上 下
36 / 85
連載

151話

しおりを挟む
 次の日。

 エンゲージさんと一緒に訪れた多くの店員さんによって、白狐族の毛玉が解体されて屋敷からどんどんなくなっていった。

 これから毛玉は洋服に姿を変えて魔族達を守ってくれる防具として、ファッション性もある洋服に姿を変えるはずだ。

 庭に置いてあった毛玉があっという間に姿を消して、ようやく圧迫していた景色が開放的になった。

「ワタル? またスライムたちが増えたよ?」

「そうみたいだね。今回は水色と青色のスライムも増えたみたいだ」

 庭にある泉からまたスライムたちが外にでてきた。昨日もたくさん増えてたのに、今日もまた増えている。

 スライムたちの数は元々水スライムが四百二十匹、青スライムが百匹、緑スライムが三十匹いたんだけど、あれからどんどん数を増やして、新しく増えたスライムたちまで足すと、水スライムが六百匹に、青スライムが二百匹に、緑スライムが百匹に増えた。

 合計すると、九百匹にも及ぶ数になる。

 恐らくだけど、スライムは魔物の中でも最下位の魔物なのもあり、従魔にできる数が僕のステータスの【INT知力】に依存していて、1に対して一匹なのかも知れない。それならこれから二倍は超える計算になる。

「フウちゃん。ムイちゃん。みんなをよろしくね」

『あい! ご主人様!』

 ふたりを撫でてあげて、他の子たちもエレナちゃんと手分けして撫でてから僕達は屋敷を後にした。

 今日やってきたのはシェーン街から程なく離れた場所に設けられたテントの野営地だ。

 ここに魔物は近づけないようにしてあるが、それでも危険がないために多くの白狐たちにお願いして護衛をお願いしている。

「ワタルくん。いらっしゃい」

 ちょうどエヴァさんが出迎えてくれてそのままテントの中に入る。

 そこには長い椅子が置かれていて、少し豪華な椅子が左右にたくさん並んでいる。

 それぞれの場所に紙を縦て名前を書いていく。

 ここは明日行われる予定の魔族と人族の会議のための会場だ。

 シェーン街ではなく、距離をとっているのは、まだ人族を信頼していないことと、人族に罠ではないことのアピールを兼ねている。

 もし戦いになったら、僕がエヴァさんたちを連れて急いで転送で逃げる作戦になっている。けど、多分そうはならない気がする。

 普段から優しいステラさんが関わっている人族なら信頼に値すると思うから。

 勇者が来たら色々困るので、勇者はお断りしていたりする。

 場所の確認が終わり、テント周囲を散策する。

 僕の【レーダー】で多くの青い点が見えている。

 まだ会議も行ってないのに、中立でもなく味方を示している青色なのに少し驚いた。

「ステラさん。向こうに人族のみなさんがいるみたいなので、先に挨拶に行きましょうか」

「そうですね。私は向こうに行った方が色々と都合が良さそうですから」

 そもそもステラさんが魔族と一緒にいるのがよく許可出たなと思うくらいだ。

 ゆっくりと人族が明日の会議のために野営地を開いている場所にやってきた。

 入口からこちらを見かけた衛兵さんが中に知らせると、とんでもない速さでこちらに向かって走ってくる人影が一人。

「ステラ」

「久しぶり。エレノア」

 彼女は以前にも出会ったステラさんの親友のエレノアさんだ。

 今日も無表情のままだけど、ものすごく嬉しそうなオーラは感じられる。

 やってきたエレノアさんはすぐにステラさんを抱きしめた。

「もう離さない」

「ふふっ。それでは困っちゃうわ。明日は会議もあるし、今日は教皇様にも合わなくちゃ」

「そうだった。教皇が待ってる」

「ええ。案内お願いね。ワタル様も行きますか?」

「いえ。僕とエレナちゃんはこのまま戻ります。教皇様とは明日エヴァさんと一緒に挨拶させてください」

「わかりました」

 ステラさんが笑顔を浮かべて僕達に向かって会釈して、エレノアさんと共に人族の野営地に向かって歩き出した。

 エレノアさんがいるならステラさんの身は安全だと思うから、僕達はそのまま会場に戻りエヴァさんに現状を報告して明日の会議に挑むことになった。

 しかし、その会議によって、とんでもないことが決まろうとするなんて、その時の僕は想像だにしなかった。

 まさかあんなことが起きるなんて…………。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。 木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。 何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。 そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。 なんか、まぁ、ダラダラと。 で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……? 「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」 「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」 「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」 あ、あのー…? その場所には何故か特別な事が起こり続けて…? これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。 ※HOT男性向けランキング1位達成 ※ファンタジーランキング 24h 3位達成 ※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。