにもそれを聞いてもらう。
これから魔族と人族のさらなる架け橋になってくれたら嬉しい。
「ワタルくん。この船の名前はなに?」
「名前ですか? リオくん~この船の名前はなに?」
「ん? なぜそれを僕に聞くんだい? この船は――――――ワタルくんのものだぞ?」
「「「ええええ!?」」」
「ええええ!?」
「「「本人も驚いている!?」」」
「だって、作ってくれたのはリオくんだから……」
「いやいや、投資と素材はワタルくんが提供してくれたからね」
確かに心臓部分となる素材とか資金とか色々提供しているけど……でも実際に作ってくれたのは彼らだからね。
「ワタルくん。確かに僕達が作ったけど、原案も資金も素材もワタルくんが出してくれたものだからな。研究者とはこういうものだよ。むしろ、この大作を作ってもらえただけで名誉あることだよ」
「そ、そういうもんなの?」
「ああ。だから気にせず空飛ぶ船は自分のモノとして考えてくれ。だから船の名前もワタルが決めてね?」
リオくんにそう言われて、城壁の外に佇む巨大な船を見ながら、名前を付けるだけでなく僕の所有物になっていて驚くばかりだ。
僕としては空飛ぶ船ができたら魔族領内を巡回できる移動用船として国で管理するとばかり思っていた。
「エヴァさん?」
「私は知らないわよ? 全部ワタルくんの物だからね!? うちの国に押し付けないでよね!? 絶対に無理だからね!」
釘を刺されてしまった。
曇りならそれも理解できるけど、今日は晴天のはずだ。
そもそもエデンイール世界は戦争時以外では雨は降らない。だからこそ曇るってことがほぼない。
僕達を覆う影の存在。
一言で言えば――――船だ。
そう。船。
ただし、見えるのは船の下部だ。
つまり僕達が見上げているのは単純に【空飛ぶ船】である。
「凄い~! ワタルっ! 船が飛んでるよ~!」
「そ、そうだね。まさかこんなにも早く完成するとは思いもしなかったよ」
ゆっくりとシェーン街のすぐ隣に降りてくる空飛ぶ船。
甲板のところでこちらに向かって手を振るのは、研究者リオくんの幼馴染のシアラさんだ。
「シアラちゃ~ん! 久しぶり~!」
「ワタルくん~! エレナちゃん~! やっほ~!」
さすがにお互いの声は届かないと思うけど、何となくわかる。
丁度シェーン街の壁の隣に泊まった空飛ぶ船に、広い渡り橋が掛けられシアラさんがやってきた。
「みんな~久しぶり! リオはすぐに来ると思う!」
「うん! まさかこんなに早くできるとは!」
「ふふっ。グライン街のみんなが手伝ってくれたんだ。それに――――ホワイトナイトの件もあるからリオに色々聞いてね!」
「ありがとう!」
アタフタするみんなと共に城壁の上から待ち続ける。
すぐに空飛ぶ船の中から複数名の魔族が現れて軽やかな足取りでやってきた。
「リオくん!」
「やあ。ワタルくん。久しぶりだね。元気そうで何よりだよ」
「リオくんもね。それにしても早すぎだよ~」
「まあ、色々あってさ。それに関してはまた話すとして――――エヴァ様に紹介してくれる?」
後ろでこちらを見守っているエヴァさんたちと目が合う。
「そうだね。エヴァさん。みなさん。紹介します。グライン街で研究をしているリオくんです。以前僕が大型魔道具をお願いしたんですけど、まさかこんなに早く完成するとは思わなくてびっくりしてます。もっと時間がかかると思ってました」
「以前、少しだけ相談してくれた大型魔道具ね。まさかこんなものを作ろうと思っていたなんて……ワタルくんっていつもとんでもないわね」
「あはは……リオくん。こちらは魔王様のエヴァさん。後ろは昨日会談のために来てくださった人族の代表のみなさんだよ」
「会談か。そういうことになっていたのか。エヴァ様。初めまして。グライン街で研究者をやってますリオといいます」
「よろしくね」
それぞれ挨拶を交わしていく。
リオくんを手伝ってくれたというチームメンバーが六人の魔族。みんな白衣を着こんでいて研究者っぽいといえば研究者っぽいね。
空飛ぶ船に興味津々なみなさんに、リオくんに詳細に説明してもらう。もちろん人族のみなさんにもそれを聞いてもらう。
これから魔族と人族のさらなる架け橋になってくれたら嬉しい。
「ワタルくん。この船の名前はなに?」
「名前ですか? リオくん~この船の名前はなに?」
「ん? なぜそれを僕に聞くんだい? この船は――――――ワタルくんのものだぞ?」
「「「ええええ!?」」」
「ええええ!?」
「「「本人も驚いている!?」」」
「だって、作ってくれたのはリオくんだから……」
「いやいや、投資と素材はワタルくんが提供してくれたからね」
確かに心臓部分となる素材とか資金とか色々提供しているけど……でも実際に作ってくれたのは彼らだからね。
「ワタルくん。確かに僕達が作ったけど、原案も資金も素材もワタルくんが出してくれたものだからな。研究者とはこういうものだよ。むしろ、この大作を作ってもらえただけで名誉あることだよ」
「そ、そういうもんなの?」
「ああ。だから気にせず空飛ぶ船は自分のモノとして考えてくれ。だから船の名前もワタルが決めてね?」
リオくんにそう言われて、城壁の外に佇む巨大な船を見ながら、名前を付けるだけでなく僕の所有物になっていて驚くばかりだ。
僕としては空飛ぶ船ができたら魔族領内を巡回できる移動用船として国で管理するとばかり思っていた。
「エヴァさん?」
「私は知らないわよ? 全部ワタルくんの物だからね!? うちの国に押し付けないでよね!? 絶対に無理だからね!」
釘を刺されてしまった。
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